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初心者エール ジョブ獲得編

-剣の街 ベリストス-

 正門前9時…

「おはよう、エールさん。昨日はよく眠れたかな?」

 約束した9時より少し前に正門前に待機していると、時間ぴったりにミックと、見たことのない2人が俺のそばに現れた。

「あ、おはようございます。」

「あなたがエールさんね。初めまして、アリスよ。主にヒーラーをやってるわ。」

「おはよう。俺はオーカス。俺は主に戦士をやっている。戦士について分からないことがあったら、なんでもきいてくれ。」

 少し長めの髪を後ろに束ねた女性がアリス、大きな体形のいかにも戦士というような男性がオーカスさん。昨晩の会話のイメージとは少し違ったが、2人ともやさしそうな表情で、安心した。

「さて、それじゃあ、戦士のジョブ獲得に行こうか。まずはパーティを組んで…。」

 ミックがグローブを操作すると、パーティの参加要求が目の前に表示された。参加をタッチすると、ミック、アリス、オーカスの3人の頭の上に名前と1本のバーが表示された。

「パーティ組むのは初めてだったよね。パーティを組むと、名前と体力ゲージがプレイヤーの上に表示されるからね。知っているとは思うけど、このゲーム、一度死ぬと2度とゲームに復帰できないようだから、死なないように十分注意してね。」

 そんな話は初耳だ…。そんな大事なこと、きっちりスィに説明させてもらわないと困る。

「その驚いた顔は、知らなかったと見えるな。まぁ、生身の体でゲームをしているといっても、ゲーム内で死んだプレイヤーも他のキャラ同様、消滅エフェクトが出るだけだから、実際にはリアルに転移されるだけだろうがね。まぁ、今日はミックも俺もいるから、安心してくれ。」

「ま、危なくなったら私が回復してあげるから大丈夫よ。さぁ、行きましょう。」

「よし。じゃあ、まずはクエストを受けに行こう。俺が先導するから、ついてきて。」

 ミックの案内で、街の中を移動しながら、アリスとオーカスに街の施設について、簡単な説明を受けた。今まで、ただ強くなろうとして3日間毎日家と街の外の往復だけしていたので、様々な施設があることに驚いた。宿屋兼酒場の「陽だまりの子羊亭」は、毎日の食事に使っていたから知っていたが、他にも普通のRPGによくある装備品の店や食材の店だけでなく、何に使うかよくわからない材料の店、釣り道具の店、キャンプ用品の店など、リアルに戻れなくても不自由しないくらいの店があった。

「ほかにも、プレイヤーが開いている店もたくさんあるのよ。職人と言われている人たちが作った武器とか防具とか…ほかにも、まぁいろいろ…」

「中には、ギャンブルの店や…まぁ、夜の店を経営しているようなプレイヤーもいてるよ。」

 と、いうことはアンビリオンの中は、リアル同様の経済が動いているということか…。

「さ、目的地に着いたよ。武器屋マドリアルだ。ここの店主に話しかけてきて。」

 古いたたずまいの武器屋には、看板にかすれかかった字でマドリアルと書かれていた。

 ドアを開けると、それほど広くない店に、ひげ面の店主が1人、退屈そうにカウンターに座っていた。

「いらっしゃい。ここには初めてだね。みたところ初心者っぽいけど、この剣なんてどうだい?」

「え、あ…いや…」

「今使ってるのは、最初から家にあったやつだろ?ダメダメ、あんなの。なまくらもいいとこだよ。これにしときなって。」

 店主の強引な押しに負け、剣を1本購入することになってしまった。

「ところで、今、新しい武器を作ろうと思ってるんだけど、ちょっと材料が切れててねぇ。どうだい?いっちょ取ってきてくれないかい?武器の材料になるなら、なんでもいいからさ。取ってきてくれたら、

お礼に戦士になるための本を譲るよ。この本はすごいよ。読むだけで戦士になれるんだ。どうだい?」

「はぁ、材料はなんでもいいんですよね?わかりました。取ってきます。」

「悪いね。じゃあ、よろしくね。」

 店を出て、依頼を受けたことを報告すると、

「OK。じゃあ、さっそく材料を取りに行こう。しかし…まんまと武器を買わされたね。初心者さんのほとんどがあの店主の押しに負けて武器をかっちゃうんだよなー。なぁ、オーカス。」

「あぁ…断ろうとしても、プレイヤーかと思うくらいきっちりした返答で結局俺も買わされちまったよ。このゲームのNPCはどんなプログラムで動いてるんだか…」

「まぁ、出発しようか。じゃあ、コーラル平原に材料を取りに行こう。」


-コーラル平原-

 街を出てから、しばらく南下し、大きな崖の前に到着した。

「よし、ここで、土を掘って鉱石を手に入れるんだけど、掘ると戦闘になるから、注意してね。」

 言われたとおりに、周りに注意を払いながら崖を掘ろうとすると、背後から獣のうめき声が聞こえてきた。後ろを振り返ると、オオカミが2匹、こちらに向かっていた。

「それほど強くはないけど、鹿と違って向こうからも攻撃を仕掛けてくるから、注意して。危なかったら助けるから、まずは一人で戦ってみよう。」

 ミック達は、少し離れたところでこちらを見守っている。一応武器は取り出しているが、今まで一人で狩りをしてきた自身もあったので、その提案に賛成した。

 一匹目のオオカミの攻撃をかわし、その隙に剣を入れる…。命中。

「お、やるねぇ。こりゃ出番はないかな。」

 一匹目をきれいに倒せて、油断してると、二匹目のオオカミのツメが足に食い込んだ。

「いっっ。」

 これまで、鹿の角がかする程度のダメージしか受けなかったため、まともにダメージを受けたのはこれが初めてだった。想像以上の痛みに、次の攻撃を忘れ悶えていると、オオカミがのど元をめがけて飛び込んできた。

 と、その時、オオカミの体が、大きな斧で真っ二つになり、消滅した。もし、ソロで来ていたら…考えるだけで、背中から嫌な汗が噴き出してきた。

「ヒール」

 アリスのヒールを受けると、足の傷がみるみる治り、痛みもすぐに引いていった。

「複数の敵と戦うときは、残りの敵もちゃんと見ないとな。それに、これまで武器の訓練はきっちりしていたみたいだけど、防御の訓練をあまりしていなかったみたいだから、それも今後やっていかないとな。」

 オーカスから、戦い方の基本を教わりながら、鉱石を掘り、街へと戻った。


-剣の街 ベリストス 武器屋マドリアル-

「いやぁ、ありがとう。じゃあ、これが約束の戦士の本だ。しっかり読みなさい。」

 店をでて、本を見せると、

「おめでとう。その本をきっちり最後まで読めば、戦士にジョブチェンジすることができるよ。ジョブチェンジは、自宅でグローブを操作するとできるようになるから、これからやってみるといいよ。」

「はい、今日はありがとうございました。」

「いえいえ、これからもいろいろ行きましょうね。」

「はい。」

「それでは、お疲れさまでした。」

 自宅に戻り、戦士になるための本を読むが…数百ページある本を読み終わるのに、1日費やすこととなった…。

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