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005 超かわいい

 目覚まし時計がジリリリとなったので、私は布団の中から片手を伸ばす。すか、すかと何度か私の手が空を切ったので、私は布団の中から顔を出して、ようやく目覚まし時計を止めることに成功した。


 ふあー。


 おはようございます。私は今日も仕事をがんばるのです。


 顔を洗ってハンガーに掛けておいた制服に着替える。食事を取る必要はないのだけど、雰囲気を大事にしたい私は緑茶を入れてずずーっとお茶をすする。


 うん、熱いお茶を飲むと目が覚めるね! お茶は熱いのにかぎるよ。


 これで私は朝からがんばれるよ! 一日中座ってばかりなので、私は朝一番には運動をすることにしたの。私を生み出したお方が、これは国民的な運動なんだって教えてくれたの。レディオタイソウというそうよ。


 私は音楽をかけて、その音楽とかけ声にあわせて、身体を動かすの。この運動をすると身体の色々な所を動かせるのよね。よく考えられているわ。



 ◆



 ゴーレムは、相変わらず海藻に触ろうとしない。もう、とっとと触っちゃえばいいのにね。なんで触らないのかしら。ほんとうに変なところで意地っ張りなの。


 あっ、ゴーレムが何か大変な事に気がついたみたい。いったい何に気がついたのかしら。


 海かどうかを今更考え始めたわ。ここは海の中なんだけどね。しかも、海藻と呼ぶのが正しいのかどうかが心配で海かどうかを気にしているわ。うーん、やっぱりゴーレムの考えはよくわからないよ。


 そんなどうでもいいことよりも、目の前を泳ぎ回っている海藻を早く触っちゃいなさいよ。



 ◆



 海藻がどんどんゴーレムに近づいてくる。もう海藻の方からゴーレムに当たってくればいいのに。もどかしいわ。見ているしかできないのがこんなにもどかしいとは思っていなかったわ。


 目の前には黒いトゲトゲした丸い物体がある。なんなのかしら、あれは。


 ゴーレムの思考を見ると、ウニというものらしいわね。ゴーレムは思ったよりも物知りみたい。どこでその知識を手に入れたのかしら。


 うわ、ウニからトゲが発射されてきたの!


 突然だから、びくっとしちゃった。驚かさないで欲しいわ。それにしても、なんで攻撃してきたのかしら? シーサーペントみたいにキラキラ好きみたいでもないようだし。


 [効果:悟りしモノ:興奮→解消]


 私はウニが何で攻撃をしてきたのか考えながらも、メインモニターに表示された情報を的確に読み取り、定型文を読み出し[確定]ボタンを押すの。この表示の入力は、もう手慣れたものなのよ。


 [確定]ボタンのカバーは、ボンドでちゃんとくっついたの。さすが、「くっつくんですエターナル」ね。脅威の接着力だったよ。


 あっ、またトゲを発射してきた。なんで、ウニはゴーレムに向かってトゲを撃ち出すのかしら。


 私が首を傾げているとゴーレムが先に答えを見つけたみたい。どうやら、ウニは海藻を狙っているようね。……ゴーレムに先に答えを見つけられるとちょっと悔しいわね。


 [攻撃:ゴーレム→魔物:小ー中:死] 


 ゴーレムがウニを殴ったら、一撃でウニが死んじゃった。やっぱり、強いよ。私はメインモニターに表示された情報をタタタタとキーボードで入力して、[確定]ボタンを押した。


 {ログ:ゴーレムはウニに120のダメージを与えた}

 {ログ:ウニは息絶えた}

 

 あっ、魔物図鑑で名前を調べるのを忘れてたわ。うっかりしちゃった。でも、ウニでいいわよね。ゴーレムもウニっていってたもん。


 私が一生懸命理由をひねり出していると、とうとう海藻がゴーレムの目の前に来たわ。ゴクリとのどを鳴らして、私はゴーレムの視界を表示しているモニターを見つめるの。


 いったい何が起こるのかしら!


 私はどきどきだよ!


 バッと海藻が飛び散って、モニターが暗くなっちゃった! なんだこれ! いいところでこれはひどいんじゃないのかな!?



 ◆



 がんばれ、ゴーレム! 視界を確保するのよ!


 よし、モニターに周りの光景が表示されてきたわ。


 わあああああ、人魚だ! ちっちゃくてかわいい女の子の人魚だよ! きゃああああああ、かっわいい!!!


 ふわぁ、ピンク色の髪の美少女人魚さんだよ!


 あっ、ゴーレムがカメラで写真を撮りたいみたい。私もその気持ちはよくわかるよ。本当にかわいいもんなぁ。


 !!? そうよ、こんな時は撮影機能を使えばいいはずなの!


 私は慌ててマニュアルをパラパラとめくり、撮影機能のところを探す。えーと、あのボタンを押せば、写真が撮れて、あっちのボタンを押したままにしておけば録画できるのね。


 注意事項は、悪用しないように、と。もちろんよ! 私は悪用なんてしないんだから、安心してほしいわ。


 私は、エイと撮影ボタンを押したの。念のため、何度も撮影ボタンを押したら、5、6枚の写真が撮れちゃった。えへへ、あとでプリントアウトして、部屋に飾っちゃお。


 [撮影] 


 あっと、メインモニターに情報が表示されたわ。ゴーレムが撮影の意思を持っていた場合は、写真を撮った際に、撮影という情報が表示されるのね。


 うーん、私が好き勝手撮れるわけじゃないのか。ちょっと残念。


 撮影って単語1つだけが表示されると文章にしにくいなぁ。でも、ここが私の腕の見せ所ね! がんばるの!


{ログ:ゴーレムは心のシャッターを押した。小さな人魚を記録した}


 うん、なかなか良いんじゃないかしら。心のシャッターなんて、とっても素敵な名前をつけちゃったわ。でも、私が一番注目して欲しいのは、最後のところなの。


 じゃじゃーん! なんと私は写真にファイル名をつけちゃったのです!


 えへへ、これで後から探しやすくなるよ。私は納得の文章に、自然と顔がほころんでしまうの。[確定]ボタンを押すと、ゴーレムも写真が撮れてすごく喜んでくれているみたい。


 そんなに喜んでくれると私もうれしいよ!


 だからといって、そんなに興奮しないで欲しいな。しかもステータスまで表示しようとするなんて、ちょっと待って欲しいの。


 私はせっせと仕事をこなす。私はどんな時もがんばるの!



 ふー。なかなか大変だったわ。撮影した写真ってゴーレムにはどうやって表示するんだろ。ちょっとわからないな。私はいつでもモニターに表示できるし、プリントアウトもできるから、ゴーレムにはちょっと我慢してもらおう。


 うん、ゴーレムには目の前にある今を大切にしてもらいたいからね! 決して私が面倒くさいからじゃないの。



 ◆



 あっ、人魚ちゃんがしゃべり出した。かみかみだ。


 はぁー、超かわいい。一生懸命な人魚ちゃん超かわいい。


 あああ、そんな顔をしないで人魚ちゃん! 頭を上げてちょうだい! あなたのようなかわいい子が土下座なんてしちゃだめなのよ! ゴーレム、はやく、はやく顔を上げさせてあげて!


 私はばんばんとキーボードを叩きながら、画面を食い入るように見つめる。すると私の思いが伝わったのか、ゴーレムが人魚ちゃんの顔を上げさせて、お願いをきいてあげるみたい。


 ぐす。よかったわね、人魚ちゃん。


 ゴーレム、私はゴーレムを見直したよ!

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