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おじさんは竜と相対するため準備をする

 あの小山の正体は竜だった。そして竜は北の前線基地に向かって前進。基地の兵士たちは戦おうとしたが戦いにもならず、敗北。竜は極寒の森林で休んでいるらしい。


「……え? 何で?」


「何でって、そりゃ夜は寝るものでしょう? ああ、それとも小山の正体が竜だったこと? それは知らないけど」


 前線基地に帰ってきて休もうと思っていたらこの騒ぎ。嫌になる。温泉に入って寝て休もうと思っていた気持ちをどうすれば良いのか。


「いえ、そうではなく。何故竜はこっちに来ているんです?」


 休むためには目の前の問題を解決しなければならないのだが、そもそも竜がこっちに来る原因は何なのか。


「それは竜に聞いてほしいけど、確かに気になるね。真っ直ぐここに来て、攻撃に反応せずに前進を続けたってことは何か目的があるってことだね。向かう先にあるのは前線基地と国? 竜に全く関係なさそうだけど」


 竜が来る理由。それが判明すれば竜の侵攻を逸らせるかもしれない。もしどうしようもない時は。


「グレイに頼るか」


「頼られるのは嬉しいけど、応えられるとは限らないよ」


 倉庫から出てきたグレイが疲れた様子で首を振る。

 

「光線銃の充電にはまだ時間がかかるか」


「うん。使えるようになるのは明日の夜か、明後日の朝くらいになるね」


 エネルギー切れをした光線銃など玩具以外の何物でもなく、光線銃のないグレイなど私と同じくらいに無力な存在。

 充電が終わったころには、少なくともこの基地はなくなっているだろう。それはつまりせっかく作ってもらった屋台もなくなり、温泉にも通えなくなるということ。それは避けたい。


「それじゃトモダチ、これを上げるよ」


 どうしたものか、と悩んでいるとグレイは私に魔石を手渡してきた。

 熱のない、ただの魔石。そして、小山の跡地に大量にあったもの。売れば大金になるので全て回収して倉庫に放り込んでいたのだが。


 小山の跡地に大量にあったただの魔石、攻撃を気にも留めない竜、そしてその竜の侵攻先にあるのは。


「なるほど。疑問点はいくつか残るが、おおよそ納得はした。私も屋台と温泉がなければ最優先で作っていたかもしれない。キジュツ、悪いんだが少し手伝ってくれないか?」


「え? なになに? ……あれが欲しい? 良いんじゃない? 持っていけば? 私からへっちゃんに話しておくよ。あー、でも数が少ないね。どうする? 自分たちで取ってくる? 私はへっちゃんを説得するから手伝えないけど」


「中途半端な数で挑みたくはない。最大限用意するとしよう。グレイ、徹夜になると思うが手伝ってくれるか?」


「良いよ? ボクの種族は三日間までなら飲まず食わずでも支障なく活動できる。でも暗いのは、そっか。あれは発光していたから問題ないのか。トモダチこそ大丈夫?」


「無理だ。歳だから昔のように無理が出来ない。頑張って徹夜して、明日の昼までもつかどうか。後で筋肉痛にもなるだろうし。目の前に問題がなければ絶対にしたくない」


 やるべきことは決まったのに身体が重い。心が今後の身体への負荷を嫌がっているのだろう。

 ああ、心が折れたい。屈したい。しかしやらねばならぬと身体が動く。


 とぼとぼと歩いていると、グレイが遅いとばかりに背を押してきて、それを見ていたキジュツに思いっきり笑われた。

 

 この気持ち、どこか。覚えがある。そうだ。

 見ず知らず人の尻拭いの為にあちこち回っているときの気持ちだ。


 余計に足取りが重くなった。


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