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非殺の剣  作者: じゅんき
2/5

次の敵

 「痛い」

 「血が止まらないんだ」

 「医者を呼んでくれ…」

 「助けて」


 団員達の悲鳴が鳴り響くなか先ほどまで震えて事の顛末を見守ることしか出来なかった、フロントの男が落ちている剣を拾う。


 「ぎゃああ!」

 「止せ止めろ」


 先ほどまでの悲鳴とはうって変って違う悲鳴が響き始める。


 「一体何が起きていやがる」


 スキンヘッドの男がそう叫ぶが光を奪われた目では周囲を確認することが出来ない。


 「ぐへっ!」


 何かに胸を踏まれた


 「誰だお前は」

 「お客様さっきはよくもやってくれましたよね」

 「その声お前か。殺されたくなかったらさっさと足をどけて医者の所まで連れていけ」

 体から足をどけた次の瞬間

 ザクッザクッザクッ

 胸を剣でめった刺しにする。

 「さっきのお返しだ」


 ビリーは駆け足で宿場町を走りだした。


(本当は街で銀獅子団の情報を集めたかったんだけど仕方ないか。騒ぎになるだろうけど宿のお兄さんに迷惑かけたな)


 宿場町と言っても小さな街なのでそうこう考え事をしているうちに街の出口まで着いた。


(朝早くだし人目にも見られてないしここまで来れば大丈夫だろ)


 こうして今日もまた街道を歩きだした。


(お腹空いたな。そういえばまだ朝食を食べてない)


 ポーチからおもむろに燻製肉を取り出してほおばる。何か食べると水も欲しくなるものだしかし水筒は空今回は我慢することにした。


 (次川に差しかかったら水を汲むとするか。)


 そうして歩き続けると道の脇で女性が倒れているのを見つけた。行き倒れだろうか、近寄ってみる。

 女は20歳前後かなり整った顔立ちをして身なりのいい格好をしていた。

 

 「大丈夫ですか?」

 「み…ずを下さい。」

 「ちょっと待ってて下さい。今水を汲んできますから。」

 

 一旦女性を背負って近くの木陰まで移動させ仰向けにさせた。


(さっき通り過ぎた所に民家があったな頼んで井戸を借りさせて貰うか。)


さっき来た道を走って引き返すことにした。


 「すいません!」


 扉を叩く。


「どちら様で?」

「旅の者ですが水を少し分けて貰いたいのですが。」

 

 警戒するように扉を少し開けた状態でこちらを品定めする。


「本当に旅の人かい?」

「そうですが?」


 首を傾げる。


 「最近物騒でね。以前はいなかった盗賊とかが出没するようになったもんだからよそ者には用心してんだよ」

 「病人を待たせているんです、お願いですから水を分けて貰えないでしょうか?」

 「その病人ってのはあんたの連れかい?」

 「違います」

 「ならなんだって助けるんだ?この大変なご時勢助ける義理もあるまいし」

 「そうは言っても困ってる人がいたら放って置けないんです」

 「ああそうかいならそこにある井戸を勝手に使ったらいい」


 と井戸の場所を指差す。

 

 「ありがとうございます」

 

 さっそく井戸で水を汲んで水筒を満タンにすると女性の元へと走り出した。

先ほどの場所に差しかかった所で女性が乗馬している男三人に囲まれているのが見える。しかも男達は武装しているようだ。

 

 「姉ちゃんよ俺達から逃げようたって無駄だ」

 「一緒にいいことしようぜ」


 馬の上から槍を突き付けて何やら不穏な空気が流れている。


 「もう逃げませんからお命ばかりはどうかお助け下さい」


 女性は膝をついて男達に懇願する。


 「それはお前の心がけ次第だな」

 「おい!お前ら女性が嫌がってるじゃないか」


 ビリーは女性の前に出た。


 「なんだお前、女の彼氏か?」

 「違う」

 「ならどうして俺達の邪魔をする。まさか人助けのために出てきたとか言うなよ。」

 「そのまさかだ」

 「こいつは傑作だぜ」


 男達は一斉に笑いだした。


 「色男さんよ取りあえず死ね!」


 真ん中の男が馬上から槍をビリーに向けて突いた。ビリーは回避してその槍を掴むと自分のほうに引っ張った、すると男はバランスを崩して落馬した。すかさず男の顔面に蹴りをお見舞いする。


 「ぐはっ!」

 「なんだてめぇ」


 間を入れずに右の男が槍で突く、その切っ先がビリーに届く前に奪った槍で男の肩を貫く。


 「がはっ!」


 突かれた衝撃で背中から落馬する。


 「ひい」


 残った男がビリーに背を向けて走りだした。

 逃げる男に向けて槍を投げる。


 「がっ」

 

 投げた槍は男の肩を射抜いて崩れ落ちる。

ビリーは倒れている男達を縛り上げると、女性に水筒を渡した。よほど我慢出来なかったのか手を取るや一心不乱に飲みだした。

 しばらく横になった後


 「見ず知らずの私に、水まで頂いたばかりではなく命までお助け頂いて本当にどうお礼を言っていいのかわかりません」

 「いいえ、どういたしまして。」

 「何かお礼が出来ればいいのですが、持ち合わせを持っていないのが心苦しいです」

 「あの男達は?」

 「ここから先にある私達の村を襲った盗賊の一味ですわ」

 「名乗り上げるのが送れました。私はラッカ村の村長の娘エミリーと申します。あなた様のお名前は?」

 「ビリー。今はわけあって剣術修行中の見習い剣士をやっている」

 「ビリー様その腕を見込んで私達の村を盗賊から救って下さい」

 「そういうのは領主様の仕事じゃないかな」

 「その領主様はまるで当てになりません。一刻も早く村を奪還しないことには犠牲者が増えるばかりですわ。」


 (なんだか次から次へと厄介事が増えていくような…)


 「わかった僕一人の力で出来るかどうかはわからないけどやってみるよ」

 「そう言うと思ってくれると思っていましたわ」


(そうと決まれば情報が必要だ。)


 捕まえた連中に詰め寄る。


 「お前達どこの連中だ?村にいる人数は?」

 「俺達が正直に言うとでも思ってんのかよ。仲間は売れねえ」


 ビリーはナイフを取り出すと一人の顔に突きつける。


 「そんなのでビビると思ってんのか」

 「色男のお前と違って潜ってきた修羅場が違うぜ」

 ナイフで目を突く。

 

 「目があああ!」

 「何しやがる」

 「正直に白状するなら命だけは許してやる。次は右目がいいか鼻がいいか選べ」


 その言葉が嘘ではないと悟った一人が喋り始めた

 

 「村にいるのは15人だ」

 「お楽しみの最中じゃなければ村の中央の村長の家に全員いるはず」

 「村を襲った目的は?」

 「そんなの俺達みたいな末端が知るはずないだろ。略奪以外にあんのかよ」

 「リーダーの名は?」

 「バッツ」

 「わかった」

 一通り聞きだした後背を向けてエミリーの方に歩きだした。

 

「おい!聞くだけ聞いて俺達このままかよ」

 「銀獅子団を敵に回したことを地獄で後悔すんなよ」


(また銀獅子団かどうやら因縁があるようだ)


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