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おじさんは北の前線基地に帰還した

 大量の農作物と共に北の前線基地に帰還。

 実に良い旅だった。村への移動中はピエロがここについて色々と話してくれて、村もピエロの姿を見るとボルダー辺境伯の使いと思ってくれたのか、歓迎してくれた。

 おかげで大量の農作物とその調理法。それに前線基地のある極寒の森林でしか採れない希少なものの話も聞けた。


 とても良い結果に終わったのだが、それを良く思わない者もいる。

 ボルダー辺境伯だ。

 あちらから見れば突然召喚獣がどこかに行き、更に他の召喚獣も同行している。その連絡は紙切れ一枚。

 お怒りはごもっとも。ここの責任者は彼であり、何かあった際には彼が責任を被るのだ。勝手な行動をした者に怒りを覚えるのは当然。


 このままではピエロが怒られてしまう。私とグレイは他人の召喚獣だから怒れない。言葉が通じないから。私の周りでは勝手に翻訳されてしまうことを怒りで忘れているのだろう。


 今回の旅はピエロのおかげで順調だったので、責任を全てピエロに押し付けるのは目覚めが悪い。だから。


「ボルダー辺境伯、少しお話を致しませんか? ホワイトボードなどは、ありませんよね。そこまで難しいお話ではありませんので大丈夫でしょう。実は――」




 ボルダー辺境伯が地面を見ながら唸っている。

 別に腹を下したわけでも頭が痛いわけでもない。私がボルダー辺境伯にとって良い話をしただけだ。

では何故唸るのか。話した内容を分かりやすく書いた図を理解しようと必死に頭を巡らせているためだ。その横ではピエロが邪魔か手助けか図に色々と付け加えている。

 あのピエロ中々に頭が良い。ボルダー辺境伯が理解しようと唸っているのに、ピエロはすでに理解して図に手を加えられるのだから。


「それじゃあボクは一度戻るね。トモダチはこれからどうするの?」


「農作物を保管、だがここは天然の冷凍庫だから。置く場所には困らないだろう。だからあれを組み立てるかな」


 後で様子を見にいくね、と言ってグレイは召喚主の元へ行ってしまった。

 私もすぐに動く、前に。


「ボルダー辺境伯。すみませんが農作物を保管するところに心当たりはありませんか? それと、道具を貸してほしいのですが?」


 先ほどの話と繋がっているとボルダー辺境伯は理解すると、苦々しい顔をしながらも保管場所と道具を貸してくれた。

 おや? ピエロも手伝ってくれるようだ。報酬は、そうですね。貴女の好みそうなものですと、こんなのは如何でしょう?




 報酬を先払いにしたのは間違いだったか。


「あっはっは! いや、いや、簡単だ。やり方さえ分かれば単純だ。でもパッと見ただけじゃ驚くだけだ。楽しいな、これ!」


 報酬は私の手品。少し努力すれば簡単に覚えられるようなもの。

 出張が多かった私が出張先ですぐに覚えてもらい、馴染めるように覚えた技術。

 ようはただの一発芸。


 それをピエロに見せたところ相当気に入ったのか、私に種の開示を求めた挙句、今は親指を離したりくっつけたりしている。

 つまり私は一人で組み立て作業をしている。

 早くグレイ来ないかな。


「ほら、おじちゃん見て! 親指以外も出来るぞ!」


 人差し指を離したり中指を離したりと私よりも自然に出来ている。楽しそうだから良いけれど、そろそろ手伝ってはくれないだろうか。


「おじちゃん! 他のも教えて」


「そうですね。トランプ、はありませんからコインですかね? ただその前に手伝っていただけると助かるのですが」


 そうだった、とピエロは思い出したようで手伝ってくれたが、組み立てるものが大きく手間取った。

 小人が残してくれた絵だけで分かりやすく書かれた組立図がなければ絶対に諦めていただろう。

 昼過ぎ辺りに初め、出来上がったのは日が沈んでから。私は途中から肩が上がらなくなってしまい、ピエロに大きな負担を与えてしまったがそこは邪神の眷属。成人男性以上の力とスタミナで私の何倍もの働きを見せてくれた。

 ピエロがいなければ今日中には完成しなかっただろう。


「金貨をそう動かすのか。指の動きで器用に、なるほど」


 手先が器用なピエロは一度見るとすぐに真似して成功させる。

 習得に苦労したため悔しいという思いがあるが、先ほどの働きを思い出すとこんな報酬で良いのかと思う。

 ピエロが楽しそうなので良いか。


「おじちゃんはこういうのを専門にしていたの?」


「いいえ。単なる社会人ですよ。手品師ではありません」


 この程度は子供のお遊び。本職の人が行う手品はもっと凄いと教えるとピエロは驚き、そして楽しそうに聞いてくる。


「ふふふ、見てみたいです。手品師って他になんて呼ぶんですか?」


「魔術師や超能力者などと称する人もいます。古い言い方ですと奇術師なんてものもあるますね」


「なるほど。では私はこれからピエロマスクのキジュツと名乗ります」


 ……はい?


「えっと、そんな簡単に自分の名前を決めて良いので?」


「これが一番だと思ったから。じゃあ伝えてくるね!」


 おそらく召喚主であるボルダー辺境伯の下へピエロ、改めキジュツは走っていった。

 ……若い子の考えは分からないな。若いか知らないけど。


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