地獄に仏
「俺だ!照幸だ!」
と、僕に呼び掛けた照ちゃん。
親しみのこもる逞しい頼りがいのある声につられ
僕は照ちゃんの厚い胸板にとびこんだ。
疑う余地などない。
この過去だか、異世界だか、平行世界だかに一目で僕を剛だと呼び掛けられるのは…
照ちゃん以外には有り得ない。何の警戒もせずに飛び込んだ僕を照ちゃんはキツく抱きしめ…
「剛…お前はあの頃のままだなぁ」と、疑問を口にする。
「あの頃も何も僕はこの世界に昨日飛ばされてきたんだ。」
「そうか?剛は昨日こちらに飛ばされて来たのか?
さぞかし面食らっただろう?」
「うん、ここが僕らの居た世界とは、全く異次元の世界だと気づくのに半日近くかかったけど」
「ハハハ、剛らしいといえば剛はらしいがな?」
どうせ僕は何の取り柄も無い、ひ弱な木偶の坊ですよ。
照ちゃんみたいに強くも、況してや
頭のキレも鈍い木偶の坊ですよ。と、
自分を卑下してみようとしたが次に照ちゃんの口にした言葉は意外だった。
「これで、俺がこの世界に飛ばされた理由がわかった。剛、この世界がお前を必要として、俺は、そのサポート役として飛ばされたんだ。
いわば、トバッチリを食らったんだな。」と、
声高らかに笑うが、いや、それはコッチの台詞であって、戦国乱世が求めるの、最強の照ちゃんだからと、密かに心の中でツッコミをいれた。
そこで、僕等はキョトンとした和尚と龍太郎にやっと気づいた。
無理もない…誰もこの展開は予測できなかった筈…
なにせ僕も、照ちゃんも、予測出来なかったのに当事者以外が予測出来る筈がない。
さて…皆んなにどう説明したものか?
迂闊に僕ら二人は異世界から飛ばされて来ました…
なんて口にしたら、頭がおかしいと勘ぐられても仕方がない。
照ちゃんなんか用心棒の職を失いかねない。
しかし、照ちゃんの表情にはそんな不安など微塵も浮かんでない。
照ちゃんの横に立つ煌姫が
「この方が幸右衛門が常々私に話してくれたお友達の坂口強さんですか。」と、尋ねた。




