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おじさんは学院で仲を取り持つ

本日二度目の更新となります。

前話をご覧になっていない方はそちらをご覧ください。

「山に大量発生しているマイコニドを討伐するのに力を貸してほしい」


「あ? そりゃ外で暴れてこいってことか? 良いぜ! つーかそう言うことを言って来いよ。あっはっは!」


 薬草学の講師がシャクドウに協力を願い、シャクドウはそれを了承して嬉しそうに講師の背中を叩く。あれ、痛いんだよな。

 とりあえずこれで、関係改善と言える程度にはなっただろう。以前のような主従関係ではないが。

 他の講師たちも同じように召喚獣に討伐協力を頼んで、関係が改善される。


「何で、頼まなければ。今までのように命令に従えばいいのに」


「召喚獣も生き物なのです。意思があるのです。今までが恵まれていたと思いましょう。大丈夫、誠意には誠意で返してくれますよ」


 道具と思っていたものに頼まなければならないのが恥辱なのか、召喚獣に聞こえないようにそんなことを口走っていた講師を見つけたので、すぐに忠告しておく。

 運が良かったのだと、気付いてほしい。


 召喚獣は別に召喚主を嫌ってはいない。理不尽な命令を拒否しただけで、反抗期の子供の様に何でもかんでも嫌だと答えているのではない。事情を話せば理解してくれるし、協力もしてもらえる。

 今までが抱いていた好感が高かったため理不尽な命令でも従ってくれたが、今は友人、知人の域まで好感が下がったため理不尽な命令には従わなくなった。逆に言えば、友人などに頼むようなことであれば聞いてくれるのだ。


 もしも時間が経って、召喚主への好感がマイナス方向にまで下がっていれば頼んでも拒絶されただろう。

 早い段階で関係改善が出来たのは本当に運が良かったのだ。でなければ額に傷を負って意識が曖昧な状態で謝らなければ関係が修復されない段階にまでなっていたかもしれない。


 そして関係改善に成功した講師たちは召喚獣を連れて集まってくる。その中で未だに関係改善に動かない者がいる。


「学院長。何をしているんです?」


 学院長だ。先程からウドがいるであろう方向を向いてはいるが、歩き出す様子はない。

 講師たちからすれば召喚獣は道具だった。その考えに対して生物であり、意思がある。真剣に向き合えと言って、関係改善をさせた。


 しかし学院長にとって召喚獣、巨人は自分の魔力を奪う憎む相手。具現化した呪いとでも思っているのではないだろうか。

 滅ぼしたい相手の手を組むのが受け入れがたいんだろう。


「これだけの召喚獣がいれば十分なのでは……」


「何を言っているんですか? ウド以上に強力な召喚獣がいるとでも? ウドがいることで成功する作戦が確実に成功する作戦に変わるんですよ? 確実と言う言葉の価値を、貴方が知らないわけがない」


 ぐぬぬ、と唸る学院長。

 どれだけ言葉で背中を押しても、物理的に押してやるつもりは一切ない。自分の足で最初の一歩を踏み出すことで決心が付くのだ。

 ただいつまでも待つわけにもいかないし、このままでは学院長の顔が怖いままで固定されてしまう。……あれ?


「もしかして、怖いんですか?」


「やってやろうじゃねえか!」


 怖い顔の中に見えた僅かな不安。それを意味することを聞こうとしたらうっかり煽るような言葉になってしまった。

 しかしそれで良かったのかもしれない。学院長は吹っ切れた様子でウドがいるであろう学院の片隅へと早足で向かっていく。




 念のために付いてきたが、学院長は寝転がるウドを前にして何も出来ず、ウドも昼寝でもしているのか丸まったまま動く気配がない。

 助け舟を出してやろう。


 手を叩いて高い音を出し、ウドを起こす。

 常に周りに気を配っている優しいウドであればそれだけで起きる。

 ウドが起きたらもう私のやるべきことはない。後は全て学院長に任せる。


「ん? お、おおう? セーイチ。それと、えっと……?」


 滅多に会いに来ない召喚主が目の前にいることに困惑したのか、ウドは困った様子で頭を傾ける。


「バロンだ。コース・ラス・バロン。お前の召喚主だ」


 それを学院長はど忘れされたと思ったのか、名を名乗る。学院長はバロンという名前だったのか。

 学院長ことバロンは、ウドの顔が自分に向けられた瞬間に一歩前に出て、そして。


「今まですまなかった。このような誰も来ない学院の片隅にずっと待機させて。これからは人に危険を及ぼさない限りどこにいても良い。だから、今だけは、私の願いを聞いてはくれないだろうか」


 多分バロンは謝る機会を探していたのだろう。分かっていたのだ、ウドに何の責任もないことを。責任があるとすれば自分にあることを。

 ただ憎しみがそれを認められなかっただけ。自分を不幸にした相手が目の前にいるため、それに責任を擦り付けた方が楽だったのだろう。


 バロンがここに来る前に見せた不安の顔は、謝罪を受け入れてもらえるかどうかの不安。虫の良い言葉に暴れるのではないかの不安。それだけのことをしたという自覚はあったのだ。

 ならばバロン、良かったな。


「ええだよ。ここにいてもセーイチは来てくれたし、小人も来た。楽しいことはたくさんあっただよ」


 ウドは優しい。真摯に向き合えば真摯に返してくれる。他人を思いやれる子なのだ。


「それで、おらに何をして欲しいんだ?」


「山にマイコニドという魔物が大量発生して人が困っている。そのマイコニドの討伐だ」


「分かった。ほら、じゃあ手に乗ってくれ」


 特に気にした様子もなく、ウドは手を地面すれすれまで手を下ろし、乗るように言う。

 このままでは直行しそうだと感じ、バロンよりも早く手に乗り込んでウドに話しかける。


「ウド、まずは正門に向かってくれ。皆そっちで待っているんだ。それから町を出て山に向かってほしい」


「分かった」


 私とウドが話している間にバロンも手のひらに乗り、準備完了。

 そのまま正門に向かい、講師たちと合流後に山へと向かう。


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