傭兵
煌姫が龍太郎の両手を握りしめ
あやす様に優しく語り掛けている時…
その煌姫の後ろから
「姫様、勝手に一人で出歩かれては困ります。」と
青年の声がした。
その声の主はと、僕が目を向けると
そこに立っていたのは龍太郎や和尚ほどではないが
体に筋肉を纏い精悍な表情で煌姫を見つめる青年が居た。
その顔は何処か懐かしく、親しみ深いのだが…
この世界に飛ばされた僕に、その様な知り合いなど居ない筈…
しかし…その表情から目を離す事が出来ない。
その青年は龍太郎や和尚を他所に煌姫だけを見つめ
クドクドと決して自分の目の届かぬ所 へは一人では出歩くのをやめていただきたい。と、告げて居た。
和尚が、酒臭い吐息を吐きながら小声で耳元で囁く様に教えてくれた。
「奴の名は幸右衛門…まあ、いわゆる所でいえば用心棒というか傭兵というか、この村で雇う唯一戦闘を生業としている。」
僕も和尚に小声で聞いてみた。
「強いの?」
「強いなんてもんじゃ無い。偶に野武士が田や畑の作物を奪いに来るが5〜6人の野武士等あっとゆう間に蹴散らしてくれる。
その上、奴は頭も切れる…
そんな奴が三度の飯だけで雇えるのはとても幸運な事だ」
「それは賃金としては安いの?」
「破格だ あれ程の力を持つ奴は本当なら最低で三十石…銀八枚というとこだ。
しかも傭兵なんぞというのは、本当に危なくなったら
ケツをまくってにげ出すもんだ。」
「彼は逃げ出さなかったの?」
「ああ…幸右衛門の奴は逃げださなかった。」
和尚がそこまで話した時
幸右衛門がこちらを睨む様に視線を向けた。
ひ弱で木偶の坊な僕には心臓を鷲掴みにされる程に鋭かった。
しかし…その鋭い視線が不意に緩む。
「剛…剛じゃないのか?」
不意に僕の名を呼ばれ何故この世界に僕の名を一目で当てることができる?
最強の照ちゃんとは名前も歳も違いすぎる
しかし…その疑問は、たちまちのうちにかき消された。
「俺だ!剛!照幸だ!」




