第7章ーーファッションと学力は必須?その2
ーー彩人宅ーー
「どうぞ、入ってください!」
「お邪魔します」
茜は、染井さんをリビングへと案内した。
染井さんはリビングを見渡すと
「親御さんは?」
まぁ、当然の質問だ
「あ、両親は2人とも仕事で、ずっと居ないんだ。だから今は茜と僕だけなんだ」
すると染井さんは、少し気まずそうな顔をして
「じゃあ、家事はどうしているの?」
まぁ、それは心配になるところだよね。
「基本は茜がやってるよ。僕は掃除担当かな。たまに料理も手伝うけど、僕がするのは食材を切ることぐらいかな。僕が変に手を出すより茜に任せた方が美味しいから」
「もう、お兄ちゃんったら、そんなに褒めても、何も出ないよ〜(照れ照れ)」
「どれ位、2人で暮らしてるの?」
「私が中1の時だから3年ですね」
「そんな時から。大変だったんじゃない?」
ココで僕と茜の言葉は驚くほど被った。
「「そんな事ない(です)よ。」」
「「僕(私)には茜(お兄ちゃん)がいた(いました)から」」
染井さんは茜と僕を交互に見てから、どこか懐かしそうな顔をした。
「羨ましいわね」
彩人は、その表情に少し疑問を持った。
「染井さんは一人っ子なの?」
「えぇ、残念ながら」
染井さんは、とても寂しそうな顔をしていたが、僕は、そこから先には踏み込めなかった。
「それじゃ、先に夕飯にしちゃいますね。勉強は夕飯を食べてからにしましょう。」
「ありがとう」
茜の提案で夕飯を先に済ませることになった2人は、席について待ってる間、僕は染井さんに質問した。
「染井さん、本当に一人っ子なの?」
「えぇ、一人っ子よ。どうしてそんなことを聞くの?」
「ちょっとさっきのが気になったから。勘違いなら良いんだ」
タイミング良く茜が料理を運んできた。
「お待たせしました!今日は麻婆豆腐と中華スープとシーザーサラダです!」
「「「いただきます」」」
染井さんは麻婆豆腐をスプーンですくい、食べた。ピリッとした辛さと、その奥にあるコクが口いっぱいに拡がった。
「美味しい」
「本当ですか⁉︎良かった。染井先輩の口にあって」
そこから、学校の話を少ししながら3人の夕食の時間は過ぎていった。
「「「ごちそうさまでした」」」
「とても美味しかったわ」
「ありがとうございます。それじゃあ、片付けちゃうんで2人は勉強しててください」
「そんな、流石に悪いわ。洗い物ぐらい手伝わせて」
「いえいえ、染井先輩はお客さんなんですから、そんな事気にしなくて良いんですよ。むしろ勉強を進めてくれてる方が助かります」
「ごめんなさい。それじゃあお言葉に甘えさせてもらうわ」
「はい。それじゃあ勉強頑張ってください」
茜は洗い物をしにキッチンに向かった。
「それじゃあ、染井さん始めようか」
「そうね。始めましょうか。最初の方は確か中学の時に習ったのが書いてあるのから確認して行きましょう」
その結果、慣性の法則、摩擦などは分かったが残りは全く理解できず2人は行き詰まっていた。
「どうしよう。全くわからない」
「ごめんなさい。私もよ」
「2人とも、どんな感じですか?」
「それが全く」
「えっ⁉︎2人で⁉︎いったい何の勉強してるの⁉︎」
「ちょっと重力の勉強してるんだけど簡単な解釈が全く思いつかなくて」
「なんだ。そんな事で悩んでたの?」
「そんな事って、結構難しいだよ!」
さすがにいくら茜の頭が良いからって心外だ。
「お兄ちゃん、慣性の法則は分かるよね」
「そりゃ、分かるよ。だけど他のがよく分からなくて」
「それが分かれば簡単だよ。私なりの簡単な解釈で良いなら重力は、力の方向性に必要なんだよ」
「力の方向性?」
「そうそう。無重力だと1度一つの方向に進むと、ずっと遮蔽物やどこかに捕まらないと止まらないでしょ。あれは、重力による下の方向への力が無いから起こること。坂に丸い物を置くと転がるのは、重力が下の方向に力が働いてるから。もし仮に重力が下じゃなくて自分の正面から来ると後退して、背後から来ると前に進む。だから重力は力の方向性なんだよ」
「なんか、分かった気がする」
「私もよ」
「それなら良かった!あ、ちなみに背後から来るのは、イメージとしてはブラックホールに近いかな。あれは中心に強い重力力場が出来ててそこに集まるように重力が向かってるからです」
「透谷くん、茜ちゃん、私達より頭が良いの?」
「まぁ、実際海外だったら飛び級で大学卒業出来るレベルだからね」
「⁉︎なんで、あの学園に入学したの⁉︎」
「愚問ですね!そんなのお兄ちゃんがいるからに決まってるじゃないですか!(キリッ)」
「・・・・透谷くん」
「・・・何?」
「愛されてるわね」
染井さんの中で茜のブラコン度が上昇した。これは確定だろう。
茜を加えての勉強はスラスラと進み、時間も遅くなってきたところで染井さんの父親が迎えに来るということでおひらきになった。
ーー彩人宅前ーー
染井さんの父親が来るのを3人で待っていると
「そういえば、染井さんのお父さんは何の仕事をしているの?」
「大学の教授よ。どの分野かは覚えてないけどね」
「あれ?大学の教授で染井?どこかで聞いたことがあるような?」
茜は首を傾げながら考えていると、家の前に一台の車が停車した。
ガチャっ
「椿、迎えにきたぞ」
「お父さん、ありがとう」
「君が透谷くんか。娘に変なことはしてないだろうね?」
染井さんの父親は、物凄い剣幕で僕に詰め寄った。
「は、はい!もちろんです!(怖っ!)」
「ちょっと、お父さんやめてよ!」
「止めるな椿。ここは父親としてしっかり確認しないとだな・・・」
「あ、やっぱり染井教授じゃないですか」
「ん?なっ⁉︎これはこれは茜さんではないですか⁉︎どうして茜さんが⁉︎」
突然、染井さんの父親の顔が驚きの顔に染まった
「どうしても何も私の家ですから」
「⁉︎ということは、この男は茜さんのご兄妹なのですか⁉︎」
「はい。私のお兄ちゃんです」
「お父さん、茜ちゃんを知ってるの?」
「知ってるもなにも、茜さんは、歳に離れした、頭脳を買われ、日本の全大学が欲している人だぞ。私でさえ、茜さんには敵わない」
さすがは僕の妹だな。
「そんな〜褒めすぎですね。教授」
「いや〜、茜さんのお兄さんということなら安心です。椿、これからも勉強でわからないことがあったら、茜さんに聞きなさい。こんな機会は滅多にないからね」
「は、はい。(茜ちゃん、そんなに凄い人だったのね)」
「茜さんのお兄さん・・・名前を聞いても?」
「あ、彩人です」
「彩人さん、先ほどは失礼しました。これからも娘と仲良くしてください」
凄い手のひら返しだな。茜の影響力凄いな。
「あ、はい。それはもちろん」
「ありがとうございます。それでは私たちはこれで」
「透谷くん。茜ちゃん。また明日」
「「うん(はい)。また明日」」
僕と茜は、2人の乗った車が見えなくなるまで見送った。
「今日は、疲れたな〜」
「でも、楽しかったね」
「そうだね。そういえば、茜的には染井さんは、もう良いの?」
「ん〜、とりあえず様子見かな。今のところ大丈夫そうだし」
「そっか」
いちおう、そこはブレないのか。
「そんなことより、早く寝よ。明日起きれなくなっちゃうよ」
「そうだね。遅刻はいけないからな」
そんな話をしながら僕と茜は家へと入っていった。
「・・・・」
遠くからみている人影に気付かずに
ーー椿宅ーー
夜
『ゴメンね。お姉ちゃん』
「は!皐月!・・・夢」
私は息を整えながら、ついさっきまで見ていた夢に思いを馳せていた。
(久しぶりに見たわね。最近は全く見なかったのに。やっぱり、2人を見ていたせいかしら)
私は透谷くんと茜ちゃんの2人を思い浮かべた。
(あれから、もうすぐ1年か。必ず生き返らせてみせる。皐月を。妹を)
「待ってて。皐月」
続く
こんばんは。宵城永遠です。
大変長らくお待たせしました。
今回のラストで椿の妹の名前が出ましたが、その真相は、もう少し先で話にしようと思います。
次回は、バトル編になります。
できるだけ早く書き上げるので、どうかお待ちください。それでは、また次回