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おじさんは東の町の治安を気にする。

 鬼に名前を付ける習慣はない。鬼同士であれば良いのだろうが、それでは色々と面倒なので小柄な鬼にセイドウの名前を付けた。


「ふーん、そっちのおじさんは翻訳する力があるの。で、そっちの人っぽい何か、宇宙人ですっけ? グレイが護衛ね。……貴女の役割は何なの? 闘技場での様子を見る限り子供役? 周りに迷惑をかけるだけの役ね」


「この中で一番ガキっぽいのはお前だけどな」


 あ? と一瞬で睨み合う両者だが、今だけは非常に便利な魔法の言葉がある。


「支払いをしませんよ?」


 それだけでシャクドウとセイドウの闘争心を鎮火させる。

 ここは飯屋で、シャクドウもセイドウも鬼。冗談としか思えない量を食べ、すでにいくつもの皿が積んである。

 シャクドウが金を持っていないのは当然だが、ルルクス伯爵の召喚獣のセイドウも金を持っている様子はない。つまり支払いは私。私が支払わなければ二人は無銭飲食をしたことになる。

 

 今だけは私は二人に強く出られる。


「それにしてもセイドウさん、何故貴女は町にいたんですか? ルルクス伯爵は屋敷にいるのでしょう?」


「……ああ、私ね。どうも名前っていうのは慣れないわね。私が町にいたのは定期的な巡回。新参者はよく引っかかるわ」


「ああ、なるほど」


 セイドウがあそこにいた理由を聞き、その役割を理解した。そりゃ、定期的に闘技場などに足を運ぶだろう。


「トモダチ、どういうこと?」


「この町には弱点、というか不安な点がありましてね。それを補うために彼女が巡回しているということです」


「あん? こいつが? 私と同じで戦うこと以外出来ねえだろ」


「戦えれば良いんです。ねえ、セイドウさん」


「……あっさりばれるとこんなにもつまらないものなのね」


 消極的な肯定。それと同時に私が不安に思っていたことも事実であることの裏付けとなり、嫌なことを知ってしまった気分だ。


「へえ、こいつに出来るなら私にも出来るだろ。やらせろよ」


「無理、ですかねえ? 容姿的にセイドウさん以上の適役はいません」


「はあ? こいつに出来て私には出来ないのか?」


「ああ? 私が子供っぽいとでも言いたいんですか?」


「支払いをしませんよ!」


 二人の鬼に詰め寄られたため即座に魔法の言葉を使う。何も理解していないシャクドウはともかく、全てを知っているのに詰め寄ってくるセイドウはおかしいと思う。誰よりも分かっているでしょう。自分が適役だって。


「また詰め寄られても迷惑なので説明しますが、この町の不安な点は治安です。王都から遠く離れた辺境であり、商人が集まれば必然的に金も集まり、闘技者、戦士を集めていると言えば聞こえは良いですが来るのはただの乱暴者です。まともな戦士など一割にも満たないでしょう。更に闘技場では賭けが行われているようですし。乱暴者で、腕に自信があってここに来たが周りの強さに挫け、金を得るために賭けをして負けた人間がいたとします。彼が次に起こす行動は何ですか? 金を持っていて弱い人間を襲う可能性が高いでしょう。そういうやつがいないか探すのがセイドウさんの役割です。それに見た目が子供ですから、誘拐しようとする人間だっているかもしれませんよ」


「誘拐しようとした馬鹿には今まで三回出会ったわ。手足をへし折って警備に突き出したけど」


「ははは、こいつを狙うとか馬鹿かよ」


 馬鹿だから犯罪行為をするんです。

 しかし領主の召喚獣に手伝いをさせるほどここの治安は良くないと言うことだ。私のような貧弱なおじさんでは一人で出歩くのも危険と考えた方が良い。

 

 それと同時にリリーナやポーラにも同じことが言える。貴族の令嬢に手を出すような馬鹿はいないだろうが、どうもここには大馬鹿がたくさんいる気がする。


 護衛といってもグレイではやり過ぎてしまうし、不意打ちに強くない。となると頼れるのは。


「……ん? 何だ、おっさん」


 シャクドウ、だけでは不安だ。陽動にあっさりと引っかかる未来が見える。となれば。


「セイドウさん、少しの間私に雇われませんか?」


 同じ鬼に協力を願おう。シャクドウに、勝るとも劣らない戦力に。


「嫌」


 断られてしまった。

 じゃあ仕方ないので、ルルクス伯爵邸までの案内はお願いできませんか? そこに召喚主がいますので。

 それも嫌? 反抗期の子供じゃないんだから。仕方がない。


 魔法の言葉を使い、セイドウに道案内をお願いした。


 これが汚い大人のやり方だ。


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