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おじさんは気味の悪い鳥を目にする

 竜の一件から一月が経過した頃、王都から表彰のための呼び出しがあった。想定の中では最速の結果。

 本来なら色々と大変なのかもしれないが、すでにこちらは余裕で準備を終えていた。

 最大の理由は最大の問題と思われた竜の学習が一週間で終わったことだろう。教材を作っていたボルダー辺境伯とその部下たちは大変だっただろうが、その甲斐あってすでに竜とは私がいなくても文字で会話が出来るようになっている。

 

 他にも食堂の一部に掘りコタツを導入し、商人のストロード経由で料理人を雇用した。またそれに伴い私のおでんの屋台もボルダー辺境伯に売却し、出汁の取り方も料理人に教え済み。

 温泉についてもすでに無料の体験会を終え、有料になったが仕事終わりに入る兵士が多く、予定通り多くの兵士が金を落としてくれている。また耳の聡い商人のストロードはこの話を各地に広め、一部の人が試しに入りに来ていたりしている。


 つまり、全てのことが上手くいった。温泉については階級や性別などで入る時間を決めるなど私自身抜けていた部分があったが、そこは彼らで話し合って決めたのでも問題はない。

 

「ふん、これくらいで良いか?」


「とりあえず私を過剰なまでに褒めといてくれれば良いです。本当ならもう少し早くやってほしかったのですが」


「竜の学習の件や、お前の言う通りの改善をしていた所為で時間が取れなかったのだから仕方あるまい。何でお前の見ている前でお前の感謝状を書かねばならんのだ」


 それだけの恩はあるでしょう? と言うとボルダー辺境伯はケッとつまらなそうに言ってルイス公爵宛てに送る感謝状を仕上げる。

 

 この感謝状は私の保険だ。私はルイス公爵に科学の再現を約束まではしていないが、臭わせて資金援助を受けた。しかし現状その援助に値する成果を作っていない。

 勿論言い訳はいくらでも思いつく。時間が足りない、実験に適切な場所を探していた、まずはお嬢様の地盤を固めるのを優先した。いくらでもだ。

 ただそんな言い訳をせずともルイス公爵は理解してくれるだろう。どこの世界に一月、二月で研究成果を出せなどと無茶を言うものがいるのか。


 ただ、念には念を入れることも重要だ。そのためにこの感謝状。

 研究成果はないが、ボルダー辺境伯にこれだけの恩を売りましたと報告できれば誰も文句は言うまい。

本当であれば私たちが王都に着く前に感謝状を届けて置いて欲しかったのだが、ボルダー辺境伯が忙しかったためにほぼ同時の到着かやや早い程度。

 ルイス公爵に情報の裏取りをする時間を与えられないが、保険としての効果は十分。欲はほどほどに抑えるのが重要。


 とりあえず王都へ行く準備はこれで終わった。問題は王都に行った後、東か西かどちらかに転属されるということだが、そちらの情報は集まっていない。

 おそらく転属決定、それではすぐに行け! などということはなくある程度は準備の時間があるためその時に情報を集めれば良い。

 その時はまたマイケルに頼むか。竜の鱗の大半をこれから大変なことになるボルダー辺境伯に譲ったとはいえ、少量は残してある。竜の牙についてもルイス公爵に預けておけば良いだろう。ルイス公爵が竜の牙と言う希少なものを誰に見せるのかは私に関わりないことだ。


 などと今後の予定を考えていると、ボルダー辺境伯の執務室に目が一つ、足も一つの気味の悪い雀のような鳥が入ってきた。


「うわっ!? 魔物?」


「息子の召喚獣だ。モモドリと言う。群体の召喚獣でこれと同じのが百匹いる。脆弱だがそれぞれ記憶を共有しており、偵察などには役に立つ。それと一匹二匹潰しても一晩経てば百匹に戻るぞ」


 何とも不思議な召喚獣だ。そしてよく見れば足に何か巻いてある。

 手紙だ。ボルダー辺境伯は慣れた様子で手紙を取り、広げて読む。

 ……それよりも早い方法がある。


「モモドリさん。息子さんはボルダー辺境伯に何て言ってました?」


 聞けばいい。私にはそれが出来る。


「んだてめー! こらー! 親父は竜とか夢見てんじゃねーとか言ってんぞ。あーん?」


 口が悪い。見た目は気味が悪くて口が汚いとか最悪だ。潰して良いだろうか? どうせ一晩経てば元に戻るのだろう?


「ほほう? それは良いことを聞いた。息子、どうせ召喚獣を通して聞いているだろう? 俺が王都から帰ったら竜の前に立たせてやるから感謝して咽び泣け」


「ボルダー辺境伯、せめて着替えは用意してあげるべきだ」


「そうだな、下着は用意しておいてやる」


 それだけ言うとボルダー辺境伯は不愉快そうにモモドリ叩き潰した。すると黒い煙がぽふっと広がって消えた。グロくなくて良かった。


「そうだ、お前たちだけ予定が変更になったぞ」


「はい? 何かあったんですか?」


「知らん。お前たち召喚獣は学院行きになった。良く分からんが問題が起きているそうだ」


 突然の予定変更。多分今の手紙に書かれていたのだろうが、良くあることだ。一向に構わない。ただ学院で何があったのかは知りたかった。

 大した問題じゃなければ良いのだが。


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