おじさんは王都に着くが無事ではなかった
王都への召喚は予期していたこと。
私たちは早々に出発した。
港町もエルフにも用がないため早々に通り抜けたが、さすがにルルクス伯爵相手はそうはいかずきちんと挨拶をしてから通り抜ける。
その際に真っ白に燃え尽きた様子のニックを見かけたが、大したことではないので気にしなかった。気にすべきことは別にあった。
バリッシュとルリとの別れだ。
あくまで一時的な護衛であり、バリッシュがジムを建てるための資金稼ぎに過ぎない。しかしそれでも親しくしていた仲だ。寂しさもある。
出会いがあれば別れもある。いずれ会おうと約束してバリッシュたちとも別れた。
王都への道中は寂しさを紛らわせるためか、今まで以上に話が弾んだ。
主に王都がどういう場所か、幼少の頃はあった出来事、親兄弟の話など。
私とグレイはリリーナとポーラの話を興味深く聞いた。彼女らにとっては他愛のない話だったのかもしれないが、私たちからすれば異世界の話でありそこから歴史や文化を知ることも出来た。
逆にリリーナたちも私やグレイの世界の話を聞きたがったため話すも、理解できない様子で首を傾げていた。馬車が移動の主力の時代だ。道が整えられて自動車や飛行機など想像しにくいのかもしれない。
しかしグレイの話はもっと凄かった。グレイの世界では基本的に勉学は注射、いやナノマシンだったか? とにかく特殊な方法で一般的に学習すれば十年かかる知識を一気に覚えるらしい。というのも、グレイの世界では情報量が豊富であり語学や数式を学んでいればそれだけで一生を終えてしまう。だから一気に知識を流し込む必要がある。
私が聞いても想像しにくい遥か未来の話だ。リリーナたちにとって信じがたい話だっただろう。
そんな道中であったが、無事に王都に到着。
ポーラとグレイはノルン子爵邸に、私とリリーナはルイス公爵邸で一休みしてから服装を整えて王城に出向く、はずだったのだが。
「ぐああああ!」
馬車による長旅か、それとも他に何か原因があったのか。馬車から降りると同時に腰に痛みが走り膝に力が入らず倒れてしまう。
これではとても王城には行けない。
私は公爵邸の一室で静かに療養することになった。
「おじさん? ちゃんと休んでくださいね。私はちょっと行ってきますので」
リリーナは召喚状のこともあり王城に行かねばならず、心配している顔を見せてから王城に向かった。
その代わりと言うわけではないが。
「トモダチ、大丈夫?」
グレイが来てくれていた。まあ、私がいない以上会話が出来ず王城に連れて行く意味がないので置いていかれたとも言えるが。
ただ、こういう時に一人でないと言うのは少し嬉しい。
「ああ、うん。やはり馬車での長旅が原因だろうが、獣人の国への長距離移動も原因になっているだろうな。膝も似たようなものだ。動かなければ痛みはないのだが、僅かでも動かすと痛みが走ってな」
寝たままでは悪いと身体を起こそうとしただけで激痛が走るのだ。何とか時間をかけて起き上がったものの、回復まではまだまだ時間がかかりそうだ。
そういう意味ではグレイはこういう痛みとは無縁そうに見えるな。羨ましい。
「大丈夫? 予定も狂っているようだし。確か王都でやりたいことがあったはずだよね」
「創聖教か。そうだが、うう。今のままでは満足に身動きも取れない。せめて動けなくても下準備くらいはしておきたいな。公爵に会う機会があれば良いのだが」
ここが公爵邸とはいえ、身動きの取れない私では公爵に会うのは難しい。そもそも公爵とは国の二番手だ。忙しいはず。
一番楽な方法はリリーナを経由してだが、今の私の現状で公爵と話がしたいと言っても身体を治してからと言われて却下される未来が容易に想像できる。
となると他の方法は、と探っていれば。
「失礼するよ、セイイチ殿。娘の卒業式の時以来か」
向こうから公爵がやってきた。
思わぬ幸運に顔が緩みそうになるも、しっかりと引き締める。公爵がここにきた理由が分からない内は下手な対応は出来ない。
「お久しぶりです、公爵閣下。このような姿で失礼いたします。それで、私に何か用でしょうか?」
「気にしなくて良い。ただ少し君と話がしたいだけなんだ。いや聞きたいことがあってな。蒸気機関と言う名前に聞き覚えはあるか?」
蒸気、機関だと。思わぬ名前に私もグレイも驚き固まってしまった。
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