二つの同業者の違いと妹の全力疾走の理由について
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彼らにとって妹は殺戮を生業とする狂気的な人間らしい。
それから青い髪の人間らしすぎるなにものかに聞いた話によれば、彼か彼女かよくわからないそいつがゲーム屋にいたのは、人前に姿を表し続けるためらしい。そいつは自分の姿が人間そっくりであり、普通にしていれば、食事さえ行わなければ人間と見分けがつかないことを自覚しており、だからこうして殺されないように人前に常に姿を晒し続けている。例えばゲーム屋だったらこうして店員や監視カメラの目の届く場所に常に身をおいている。とのことだった。
などといった衝撃的な相手と接したので、そのインパクトのあまり僕はゲームを買わないままゲーム屋を出てしまった。まだ出てから数歩も歩いていないのだから入りなおせばいいんだが、なんとなく気が進まない。なんとなく気が進まないことくらい我慢すれば済むことなんだが、一旦こうなってしまうとどうにもやる気が起きない。ゲームを買うことは強制されているわけではないし、この町にはゲーム屋が二軒あるんだからそのうちの一軒で必ずゲームを買わなければならない、ということもない。ポイントカードを作っているとか、そういうわけでもないんだし。
ちなみにこの四階建てのゲーム屋にはポイントカードがあり、もう一方の子供が試遊台に列をつくるゲーム屋にはポイントカードはない。そう頻繁にゲームを買う習慣がない僕にはゲーム屋のポイントカードを作るメリットは少ないので、ここはもう一軒の方のゲーム屋に向かってみることにしよう。どうせ時間も余っているし、エロ関係のコーナーもないので四階建てのゲーム屋よりも健全な空気が流れていることだろう。
いや、そんな健全な店に貢献してしまったら人生にとって十指に入るほど重要なエロを供給してくれる店を裏切ることになるのではないか? こんなことを続けていたらいつかエロから復讐されるのではないだろうか?
なんだそりゃ。エロからの復讐とはなんだ。セックスストライキか。そもそもセックスする相手もいないのにそんなことが起こりえるのか。起こりえるわけあるか。
一回のゲームの売買でエロからの復讐なんて起こりえない、そう判断した僕はもう一軒のゲーム屋に来た。この店では休日には店頭にゲームの試遊台が出され、そこに子どもたちが列を作っている。でも今日は平日なのでそんなことはない。単なる狭苦しいゲーム屋である。
印象に残ることが一つも起こらないまま、僕は一本の中古RPGと軽くて二つ折りのゲームハードを勝って店を出た。そして店を出てから買ったゲームについて検索してみると、そのゲームはシリーズの中でも指折りのクソゲーであるらしかった。僕はがっかりした。こんなことがすぐに調べられてしまうこの世の中のことについてもがっかりした。
それから家に帰る途中の話になる。僕の後ろから足音が聞こえてきた。そこは人通りの多い道ではなかったので、足音が目立つ。後ろを歩いている誰かも、足音を隠すつもりはないらしかった。そもそも僕についてきているというわけでもないかもしれない。
しかし足音のペースに確信的なものを感じた。僕が足を下ろすのにあわせて足音を立てている、そんな感じで聞こえてくるのだ。僕にもストーカーが着いたのだろうか? だとしたら愛されているということになる。喜んでいいんじゃないだろうか。
逆に、僕が誰かの恨みを買っており、僕に何らかの危害を与えるためについてきている、という可能性もある。人はどこで誰の恨みを買うのかわからないものだ。だとしたら人気の全く無いところは絶対に避けなければならない。気を抜いちゃいけないんじゃないだろうか。
しかしそれより手っ取り早い方法を僕は選ぶことにした。振り向いて姿を確認したのだ。
「ん? どうかしたかい?」
さっきの青い髪の人間以外のなにものかだった。
「いや、後ろ」
そしてさらにその後ろ、まるで追跡するように妹が歩いてきていた。その傍らでは妹が買っている猫が歩いている。
「あ」
青髪のなにものかはその姿を確認するなり即座にかけ出した。僕を追い抜いていく。
「あ!」
妹も駈け出した。僕を追い抜いていく。どうやって人間じゃないことに気づいたんだろうなあ。




