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異世界でも、お姉ちゃんに任せなさい!  作者: 佐々木 みこと
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第35話 軍事演習の前夜祭(後編)

前回の続きです。

パーティーでどんな事が起こるのでしょうか?


ブックマーク、評価ありがとうございます。

今年も頑張りますので、応援よろしくお願いいたします。

「先の忌まわしき政争から2年と5カ月、私達は常に将来に対して不安を抱く日々を過ごしてきましたが、それももう終わりを告げようとしています! 今日この場にお越しいただいたアストリア侯爵家、そしてサーペント伯爵家の皆様の協力、そして領内の皆の働きにより、我々は『先に待ち受ける苦難』に対し、充分『互角』に対応し得る力を得ることができたからです!」


マリクさんが普段は出さないような大きな声で挨拶を始めると、会場の貴族達から歓声が上がります。


『先に待ち受ける苦難』というのは、ザナッシュ公爵一派との戦争再開を意味していますが、それに対して『互角』に戦えるどのような力を得たのかは明言していません。なぜなら、この場には裏でザナッシュ公爵陣営に内通している者がいる可能性があるからです。


私や優斗に関する情報について、一切漏洩しないように厳しく命令されている軍関係者の多くが現在の事情を理解し、ザナッシュ公爵一派との戦争に希望を見出していますが、軍関係者の身内を持たない貴族は、この手の情報から締め出されています。おそらく、今夜開かれるパーティーも「開戦前に領内の士気低下を防ぐために三家で考えたパフォーマンスの一環」と考えている貴族も多いでしょう。


「………ということで、今日のパーティーは協力いただいた両家と、この場にいる皆へ感謝の気持ちから催させてもらいました! 今日は思う存分、楽しんでいただきたいと思います!」


マリクさんの挨拶が終了すると、再び大きな歓声が上がりました。


その後、アルフレッド様の挨拶、ガレオン様の挨拶と続き、シュリさんの乾杯の発声をもって、ようやくパーティーの始まりとなりました。



◇◇◇◇◇◇



この世界のパーティーは、私がイメージしていたものと異なっています。


私は貴族達のパーティーといえば、クラシック音楽の生演奏が流れる中、男女が優雅に社交ダンスを踊るイメージがあったのですが、この世界では楽器が“打楽器”と“笛”しかなく、音楽もポルカ調の曲やフォークダンスで流れる様な軽快な曲ばかりで『賑やかな民族のお祭り』といった雰囲気です。


むしろ、ダンス会場を取り囲むように配置されている飲食スペースのほうが、貴族達が上品に食事を楽しみながら談笑しており、とても優雅な印象を受けます。


「優斗、私達も先に何かお腹に入れておきましょうか……」


そう私が提案すると、優斗も微笑みながら頷きます。

護衛達を連れ立って会場の端にある飲食スペースへとたどり着くと、その場所に立っているメイドさん達が、すぐに私達に料理を盛った皿や飲み物を勧めてくれました。


優斗と二人で飲食を楽しみながら会話している間、周囲の女性陣から優斗に向けて熱い視線が注がれているのがわかるのですが、レイシアさんがさり気なく威嚇をしているためか、遠巻きに見て「キャアキャア♪」と黄色い声を上げているだけに留まっています。


しばらくその場で優斗と護衛達で過ごしていると、フィオーラ様が自身の護衛を伴って私達の元を訪れました。


「二人ともよろしいかしら? ようやくユウトにも会うことができましたね」


優しい眼差しで美人に見つめられた優斗は無意識に顔を赤らめながら、


「は、はい! 初めまして! 優斗と申します。フィオーラ様におかれましては……」


「ふふっ、堅苦しい挨拶は不要ですよ…。私達は養子とはいえ、親子となるのですから気軽に会話をいたしましょう」


「あ、ありがとうございます」


(うん、やはりフィオーラ様は素敵な方ね……)


私だけでなく優斗も義母となる彼女の人柄に好感を持てたのか、しだいに最初のぎこちなさが消え、自然体で会話が出来るようになってきました。


私達三人の和やかな会話がしばらく続いていると、優斗の護衛達の「ユウト様とあんなに話せてうらやましい――――!」という嫉妬を含んだ視線や、周囲の貴族令嬢達の「フィオーラ様とユウト様のお姉さん…早く他へ移動してください! ユウト様に近づけないじゃない!」という恨みがましい視線が降り注いできました。


(むぅ……そろそろ他の場所に移動してアルフレッド様やガレオン様にご挨拶したほうが良いよね…)


私がそんなことを考えて周囲を見渡すと、私はとんでもない状況に気が付いてしまいました! それは会場にいる人達の偏りです。明らかに会場内の人の位置関係がハッキリと区分けが出来てしまっています。


つまり……

①アルフレッド様・ガレオン様・マリク様の周りに集まっている男性貴族達

②シュリさんの周りに集まっている女性貴族達

③私・優斗・フィオーラ様を取り囲んでいる女性貴族達

④会場の中央で踊りを楽しんでいる男女達

⑤ガイア様と護衛の方……


(ま、まずい! パーティーが始まったら、ご機嫌斜めなガイア様に何かフォローしなければ…と思っていたのに、すっかり忘れていたよ!!)


私が冷や汗を流しながら彼を凝視していると、彼は私の視線に気が付いたのか私達がいる人だかりのほうへと歩み寄ってきました。


(…う、うわっ! ど、どうしよう!!)


何を話せば良いのか、会話の糸口も掴めないままガイア様がこちらに辿りついてしまいました。彼は私と優斗には目を合わせることなく、フィオーラ様の前に立ちました。


「あらガイア…久しぶりね。元気にしていたかしら」


「はい、お陰様で日々元気に過ごさせていただいております。フィオーラ様もお元気そうで何よりです。まさか“このような”場でお会いできるとは思いませんでした。」


(ん? 何か“このような”って少し棘のある言い方をしたような…)


「ふふっ……貴方も既に聞いているかと思うけれど、このパーティーは後日私の養子になる二人に会える機会だと思ってお祖父様に無理を言って参加させてもらったのよ」


そう言って私達姉弟に優しい視線を送ったフィオーラ様ですが、それを鼻で笑うようにガイア様が言葉を発します。


「あぁ……。彼らが運の良い亡命貴族の姉弟ですか…。どのような経緯でアストリア侯爵家に取り入ったのかは存じませんが、彼らを養子にすることがアストリア侯爵家にとって利があるとは全く思えません……まして麗しいフィオーラ様の養子などと…耳を疑ってしまいます」


(ムムッ!)


明らかに私達姉弟に対する悪意ある言葉に、正直「イラッ」としてしまいましたが、ここは彼を立てるような返答をしようかと試みます。


「初めましてガイア様。私がこの度フィオーラ様のお世話になる美結と申します。あちらが弟の優斗です。ガイア様のおっしゃるとおり……私には何の才もございません。運よく弟が軍事面での才能をお認めいただいたようで、身に余る養子縁組のお話をいただくことに………」


私が柔らかい口調で言葉を紡ぐと、途中でガイア様が割って入りました。


「ほうっ! この姉のほうは、すでに侯爵家の身内になった気でいるようだな。まだ貴様らは『亡命貴族』ということを忘れるな! 貴様らから先に私に声をかけるなど無礼であるぞ!」


故意に周囲に聞こえるように発した大声に、私だけでなく優斗もビクリと身体を震わせました。私達を取り囲んでいる女性貴族の面々もこちらの様子をじっと見守っています。


(し、しまったぁ………)


明らかに私の落ち度です。少しでも早くガイア様の負の感情を和らげようと考え、彼からのお声掛けを待たずに発言してしまいました。


「し、失礼いたしました」

「私からもお詫びいたします。申し訳ありません」


私がすぐにお詫びすると、優斗もすぐに駆け寄ってきて私の隣で頭を下げます。優斗が頭を下げたことで周りの視線が一気にガイア様に降り注ぎましたが、これは「何この偉そうな奴! ユウト様が可哀想じゃない!!」と考える女性陣の怒りの感情に他なりません。


しかし、ガイア様は周囲の思っていることとは反対に、自分に対して好意的な視線が多数向けられていると捉えたようで、胸を張って更に私達に言い放ちます。


「ふん、わかれば良いのだ! 所詮は貧乏貴族の出なのであろう……フィオーラ様やアストリア侯爵家の顔をつぶさないように、しっかりと礼儀作法を勉強するのだな!」


「…はい…お言葉…胸に刻みます」

「はい…わかりました」


再び二人で頭を下げ、とりあえずこれで終了かと「ホッ」と胸を撫でおろした直後、フィオーラ様が私達を庇うように前に立ちました。


「ガイア……正式な養子縁組が成されていなくても、私の中ではすでに二人は私の可愛い子に違いありません。それに、『運の良い亡命貴族』として貴方がこの二人を蔑むのであれば、私も先の政争で夫を亡くし実家に出戻って来た身……貴方は私に対してもそう思っているということなのでしょうね……」


「!!!!!!!」


予想外のフィオーラ様からの発言にガイア様が動揺しています。私や優斗も驚きを隠せません。下げていた頭を上げ、フィオーラ様の後ろ姿を凝視してしまいました。


「そ、そのようなことは思っておりません。私はただ何の役に立つのかわからない二人をアストリア侯爵家が庇護することを心配したに過ぎません」


「……そう……でも、その心配は無用です。ユウトもミユも軍において多大なる貢献をしているとシュリからもマリク伯爵からも聞いています。明日の『軍事演習』でそれは証明されるでしょう。私の言いたいことは以上です。私は貴方達に仲良くして欲しいと思っています。私は席を外しますから、お互い少し話し合ってはいかがでしょうか?」


フィオーラ様はそう言って私達に笑顔で微笑むと、護衛を連れてその場を離れて行きました。



◇◇◇◇◇◇



後に残された私達三人は、少し気まずい雰囲気を漂わせながらも会話を始めました。


「ふんっ……フィオーラ様に感謝するのだな。先ほどの無礼については不問にしよう…。しかし、明日の軍事演習…本当に視察する価値があるというのか?」


少し怒りが和らいだ様子のガイア様ですが、相変わらず私達に対する上から目線は変わりません。


「は、はい。明日の軍事演習では“集団戦闘”の有用性や新しく開発した装備などをご覧いただけると思います」


優斗が続けて“集団戦闘”とは何かを簡単に説明すると、


「……集団戦闘? 戦場では個々の武力が最重要だ! そんな軟弱な考えで戦争に勝てると? ふざけるな! 全く……やはりただの使えないガキではないか!」


「「「「「「!!!!!!!!」」」」」」



彼のその一言に周囲に緊張が走りました。

私だけでなく、レイシアさんを初めとした優斗の護衛達が一斉に殺気を放っています。


「うん…なんだ? 何か文句があるというのか?」


さすがは近い将来『二つ名』で呼ばれるのでは…と言われているだけあって、すぐに自分に向けられている殺気に気が付いたようです。


私も護衛の皆と同じ気持ちですが、このままではまずいと思い、私が先に言葉を発します。


「ガ、ガイア様! もちろん個々の武力が重要だとは思いますが、全員が貴方様のような強さを持っているわけではありませんので……それにレイシアさんやシーリスのような『二つ名』を持った敵がいる可能性も……」


「ふんっ! 『二つ名』が何人出てこようが、私が負けるはずあるまい! まして女などに……」


そう言ってレイシアさんとシーリスに視線を送ります。


(やめてぇ――――――! 喧嘩売らないで―――――――!)


私の心の中の叫びに気が付くことなく、レイシアさんとシーリスさんは臨戦態勢です。



しかしここで救世主(?)が現れました。


「そうして相手を侮り油断していると戦場では命取りです」

「確かに…今の彼では、ミユにも勝てないかもしれませんね」


いつの間にか現れたシュリさんとマリクさんが、涼しい顔でガイア様に聞こえるように言い放ちました。その言葉に驚いたガイア様が二人を振り返ります。


「これは…シュリ様にマリク様…。今、何と? 私がそこの女にも勝てないとおっしゃいましたか?」


「油断しているとマリクの言ったように、ミユ殿には勝てないと思います」

「ふふっ…油断していなくても、彼では勝てないことも………」


「!!!!!!!!!」


(ちょ、ちょっとマリクさん! 何でさらに挑発しているのですか!!)


「こ、この私が、『二つ名』持ちでもない者に…しかも女に負けると……」


マリクさんの挑発にガイア様は顔を真っ赤にしながら溢れ出る怒りを抑えている様子です。


「ガイア殿…よろしければ明日の軍事演習で、『そのような場』を設けてもよろしいですよ。自身の身の程を知れば、ユウトの提唱する“集団戦闘”の重要性もより頭に入るでしょうからね…」


そう言ってニヤリと笑うマリクさんですが、『そのような場』って何でしょう?


「わかりました! そこまで言われては、このガイア・サーペント受けて立ちましょう!! そこの女! 明日は女だからと言って容赦はせぬ……覚悟しておけ!!」


(えっ? ど、どういうこと?)


彼が発した言葉の意味がよくわからずにいる私ですが、ガイア様はそんな事は意に介さず、マントを翻し、靴音を響かせながらその場を立ち去っていきました。その背中からは闘志がみなぎっていて怖いです。



「あ、あの……マリクさん。何かガイア様から『明日は容赦しない』と言われた気がするのですが…。明日、何があるのでしょうか?」


「ん? 先ほどの会話を聞いていなかったのですか? 明日の軍事演習の際に、ミユとガイア殿の『一騎打ち』の場を設けることになったということです」


「へ?」


「明日は私が教えた魔法の技術を存分に発揮して、サーペント伯爵家の“お坊ちゃん”に痛い目をみせてあげなさい」


「・・・・・・・・・」


(な、何で……、ど、どうしてこうなったの?)


その後、私の頭の中が真っ白になってしまったのは言うまでもありません…。


ガイア様のフォローに回っていたはずなのに、

結果は彼との『一騎打ち』という事態になってしまいました。


次回は軍事演習の前座として、

ガイア様とミユの『一騎打ち』が行われます。

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