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おじさんは交渉相手を間違える

 学院について召喚獣たちから話を聞いた翌日。

 私は召喚主側の話も聞きたいと言って、学院長の植物園で学院長に話を伺う。


「私としては早々に召喚獣をどうにかして、この問題を片づけてほしいのだが」


「そんな簡単に済むことではないと学院長自身お判りでしょう? このように話を聞くのも問題解決のために必要なこととお考え下さい」


 以前までは私は学院長の好意で学院にいた居候のような立場だったため強気には出られなかったが、今は立場も変わり何より問題解決をお願いされた側なので多少強気に出られる。

 逆に学院長は言葉でこそ強い口調だが、内心は冷や汗を垂れ流していることだろう。少なくとも強引なことは出来ないはず。


 本題に移る前に、学院長から召喚獣についてどう思い、考えているのか聞きたい。それによって話の持って行き方が変わる。


「学院長はウド、巨人とどれほどの付き合いになりますか?」


「召喚獣との仲でも探るのか? 答えにくい質問だ。どの召喚主にも負けないほどの長い付き合いとも言えるし、どの召喚主よりも召喚獣との付き合いが短いとも言える」


 ……? 潜在的に怖いと考えているか、無関心なのかと思っていたが。若干毛嫌いしているように思える。どこか含みのある言い方だ。


「随分と不思議な表現ですね。しかし嘘を言っているとも思えません。どういう意味でしょう?」


「ふふふ、この国で最初に召喚魔法を行ったのは私ということだ」


 最初に召喚魔法を行ったのは学院長か。だが別に召喚魔法を使った順番など……。いや、待て。


「学院長は創聖教と何か繋がりがあるので?」


「創聖教? ああ、召喚魔法関連だからそっちの関係者と考えたか。違う、元は王宮にいた研究者だ。ただ他の人間よりも魔力が多くてな、様々な研究を手伝っていた。その中に創聖教から神話時代から伝わる召喚魔法の手伝いがあった。神話時代から伝わる魔法に少しだけ興味がわいて手伝った結果、召喚魔法は発動して巨人が召喚された。それと同時に、私の魔力は全て巨人に流れるようになって、私は二度と魔法を使えなくなった」


 創聖教との関りはないのか。しかし元王宮仕えの研究者か。

 ただ本人からすればそれは既に過去の栄光なのだろう。巨人を召喚したことで魔法が使えなくなった。


 召喚獣を召喚したことで魔法が使えなくなる、つまり使える魔力が無くなったというのは何となく分かる。私を除く召喚獣は空腹にもならなければ体温の調整も必要ない。それは召喚主から魔力が流れてその魔力で補っているため。

 それを巨人のような超大型生物の腹を満たして体調も崩さないための魔力量となればどれほどのものか。魔力が全て巨人に流れて魔法が使えないというのも納得が出来る。


 ただ問題は、私はその魔力の価値が分からない。一度も持ったこともなければ、欲しいとすら思ったこともない。

 しかし学院長は使える魔力を失ったために研究者を辞めて、現在の学院長という地位にいる。もしかしたら学院長としての地位は国からの褒美なのかもしれない。魔力を失う結果になったが、有用な召喚魔法を見つけた褒美のような形で。


 スポーツ選手からスポーツを奪ったようなものだろうか。少なくとも学院長は巨人を、ウドを恨んでいる。


「ああ……。召喚獣との付き合いが誰よりも短いと言ったのは、滅多に巨人に会いに行っていないからですか」


「気づいたか。その通りだ。あいつの無駄にでかい身体が利用できる時だけ命令し、あとは学院の片隅、目の届かないところで待機させている」


 酷い八つ当たりをする。しかし学院長からすれば自分の魔力を奪う相手で、死んでほしいとすら思っていそうだ。

 この話題は駄目だ。学院長の憎しみを増長させ、問題解決が遠のくだけ。


「では他の講師の方々も似たようなもので?」


「あいつらは違う。若い講師は生徒に召喚獣とは何かを教えるために安全に召喚している。古参の講師の中には私より安全にではあるが、実験の意味を込めて召喚した者もいるだろうが」


 生徒に召喚獣を教えるために講師が召喚獣を持つ。それは分かる。しかし古参の講師は実験の意味合いで召喚獣を持っている? 

 一つは想像がつく。安全性、つまり人の魔力量で容易に補えるだけの召喚獣を呼ぶ実験。ウドのような巨人を私は他に知らない。おそらく、何らかの方法で大きな召喚獣を呼ばない方法を見つけた。例えば、狭いところで召喚するとか?


 他にも召喚される召喚獣の傾向を調べたりしたのかもしれない。

 実験などで呼ばれた召喚獣はさぞ迷惑だっただろう、と考えていると学院長が不気味な笑みを浮かべる。


「そうだ、実験の成果だ。召喚獣は召喚してから一定の期間を経ると召喚主に逆らうようになる。まずは仮説としてまとめ、他の召喚主に似たようなことが起きていないか聞いて回る必要があるな。もしもこの仮説が認められれば、その一定期間が過ぎる前に召喚獣の処分の必要性を訴え」


 しまった。学院長の過去を聞いた所為で憎しみの蓋が開いた。狂人の目をしている。


「学院長、落ち着いてください。この一件だけでその仮説にするのは強引過ぎます。他の要素も容易に想像できますし、狂人の妄言と受け取られて笑われかねません」


「……そうだな。よくよく考えれば、お前が召喚された所為ではないのか? 誰とでも話せる召喚獣など実に怪しい。それに他の召喚獣はお前を頼りにしている節がある。今回の事件の裏には、お前がいるのではないのか? ……その方が辻褄は合うか? お前たち召喚獣から見れば、私たちの召喚獣の扱いは酷いだろうからな。そんな召喚獣を解放するために、お前がいるのではないか?」


 笑えなければ、面白くもない話だ。狂人はまるでそれが真実かのように私を睨んでくるが、その目はとても真実を見る人間の目には見えない。

 故に私はその目を真っ直ぐ見返し。


「まさかそのような愚かなことを、本当にお考えで?」


 対立を選んだ。


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