迷宮の薔薇園
昼下がりの午後
薔薇の庭園で読書をしていたカトリーヌは
なんだか落ちつかない気持ちで
庭園の階段を上り下りしていました。
「全く…全く…全く」
それとゆうのも…幼馴染みのジャックを待っていたからです。
「全く…全くもうっ!」
カトリーヌはそう言うと
石畳の階段へドサッと尻もちを付き
やや、はしたない格好で座りました。
カトリーヌは15歳
ジャックとは幼少の頃から両親の仕事の都合で
よく遊び相手になってもらっておりました。
お手伝いさんを圧倒させる程に元気な少女だったカトリーヌは
近くに住む1歳年上のジャックとよく追いかけっ子やおままごとをして遊びました。
そんなカトリーヌはジャックの事が好きでした…
よく、初恋は実らないとは言いますが…
カトリーヌにとってジャックは大事な男の子だったのです。
「全くもうっ…!約束の時間に30分も遅れてる!」
今日のカトリーヌはややご機嫌斜めでした。
そこへ 息を切らしたジャックがやって来ました。
「ごめん。カトリーヌ…。」
そう謝ったジャックの手には美しい薔薇の花束がありました。
「これ…。珍しい薔薇だから」
そう言うとジャックは
階段にしゃがみこんでいるカトリーヌに
薔薇の花束を渡しました。
カトリーヌは、しかめっ面をしながら
少し嬉しそうに口元を緩ませて
「ふんっ…。別に許した訳じゃないからね!」
そう言うとジャックから珍しい薔薇の花束を受け取り幸せな笑顔で薔薇の花の匂いを胸いっぱいに吸い込みました。
それは優しい薔薇の香りと甘い恋の香りのする花束なのでした…
果たして…
カトリーヌの初恋は実ったのでしょうか?
それともカトリーヌとジャックの恋は終わりを迎えてしまったのでしょうか?
もう…今となっては、遠い遠い昔のお話しなのでした。