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おじさんは学院長と共に山に向かう

 マイコニドの大量発生により、そこから近い学院のある町には大きな混乱が……。


 起きなかった。


 マイコニドと言うキノコの形をした魔物は生息する山から大きく離れることはなく、少し離れたこの町に直接被害を与えることはない。そのため、住民はいつもと変わらない生活を送っていた。

 ただマイコニドが大量発生した近くの道を使う者にとっては非常に困る。例えばあちこちに商品を運ぶ行商人などは。


「困った。商品が来ない、運べない。いや、それよりも手元に金が……」


 このように頭を抱えて困ってしまう。マイケルさんは大変そうだ。

 私はそんな様子のマイケルの前を通り抜け――。


「あ、セーイチさん!」


 られなかった。運悪くマイケルが顔を上げた時に私が目の前にいた。

 無視するわけにもいかず、今気づいたとばかりにマイケルの方を向く。


「お久しぶりです、マイケルさん。北から戻ってきました。マイケルさんが色々と教えてくれたおかげです」


「お力になれたのであれば幸いです。ストロードからセーイチさんに紹介してくれたことを感謝する手紙が届きまして、北でも上手くやっていると思っていましたが戻られていたんですね。久しぶりに会ったのに突然お願いするのは失礼とは思うのですが」


「マイコニドの件ですね。ご安心ください。こちらの学院長と共に今から調査に向かう途中なのです」


「商人の方ですか? ご安心ください。すぐに解決して見せます」


「おお、学院の方と調査に。よろしくお願いします」


 学院長を見て希望を見出したのか、先ほどまでの落ち込み様は消え、頭を下げて見送ってくれた。

 やや足止めを食らったが問題はない。急いでマイコニドが大量発生した山に向かう。




 今回の騒動は私と学院長が関与している可能性がある。

 私が学院を去る前に学院長に教えたキノコ栽培。学院長は実験として学院から離れた山で私が教えた原木栽培を開始したそうだ。


 使える魔力を失うまでは研究者だったのだ、この手の実験は好きだったのか最初の頃は細かく見に行っていたらしい。

 しかし少しすれば新入生がやってきてそれの対応の為しばらく見に行けなかったらしい。


 そしてそんな時にマイコニドの大量発生だ。


「実験場所は?」


「森の中腹。木々を切って分かりやすくしてある。見る者が見れば人為的なことくらいは見抜けてしまうだろう」


 もしも今回のマイコニドの大量発生が自然的なものであれば、駐在している騎士団に任せて学院としては支援程度で済ませる予定。

 しかし、もしもキノコ栽培が原因でマイコニドの大量発生していた場合、実験の資料などを廃棄して我々の関与も隠さなければならない。そのため積極的に問題解決に動く必要がある。


 今はその調査。マイコニドの大量発生の責任は自然にあるのか、私たちにあるのか。

 故に今回の騒動が終わるまでは私と学院長は盟友と言う名の共犯者。裏切りも傍観も許さない。双方が全力で問題解決に当たることを約束した。


 問題の山の近くまで来てみれば、すでに駐在の騎士団が山の街道沿いを抑えており、出てくるマイコニドを倒していた。

 マイコニド、本当に茸の魔物だ。まだら模様の傘に人の胴体並の柄。大きさは大人と同じ大きさから、その半分の子供のように小さいのもいる。そしてどれもが手はなく、小さな足をせっせと動かして移動している。


「やはり騎士団が先に動いていたか。しかしお前、乗馬経験があったのだな」


「馬に乗った経験はありませんよ。昔ラクダに乗った経験があるだけです。騎士団がいるということは彼らだけで問題を解決してしまうのでは?」


「それはない。騎士団はそんなに数は多くない。騎士団の役目は定期的に魔物を狩りつつ、周囲の安全の確保だ。今回のような魔物の大量発生の際には被害拡大を防ぎつつ、援軍を呼ぶ手筈になっている」


「つまり?」


「少し待っていろ」


 そう言って学院長は騎士団の本営と思われる場所に走る。

 まあ、あれを見れば今回の一件に私たちが関与しているのは明らかだしな。積極的に関与するしかないだろう。


 山の中腹に、周りの木々の何倍もある馬鹿でかいキノコが一本生えていた。




 学院長の後を追い、騎士団の指揮官がいると思われる天幕まで近づけば聞こえてくるのは怒号の応酬。


 どちらも大義名分を盾に言い争っているが、要はどちらが主力となってマイコニドを討伐するのか。手柄の取り合いである。

そんなものに混ざりたくないので外で待っていれば、天幕から見たことのない程の笑顔で学院長が出てきた。


「討伐の権利を勝ち取ってきたぞ」


「凄いですね。決め手は何ですか?」


「マイコニドは様々な薬や毒の材料になるからな。討伐したマイコニドを授業で使うため回収する。騎士団では放置するからな。それに学院主導であれば状態異常に強い召喚獣を前面に押し出せば容易に討伐できる」


 ここの騎士団長と仲が悪いのだろうか、非常に楽しそうに笑い声を上げてから馬に乗り学院に戻る。その後を私も追うが。


 学院長、忘れてはいないだろうか?


「召喚獣の一件、まだ終わっていませんよ?」


「……何か手はないか?」


「一番簡単な手があります。召喚獣に素直に頼んでみてはいかがでしょう?」


 笑顔だった学院長の顔が一気に渋面に変わった。


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