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となりの妹さん  作者: 天城春香
30/69

ゲーム専門店の希少性と喋る人間似の人外について

10.

 僕が住んでいる町にはゲーム専門店が二軒もある。これは大変珍しいことだ。


 今どきゲームしか置いていない店なんて珍しい。そのくらいゲームが売れなくなっている。というかダウンロード販売が大きなウェイトを占めるようになったり、わざわざゲーム専門店で買うようなゲームは結構高いため客足が遠のいていたり、何よりゲームも販売するレンタルショップやゲームも置いてある古本屋なんかが増えているので、近所にゲーム屋でもない限り、そして財布に余裕が無い限り、ゲーム屋を目的地とすることはあまりない。最近は試遊台を置いてある店もあまりないのでなおさら客足は遠のいているのだと思う。


 そんな中で、僕が住んでいる町にはゲーム専門店が二軒もある。しかもそのうち一軒には今どき珍しい試遊台が置いてあり、週末なんかは子供が試遊台に列を作っていたりもする。きっと店主が子供好きなんだろう。もう一軒のゲーム屋は四階建てで階層ごとに取り扱っているハードが違っており、最上階の四階は十八歳未満立入禁止でアダルトゲームやアダルトソフトを取り扱っている。恐らく四階の売上が結構なウェイトを占めていると思う。


 でもその割にはこの店の四階、いつ来ても僕以外の客を見かけない。フロア内に数か所あるサンプル用モニターから喘ぎ声が何重かに重なって流れているだけである。大変興奮するが、こういうのを買いまくっていたらいくらお金があっても足りないので僕は下のフロアへ向かうことにした。


 携帯ゲームを取り扱っているのは一階である。やっぱりバスの待ち時間にやるために買うのだから、なるべく軽いハードがいい。そして気を抜けないところでバスが来た時なんかに大変なので、なるべくアクション製の薄いものの方がいい。となると、二画面のやつとタッチペンを多用しないRPGを買うべきか。僕はまず中古ソフトの棚の吟味を始めた。発売してから数ヶ月経ったソフトであれば、中古で安く買えることがある。ちなみにハードは新品で買うつもりだ。中古だと耐用年数がそれだけすり減っていることになる。バッテリーの減りが早くなっていたりするかもしれない。


 戦闘部分だけがアクションだったりするRPGもあるので、慎重に選んでいく。例えそうでないとしても、ネットで評判を参考にするのも重要である。しかしあと数日は大学が休みなんだからネット通販で買えばいいのに、僕はどうしてわざわざゲーム屋まで足を運んでいるんだ?


 僕はやっぱり、黒猫が穴から出てきてわけのわからない者たちの通り道となったあの部屋に、なるべく居たくないと思っているのだろうか。あいつらはなんの危害も加えないしこっちの生活に口を挟んでくることも基本的にはないのだから、気にしなければいいのに。しかし気にしなくていいからといって、自宅を勝手に通用口にされて心地いいわけがない。違和感が少しもないわけがない。もっと居心地の良い関係を、あの黒猫や押し入れの穴から出てくる連中と築く方法はないものか。


「あ、やっぱり君、穴のとこの人?」

 声をかけられた。四階だったらすぐさま逃げ出していただろうが、ここは健全な一階なので僕は落ち着いて声のした方に反応を見せる。

 そこには髪の毛が青すぎる人が立っていた。しかも髪で片目を隠している。これでコスプレじゃないと言われたほうが驚く。でもなんのコスプレかはわからない。

「君は知らないだろうけどね、僕も君の家の穴を通ったものの一人なんだよ」

「見覚えがないけど」

「君、寝てたからね。大丈夫、君のことは食べない。僕らは結構律儀なんだぜ」


 僕とか言っているが、一見したところ性別がわからない。顔は中性的だし声も男の役をやってる女性声優みたいでどっちとも判断しづらいし、そもそもあの穴を通ってくるものに性別なんて存在するのか。

「ということは、僕以外の誰かは食べるのか」

「そりゃ、食べなきゃ死ぬからね。僕らは人間と一緒なんだよ、仲良くしようぜ」

 ちっとも仲良くでいる気がしない。ノリが軽いからだろうか。僕よりモテそうだからだろうか。


「一緒かなあ。人間は人間を食べたりしないけど」

 目の前の青い髪の何ものかは、どう見ても人間にしか見えない。まあそんな形状の使徒だっているし、人間っぽい異形だっているだろう。

「当たり前だよ、僕らだって仲間は食べないし、牛や豚や、特に鳥なんて食べる気も起きないよ。僕らが食べられるのは人間だけなんだ」

「同じ動物で、肉を持っているのに」

「人間以外の動物なんて、食えたもんじゃないだろう? 君たちが人間なんて食えたもんじゃないと思っているのと同じさ」

「人間は味が嫌いで人間を食べないわけじゃないんだけど」

「そうなの? じゃあますます僕らは仲間だ。共食いしない仲間」

 よろしくね、と青い髪のなにものかは手を伸ばしてきた。僕は一応、握手した。


「この店には店員がいたりするけど、食べたりしないの?」

「ちょっと事情があってね。大っぴらに人間を食べると、僕たちは殺されてしまうんだ」

 そりゃ人間だったら殺されるかもしれないが。いや、人間じゃないからこそ人間を食べた際に人間に狩られるんだろうか。でも目の前のなにものかはたまたま人間っぽい形状をしている。人間を食べたこいつを殺そうとする誰かは、相手が見た目人間ということもあって、一瞬でも躊躇はするだろう。その隙に自分を殺そうとした人間を食べてしまえば……それじゃあ永久に犬地を狙われ続けるのか。疲れた瞬間を狙われて殺されるだろう。

「虐殺者、というか。僕達を専門に殺す存在が、人間の中にはいるらしいんだ」

 虐殺を職業にしている人間なんて聞いたことがない。きっと向こうからしてみれば、狩りをしているとかそういった認識なんだろう。

「君より頭一つ分くらい背の低い女の子……君の隣の部屋に住んでいる人間なんだけどさ、あいつに見つからないかハラハラしているんだよ」

 あ、妹のことか。

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