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おじさんは公爵邸で焼き鳥にやられる

「ルイス公爵。申し訳ないのですが創聖教の教会に近々そちらに行き話をしたい、と伝えてくれませんか?」


「うん? もしや蒸気機関についてかね? あれはまだ向こうの噂の段階だ。問い詰めても答えは返ってこないと思うが。それとも別の話かな?」


「蒸気機関について探りを入れられるようであれば入れますが、話をする内容は違います。エルフについてです」


 そう、エルフだ。エルフは竜を信仰しておりルイス公爵が預かっている竜の牙に参拝するために近々王都に来るはず。今は東の商人たちが色々と頑張っている。

 創聖教はあまり布教に力を入れていないようだが、それでも自分の近くに異教徒が来て教会を無視して別の場所を参拝していては気持ちの良いものではないはず。

 だから事前に話をしに行く。表向きの理由としては何の問題もない。


「ああ、エルフか。なるほど、娘の手紙で知っているよ。創聖教にとって竜は悪だが、彼らにとっては神だ。話をする理由としては十分だろう。しかし竜の牙を置く場所がまだ決まっていなくてね。竜の牙は国にとっても重要なものだ。警備が厳しくしなければならない。しかし同時にエルフが容易に参拝できる場所である必要もある。中々難しくてね」


「でしたらまずは土地を用意してください。それから参拝に来たエルフに話を振ってください。竜の牙を安置する建物を作ろうと考えているのだが、どのような建物が良いかと。おそらく信仰に篤いエルフであれば自分たちで作りたがるでしょうし、ルイス公爵も王都でエルフが仕事をしたと言う実績は欲しいでしょう。それにエルフが建てた建物となれば王都の名物となるでしょう。エルフにとっても、ルイス公爵や王国にとっても悪い提案ではないと思いますが」


 誰もが得して損をしない、そんな提案にルイス公爵は嬉しそうに笑うので私もつい微笑んでしまう。


「ふふふ、分かった。教会には話を通しておきます。セイイチ殿の腰の調子が良くなったら共に行くとしましょう。竜の牙について今の話の通りに。土地の選定をしなければなりませんね」


 それでは、と言ってルイス公爵は悪そうな笑みを浮かべて侍従と共に退室した。

 これで教会への渡りを付けた。向こうがどう動くのかまでは読めないが進展としては十分と言える。


「楽しそうだったね、トモダチ」


「ん? ああ。歳が近いと話がしやすいのかな? 公爵というだけあって頭の回転も早い。親としての面での信頼はリリーナの成長のおかげで得られたが、貴族としての信用も今の話で得られたのは大きい。教会での話も上手く付けられればルイス公爵に創聖教を探ってもらえるかもしれない」


 創聖教は私が元の世界に戻るために絶対に当たる壁だ。ルイス公爵という強力な味方を得られるのならこれほど嬉しいことはない。

 それから少しの間グレイと共に創聖教の真意を推測していると。


「おじさん、戻りました。変わったことはありませんでしたか?」


 驚いたことにそれほど時間が経っていないにも関わらず、リリーナが帰ってきた。


「王城に行って、もう帰ってきたのか? 報告は簡易的に済ませるだけで良いのか?」


「いえいえ。こういうのは作法と言いますか、色々と手続きがありまして。初日は召喚に応じたことと報告内容に間違いがないかの確認だけです。それから数日後に報告内容の質疑が行われ、それからまた時間をかけて事実と認定されてから表彰を兼ねたパーティーが開かれてようやく終わりですかね」


 それは何とも悠長と言うか。ゆっくりとしている。

 大抵の情報がその日その時に届く私からすれば遅いと感じる。そしてそれはグレイも同じ様子。

 電話やメールの偉大さが良く分かる。


「リリーナお嬢様」


「あ、おじさんごめんね。私これからパーティー用のドレスの準備をしないといけないから。前と同じで良いと思うだけど、流行を無視出来ないんだよね。今は前髪を上げて後ろで縛るのが流行で、服も無駄な装飾をせずに――」


「リリーナお嬢様」


「はい、行きます。それじゃおじさん。また来るから。あ、さっきテレサ姉さんに会ったよ。多分そろそろ来ると思うから。それじゃ」


 ここがリリーナの家だからだろうか。今までとは印象が異なり非常に元気に見えた。これがルイス公爵の言っていた貴族の体面だけでなく、人の体面も大事にしたリリーナの姿と言うことだろうか。

 ただ、まあ。元気な姿は周りに力を与える。悪くはないことだ。


 あの姿を見ていれば何だか腰の調子もすぐに良くなりそうな気がしてきた、が。


「オヤジ!」


 扉が開くと同時にどこかで見たことのある火の鳥が私の胸に勢いよく飛んできた。

 さすがにくちばしが突き刺さることはなかったが、座っている私の胸への強打は腰に響く。


「お久しぶりです、セーイチ様。前の一件の時は非常に助かりまし――あら?」


 テレサが入ってきて丁寧に挨拶をしてくれているようだが、腰の痛みの所為で満足な対応が取れない。

 そして離れろ、焼き鳥。グレイがお前を無に帰そうと光線銃で狙っているだろうが。私まで一緒に消されたらどうするつもりだ。


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