屋形へ
小隈の屋形がハッキリ見えてきた。
左は山付きみぎは古処山、馬見山、その間を埋め尽くす一面の田園風景…その山付きに左に折れるみちが有る。
幸ちゃんに続き煌姫もその道へ入って行く。
勿論僕も龍太郎も和尚も続いて入って行く。
入って直ぐにキツイ上り坂…10歩も歩かぬうちに僕の息が上がりそうになる。
僕の後ろを歩いていた龍太郎やが、心配そうに
「剛くん…僕がおぶっていこうか?」
なんて気遣いの出来るナイスな、奴なんだ龍太郎って奴は…
そんな、僕のぬか喜びを打ち消す様に
「龍太郎!剛には、そんな事は必要ない!」
「だって、剛くん坂を登り出した途端にキツそうなんだもん。」
「キツくても自分の足で歩かにゃならん。
これからは自分の足で歩かにゃだれも、頼りになるならん!
それとも、龍太郎…剛が移動するとき、お前が何時もおぶって行くなら構わんが?」
後ろを振り向きもせず…
つれない…
龍太郎は、そのままシュンとしたまま、コッソリと僕の背中を押してくれた。
屋形の正面にまでたどり着く…
幸ちゃんが、大音声で
「姫が戻られた。開門せよ!」と、告げるといかにも重そうな開き扉がユックリと開く。
扉の脇には門番らしき人が2人、こうべを垂れて姫を出迎える。
煌姫は門番らしき2人に
「ご苦労様ですね…」と優しく声を掛け中に入って行く。幸ちゃんは、流石に用心棒らしく煌姫の側を離れない。
そのまみ後ろを振り向きもせず…
「剛は俺と一緒に来てくれ。和尚と龍太郎はまず厨へでも通してくれ。」と、下働きらしき女に告げて居た。
和尚と龍太郎は屋敷の入口で左に折れて厨へむかう。
本来は、この屋形はお城の筈。
だから姫は本丸と、思しき中央の建物へ向かう。
和尚や龍太郎達は二の丸なのか三の丸はたまた櫓かに連れて行かれた。
本丸らしき屋形へ入ると、如何にもこの屋敷の中を取り仕切って居そうな中年の女性に煌姫は連れて行かれた。
「剛…俺の部屋は此処だ。」と、入り口の右脇の扉を開いた。
それは、部屋というより待機所と、言った方が
正しい。なんせ横引きの扉には、障子では無く格子になっている。用心棒の幸ちゃんは、この屋敷に出入りする全ての人間を監視しなければならならない立場なのがよくわかる。
中は板敷き…畳は無い。
「まあ…座れ…」と僕に優しく話し掛け
僕はその言葉に甘え…幸ちゃんに倣い板敷きの上に胡座をかいた。




