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異世界でも、お姉ちゃんに任せなさい!  作者: 佐々木 みこと
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第3話 食堂での話合い(前)

食堂での話し合いの準備ができるまで、

メイドさん達に客間でお着替えさせられることに…。

私たち姉弟は今、カダイン伯爵邸の数ある客間の一室にいます。

4~5人用のホテルの一室くらいの広さで、内装は白と薄いグリーンを基調としたシンプルなデザイン。2つあるシングルベッドは、どちらもきれいにベッドメイキングしてあり清潔そのもの。

残念なのは、お姫様ベッドのような天蓋つきではないことかしら…。


とりあえず夕食の準備が出来るまで、ここでメイドさん達に着替えをさせてもらいながら待っているようにとのことでした。


部屋の窓から外をみると日が暮れかけているのが見えました。

現実世界は夜で、私たちは就寝前の時間帯だったので不思議な感じがします…。


(今日は夕食を2回とることになるのね…)


…とか、ちっぽけなことを考えていると、

周囲の様子におかしなところを見つけました。


(あれ? ……なんか変じゃない?)


今、この部屋にいるメイドさんは6人。

そして、私の着替えを手伝ってくれているのはメイド長を務めていると自己紹介してくれたマーサさん1人。

マーサさんは、メイド長といっても見た感じの年齢は20歳くらいだと思います。


おかしいと思ったのは、あとの5人が全員、優斗の周りに集まって、何着もの服を着せ替えしながら楽しそうにしていること。


優斗の周りのメイドさん達の頬と耳は赤く、目は潤み、ときどき胸のあたりに両手をあてて「ふぅ……」とか「はぁ……」とか吐息を漏らしています。


ん? 今気が付いたけれど、私の着替えを手伝ってくれているマーサさんも、チラチラと優斗のほうを見ては、頬を染めているような……。


(……みんな優斗に興味あり? ……あれ? どういうこと??)


優斗の周りでおこっている現象を理解できずにいると、

マーサさんが、「ミユ様、終わりました」と声をかけてきました。


麻のような素材の地味な長袖シャツとひざ下までの丈のスカート。

……うん。シンプル。


私と優斗の着ていた私服は、下着以外、マーサさんに持って行かれてしまいました。最初は下着も持っていかれそうになったけど、さすがにそれは……と勘弁してもらいました。


きっと後で洗濯してくれるのかな?

……とその時は、特に気に留めず……



◇◇◇◇◇



優斗のほうも着替えが終わったみたいです。


(………お、お坊ちゃま?)


完成した優斗の恰好は、明らかに裕福な家庭のお坊ちゃま的な服装でした。


(むぅぅぅ…お姉ちゃんの「田舎娘」スタイルと違いすぎやしませんか?

 ……でも優斗が素敵だから良しとしましょう!)


……と自分を無理やり納得させていると、部屋をノックする音が聞こえ、

食事の準備が整ったので、食堂に来てほしいとの呼び出しがありました。



◇◇◇◇◇



メイドさん達の誘導で食堂に到着すると、黒いローブを脱いで、いかにも『貴族』の恰好をしているマリクさんがすでに着席していました。


(見た目はとても賢そうで優しそうなのよね……見た目は……)


……と地下室での仕打ちを思い出し、つい口を尖らせてしまいます。


マリクさんの後ろには、地下室で会った騎士団総長のゼガートさんと近衛騎士長のレイシアさんが立っています。地下室では暗くてわからなかったけれど、レイシアさんは薄い紫色の髪をショートボブにカットしている美人さんでした。


「さて、二人ともそこにかけて……」


マリクさんが席を勧めてきたので、遠慮なく指定された席に座ります。

すると、料理を持ったメイドさん達が、次々とお皿を運んで私たちの前に並べていきました。



(……サラダに、焼肉、焼き芋? オレンジジュース……以上!?)


驚いた!! となりの優斗も並べられた料理にビックリしています。


なぜなら……サラダは野菜を切って盛り付けただけでドレッシングは見当たりません。おそらく牛だと思う焼肉は、焼いたあるだけで塩コショウやタレがかかっている形跡なし。焼き芋は、たぶんジャガイモだと思うけれど輪切りにして、焼いてあるだけです。


私達の料理だけかと思い、マリクさんのほうを見ると、やはり同じ料理が並んでいます。


「どうです? 驚いたでしょう。今日は特別にとれたての“タウの肉”と搾りたての“レジーの実”のジュースを用意したのですよ」


(えぇ、とても驚きました。……別の意味で……)


……と、とりあえずその言葉を飲み込んで、マリクさんに質問してみました。


「……えっと、こちらではいつもこのような料理を?」

「ん? あなた達の世界の料理と違いますか?」

「えぇ……私達の世界では、調味料で下味をつけたり、タレをかけたり……」

「調味料? タレ? 味はついていると思いますが……」


(……だめです。きっとこの世界ではその概念がないのかもしれません……)


「今度、私たちの世界の料理をご紹介しますね。材料とかが揃えばですけど……」


そう言って無難に料理の話を終了し、食事を開始することにしました。


……味がない……というか素材の味しかしません。

当たり前ですが……。


優斗を見ると、やはり味のない食事を我慢して食べているのがわかります。

レジ―の実のジュースは、やはりオレンジジュースそのもので美味しいのだけれど……


そんなわけで、まずひとつ、優斗に異世界でも美味しい料理を食べてもらうという目標ができました。


「優斗、お姉ちゃんにまかせて! きっと元の世界と同じ料理を食べさせてあげるからね!」


優斗にむかってささやくと、優斗はうれしいそうに頷いてくれました。


(おねぇちゃん。ありがとう……)


口パクで私に返事をすると、可愛らしい口でジュースを一口飲みました。

メイドさん達は優斗くんへの熱い視線が止まりません。

美結と優斗はこの世界のシンプルすぎる食事にビックリ!

美結は優斗へのアピール所がみつかり少し気合いが入りました。

食事の後は、今後のことで、マリクさんとの話し合いです。

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