龍神沼の龍太郎
深々と頭を下げた龍太郎。
顔をあげると同時に弾ける様に破顔し僕の隣へにじり寄る。
あまりにも距離が近いが、まるで稚児が、親を見つけたような無邪気で濁りの無い目元が、僕に拒む事を許さない。
「ほら…俺さぁ剛くん…
見た目がこんなだし、産まれにも曰くがあるんだ。
けどね…村の人達は、僕のこの家を建ててくれて、しかも、小さいけれど畑まで貸してくれる。
でも、やっぱり、何処かよそよそしいんだ。
でも、俺にはわかるんだ。君なら…君ならば…きっと僕の事を理解してくれる。
理解してくれた上で、俺と友達になってくれる。
そんな…気がするんだ。
なぁ剛くん、僕は是非とも剛くんと友達になりたい。」
そんな…急に言われても、友達になれない。
やはり、友達って十分に相手の事を理解して、たがいに理解を深め合ってこそ友達になれるんじゃないかな?
龍太郎は、そんな当たり前の事すら知らない程に孤独なのか?
異形さ故の孤独…
僕は自分の意思で孤独を望んできた。
だけど…人間社会とは真の孤独を手に入れる事は出来ない。
最強の照ちゃんの様に、どうしても繋がりは出来る。
況してや僕の世界では、ネットなどの中で僕の悪口を書き込まれる。
これも、良かれ悪しかれ繋がりのひとつだ。
ネットも無い。しかも、テレビも電気すらも無い戦国乱世…
異形さ故に孤独に甘んじる龍太郎の淋しさなど計り知れ無い。
僕は恐る恐る、右手を差し出し龍太郎の手の甲にソッとのせた。
ヒンヤリとした鱗特有の冷たさが伝わって来る。
すると…どういう事か龍太郎は、その穢れの無い目から、大量の涙を流し
「自分から俺の手に触れてくれたのは、剛くんで三人目だ。」と
オロオロと泣き始めた。
オロオロと泣き始めた龍太郎の背をさすり
「僕以外の二人ってだれなの?」
「おっ母ぁと姫様のふたりだ。」
鼻水を啜り啜り答える龍太郎が自棄に愛おしく(いとおしく)龍太郎の背中を今までより少し力を入れてさすった。
もう多分日も暮れて随分時間が経つのだろう。
チョロチョロと燃えていた囲炉裏の火が小さくなってきた。
「ねえ…龍太郎?そろそろ寝なきゃいけない時間じゃないの?」
龍太郎は涙と鼻水でクシャクシャになった顔をあげ
「そうだな…剛くん。寝る前に飯を食わないと。」とたちあがった
今まで気づかなかったが、飯の用意をする為にたちあがった龍太郎は、雲を突く様な大男だった。




