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おじさんはサラマンダーを解放する

あけましておめでとうございます。今年も一年よろしくお願いします。

 開拓団の砦に牢屋はない。

 もしも開拓団の者が罪を犯せば町に引き渡すか、独自に私刑を行うかのどちらか。


 しかし今回は開拓団の代表がいない時に、代表が管理する召喚獣が問題を起こしたため扱いをどうするか困ったことになった。

 牢屋はない。しかし町に引き渡すことも、勝手に私刑を行うことも出来ない。


 故に離れたところにあった空の倉庫をそのまま利用した。見張りはいない。

 しかしサラマンダーはその倉庫から出ることはない。それはサラマンダー自身に罪の意識があり、罰として受け入れている証。


 ……これは、丁度良いな。


「サラマンダー、いるか? ……何でケルピーもいるんだ?」


「おじさんか。何か用か? 済まないがここから出ることは出来ない」


「何を言っている、サラマンダー。悪いのは攻撃を仕掛けてきたハイドだ。お前に罪はない!」


 声をかけ安否を確認すると、目の前でサラマンダーとケルピーが言い争いを始めた。

 ケルピーがいたことに驚きつつも、両名の言い分をしばらくの間黙って聞いた。


 サラマンダーの言い分はどのような理由であれ、無関係の者を傷つけたのは自分であり、罰を受けるのは当然。

 ケルピーの言い分はサラマンダーの行為は正当な防御措置であり、サラマンダーに非はない。全てはハイドに非があり、ケープの怪我の責任もハイドが負うものでサラマンダーが負うべきものではない。


 どちらも間違ってはいない。無関係の者を意図せずとはいえ、傷つけてしまったのであればそれは罪であり、罰を受ける必要がある。

 しかしそうなる原因を作った者がいるのであれば、罪を背負うべきはその者であり、罰を受ける必要はない。


 どちらも譲らぬ言い合いを、しばらく私は黙って聞いていた。まずは今まで話せなかった思いの丈をぶつけることが必要。説得などその後で十分。


 そして互いに言い合いに疲れてきた辺りでスッと割って入る。


「まあまあ、お互い落ち着いて。サラマンダーは誰が悪いとか興味がないんだ。自分がケープに怪我を負わせた。その事実だけが重要なんだ。ただケルピーも間違っているわけじゃない。悪くない奴が罰を受けては本当に悪い奴が罰を受けられない。もしくは必要以上の罰を受ける必要が出てきてしまう。それはサラマンダーも本意ではないだろう?」


 さも中立のように両者を窘めながら話を進めるが、私もおおよそはケルピーの意見に賛成している。サラマンダーに罪はない。

 しかし強く言えばサラマンダーは頑なになってしまうだけ。サラマンダーの言い分を理解しているかのように思わせつつ、こちらの意見を聞いてもらう。


「むう、確かにそうかもしれないが。あいつに一生残る傷を負わせたことに変わりはない。罰を受けるだけの罪があるのだ」


 ただサラマンダーの意思は固く、容易に考えを変えられそうにはない。

 これは長期戦になりそうだと覚悟するも。


「それは違うぞ、サラマンダー! 俺は一生残る傷なんて負っていない!」


 予想よりも早く、サラマンダー用の説得最終兵器が来てくれた。

 サラマンダーの召喚主、ケープだ。倉庫の入口に立って自らの身体を大の字に広げて火傷の跡がないことを見せて叫ぶ。

 顔も腕もどこにも火傷の跡はない。サラマンダーに背負う罪などないと主張する。

 それは勇ましいとも、美しいとも言える姿なのだろう。ただそれだけにある一部が目立ってしまう。


「お、お、お前! 髪が!」


 禿げの部分がどうしても目立つ。一生残る傷ではないとはいえ、一か月か二か月は一部だけ禿げたままになってしまう。

 禿げさせたことを罪として背負うのはあまりにもしょうもないが、気にしないわけにもいかない。サラマンダーは何とも言えない表情をするも。


「気にするな、これは俺への罰だ。ずっと謝りたかった。済まなかった。お前を蔑ろにし、好物を捨てるようなことまでして。あの植物の種を学院長から貰って送ってほしいとリリーナに頼んだ。すぐに用意は出来ない。だが、必ず用意して俺が育てる! だからサラマンダー。許してほしい」


 しかし禿げたことなど気にすることではないとばかりにケープは堂々と頭を下げ、サラマンダーに謝罪をした。

 召喚主が召喚獣に頭を下げるなど滅多にない。だからこそ、ケープの反省が、謝罪がしっかりとサラマンダーに伝わる。


 誠意ある謝罪と詫びの品の手配を済ませている。ここまでされては断れるはずもなく。


「……分かった。許そう。そしてこれからは共に歩もう」


 謝罪を受け入れ、サラマンダーはケープへと歩み寄る。

 許された瞬間、ケープは涙を流し歩み寄ってきたサラマンダーの頭を撫でて抱きしめる。


 これで一件落着、にはならない。まだ残された問題がある。


「ケープが予想よりも早く来てくれて助かった。もう少し時間がかかるものかと。それで、ハイドへの処罰は?」


「早く来られたのは召喚獣を捕まえておく規定がなかったためだ。各派閥に事情を伝えて、それをサラマンダー解放の手続きにした。ハイドについては少々変わった罰を受けてもらうことになった。あいつにとっては厳しい処罰になるかもな」


 少々変わっていて厳しい処罰? 私はてっきり誰かの下で数か月間厳しい指導を受けるのかと思っていたが。

 まあサラマンダーが解放されて、ハイドに厳しい罰が下るのであれば文句はない。


 だが一応配慮をしなければならない相手がいる。


「ケルピー。ハイドにとって厳しい処罰らしいが良いだろうか?」


「自分のしでかしたことの責任は取らなければなりませんし、私が反対する理由はいっさいありません。協力出来るならしてあげても良いくらいです」


「おお。それは本当か。それは良かった。厳しい処罰にはどうしてもハイドの召喚獣であるケルピーの協力が必要でな。ああ、そんなに難しいことじゃないんだ」


 厳しい処罰にケルピーの協力が必要?

 ケープの言葉に私とケルピーは互いの顔を見て首を傾げた。


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