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異世界でも、お姉ちゃんに任せなさい!  作者: 佐々木 みこと
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第5話 いよいよ出発?

いよいよ別邸に出発ということで、

玄関前に集合です。

一夜明けて、いよいよ私たちが生活することになるカダイン伯爵領の『別邸』へと出発する時となりました。


朝食は、目玉焼きとサラダ、イモと野菜の炒め物に水……。

やはり味付けはありませんでした……。

そして、ライスやパンなどの主食、緑茶に紅茶などもこの世界では食卓に上らないみたいです。マーサさんに聞いてもわからないとのことでした。

ちなみに飲み物は、水か果実ジュースか果実酒だけとのこと。


これは早急に改善しなければ、優斗だけでなく私も参ってしまいそうです。

現地についたら、お店を巡ってリサーチをしないといけません。



ちなみに余談ですが、昨夜トイレを使用する際に、私と優斗にも『魔力』があることが確認できてしまいました。なぜ確認できたかというと、こちらのトイレは、膝上くらいの背の高い円筒状のゴミ箱型で、用を足した後、フチに触れて『魔力』を流すと光属性の『魔法具』が起動して中のものがキレイさっぱり無くなってしまうという優れもの。


そして、先端の丸い部分が水色をしている木琴のステッキのような『魔法具』が置いてあって、こちらは持って『魔力』を流すと、丸い部分から水が出てきて洗いたいところを洗ってくれるようになっています。『魔力』を流す強弱で水の勢いも変わるのです。


その説明を聞いて、私達に『魔法具』が動かせるのかドキドキしましたが、二人とも簡単に動かすことができ、この世界の人と同様に『魔力』があることが確認でき安心したというわけです。


『魔法具』だけは、元の世界より発展していて、便利に感じました。



◇◇◇◇◇◇



私と優斗は、別邸に移動するからといって、特に何も準備をすることがありません。マーサさんからの呼び出しに従い、数名のメイドさんと一緒に玄関へと向かいます。


玄関ホールには、少し大きな『時計の置物』が鎮座していました。


(この世界にも時計があるのね……)


……と、興味深く眺めていると、傍にいたメイドさんが「この時計は領主様がつくられた『魔法具』なんですよ」と教えてくれました。


(領主……というとマリクさんのことよね……)


時計が作れるなんて“天才”というのは本当なのかも……と考えていると、時計の文字盤が私達が知っているものと異なっているのに気が付きました。


「あっ! この時計の文字盤……」

「うん、1から24までの数字があるね。それに針が無いみたい」


優斗も気が付いたようです。

この時計の文字盤は一番上が1から始まり、右回りで24までの数字が書いてあります。一日かけて一周する時計なのでしょう。しかも針の代わりに中央の輝石から一筋の赤い光が発せられています。


(これだと、何時まではわかるけど、何分は正確にはわからないわね……)


そう考えて首を傾けていると、先ほどのメイドさんが「私達が使用しているのは、日時計や水時計なので、この時計の発明は凄いことなんですよ!」と力説してくれました。


どうやら、この時計はマリクさんが発明した『特許品』みたいです……。



◇◇◇◇◇◇



玄関から外に出ると、そこにはすでに馬車が一台用意されていて、マリクさんやゼガートさん、レイシアさんと今回同行すると思われるメイドさんが2名、騎士の方が男女1名ずつ待機していました。


「昨日も言いましたが、あなた達は世界の勢力バランスをくずしかねない可能性を持っているのです。何かを行う際には、必ず相談し、報告も行うことを忘れないでください」


「わかっています。元の世界でも報告・連絡・相談は大切でしたから…」


「……わかっていればよいのです。目立った行動も慎んでくださいね」


そんな会話をマリクさんと交わすと、マーサさんとレイシアさんが、私達に同行する人達を連れてやってきました。


「こちらの二人が身の回りのお世話をいたします。リアナとカレンです」


「リアナです。ユウト様…なんでもお申し付けくださいね。…ミユ様も…」


「ユウト様! カレンと申します。夜寂しい時は遠慮なく私を呼んでくださいませ。ミユ様も…よろしくお願いします」


うーん…さすがの私も、昨日から何度も粗雑に扱われると慣れてきますね…。

でも皆さん優斗に重きを置いてくれているのは嬉しいので、全く不満はないのですが…。


さて、リアナさんは、ライトブラウンのロングヘアを後ろで束ねている大人しそうな感じ。年齢は18歳とのこと。カレンさんはレッドブラウンのロングヘアをアップにしています。ハキハキしていて活発そうな、少し色っぽい19歳。


あまり二人にこの世界での生活を頼ってしまうと、優斗から頼りにされなくなってしまうので、要注意ですね。負けませんよ!!

二人に見えないようにこぶしを握って気合いを入れると、次はレイシアさんが口を開きました。


「近衛騎士からシーリスと、騎士団親衛隊よりビリーが二人の護衛に付きます」


レイシアが紹介すると、

「近衛騎士シーリスです。得意な魔法は風属性。主たる武器はレイピアです。ユウト様…とミユ様、よろしくお願いします!」


ニコニコ笑顔が印象的で可愛いらしい彼女はパステルグリーンの髪。

ミディアムで肩にかかるかどうかの長さです。


「…騎士団親衛隊…ビリー。ガキと女の護衛なんて勘弁してほしいが、

総長からの命令だからな…二人とも俺に手間かけさせないようにしてくれ…」


年齢は私と同じくらい…濃い茶色の短髪の青年(おそらく20歳)です。

あからさまに嫌悪感をむき出しにしていて、一瞬で和やかだった雰囲気が陰湿に変わってしまいました。


レイシアさんも離れて見ているゼガートさんも、眉間にシワが入ったような…。


…あっ!


優斗までこの重い雰囲気に困っている様子です。

これは私がなんとかしなければ…。これから長く一緒に暮らさなければならない

仲間内の輪が出発前から乱れるのはまずいです。


護衛の交代をお願いすると……選別したであろうゼガートさんの面目を潰すことになるわね…。

う~ん……何とかこの雰囲気を上手く改善するためには…


…とあれこれと考えて、頭の中でセリフを整理してから、

私は、ビリーさんに向かって話しかけました。


「えっと…ビリーさん。私にはこの世界のことは、よくわかりませんが……

昨夜マーサさんから、騎士というのは多くの兵士の中から、ほんの一握りの方しか選ばれることのない有能な人材だと聞いています。あっていますか?」


「あ…あぁ、そうだな」


自分に言葉を返されるとは思わなかったのか、ビリーさんは少し棒読みで返事をしました。


「では…なぜ、ゼガートさんは、そんな有能な人達の中から、あえてあなたを

私達の護衛任務に選んだのでしょうか? ……考えてみましたか?」


「い、いや……」


「私は、こう思うのです…。騎士団というのは、領地全体を守る人達のことでしょう? 領地を守るということは、数多くのそこに住む領民を守るということ…。

騎士に求められているのは、敵を倒す力や技術だけでなく、敵から領民を守る能力。それに加えて領民を愛し、愛される能力…そんなことが求められるのだと思います。

これらを身に着けさせる教育の一環として、ゼガートさんはあなたを私たちの護衛任務に選んだと考えることはできませんか? 一人の領民を守り、慈しむことができずに、多くの領民を守り愛することができますか?」


「なっ!!!!」


ビリーさんは、急いでゼガートさんのほうに視線を向けると、ゼガートさんは一回小さく頷きました。


「そ、そうか……他の誰でもなく、この俺に普段ではできない経験を積ませ成長させようと……」


一人納得して、私と優斗に向き直って頭を下げます。


「先ほどは、無礼な言動失礼しました。ミユ様、ユウト様、護衛任務しっかりと努めさせていただきます」


「ありがとう。色々と迷惑をかけると思いますが、よろしくお願いします」


ビリーさんの態度が180度変わって安堵し、優斗の表情を見ると

おねぇちゃんすごい!! って感じでキラキラした瞳を私に向けてきます。


(任務完了! 良かったぁ……なんとかポイントアップだよ……)


マリクさんとゼガートさんが、何やらボソボソと話をしているのが視界に入りましたが、あまり気にせずに馬車へと乗り込みました。


◇◇◇◇◇◇


(たしか昨夜は、騎士団の結束を乱す問題児だとか言っていませんでしたか?)

(聞き違いだろう? 部下思いの私がそんなことで選別するわけなかろう……)

(……………………)


◇◇◇◇◇◇



さぁ! いよいよ馬車が出発!

……というところで、マリクさんが小走りに私の元へとやってきました。


(……まだ何かあるのかしら?)


「ひとつ言い忘れたことがありました。昨夜、マーサからそのほう達が着ていた服装を預かって、調べたのですが……素材といい、縫い方・機能性といい、ずいぶんと勉強になりました……。

あなたの下着もよく調べたいので、ここに置いて行ってください」


(………………………………!!!!!!!)



「へ、変態です!! 変態がここにいます!!」


「なっ! 何をいうのです! 私はただ異世界人の服飾技術を調べて産業に活かしたいだけです!」


「わっ……私のを触られたり、匂いを嗅がれたりしたら死んじゃいます!!」


「に、匂いなんて嗅ぐわけないでしょう! ……ん? 異世界人の服の匂いには何か魔法効果があるのですか?」


「そんなわけないでしょ~~~!!!」



……とか、最後はバタバタとにぎやかになってしまいましたが、私達別邸に向かう6人の馬車はようやく走りだしました。

ようやく出発にこぎつけました。

次回は、いよいよ無口だった優斗視点を書こうかと…

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