6,生後7ヶ月目
生後7ヶ月が過ぎた。
体の成長は順調で這い這いも出来るようになり、掴まり立ちも可能になった。
ヒアリングに関しては相当な早口か、固有名詞でもなければ十分に聞き取れるレベルになった。
意味もきちんと理解している。
内容の整合性も大体あっているし。
話すことに関しては1歳になるまで禁止と自分に課しているので特に変化はない。
基本的に朝から夕方まで乳母のエナさんが付きっ切りだし、夕方からは兄のテオと姉のエリーのどちらかが夜寝るまで付いているので、喋る練習なんて出来るわけがない。
寝る時もベビーベッドの横にエナさん用のベッドが置いてあるので、寝てるときに練習というのもできない。
這い這いが出来るようになり、行動範囲も広がったことにより目が見えないことで、危険なことが増えるために誰かが必ず付いているという状態だ。
まぁ這い這いが出来る前から、エナさんか兄と姉か母が必ず付いてたけど。
食事も母乳から離乳食へと切り替わりの時期なのか、薄いスープや果実水のようなものから始まり、柔らかい果物をすり潰したモノや何かよくわからないモノをすり潰したモノを食べたりしていた。
最近では少しずつ固形物のようなモノも増えてきている。
当然小さくみじん切りにはされている。
ただ完全に母乳から切り替わったわけではなく、離乳食のあとに少し母乳を吸うみたいな感じになっている。
なんで離乳食に完全に切り替わらないのかはわからない。
慣れさせているのだろうか?
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魔力(仮)の訓練に関しては以前と変わらずの訓練メニューとなっている。
伸縮させたり、太くしたり細くしたり、濃度を変えたり、柔軟性を変えたり。
体の外に魔力(仮)を出す、放出一歩手前訓練もこなす回数を格段に増やしている。
この3ヶ月の間で体力的にも相当伸びたようだ。
放出一歩手前訓練を何度もやっても、意識が飛んだことはあまりない。
ただ、やりすぎるとやっぱり意識が飛ぶ。
放出一歩手前訓練は体力の消費量が、他の訓練とは段違いなので見極めが難しいのだ。
はっきり意識があって疲労をあんまり感じていなくても意識が飛ぶのだから、前段階がわからなさすぎる。
そこは回数を覚えておくという対処法でなんとかするしかない。
ある程度放出一歩手前訓練をやったらあとは、通常訓練メニューをこなすといった感じにしたら安定している。
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ちなみに魔力(仮)の切り離しに関しては……まったく進んでいない。
まったく進んでいないのに、放出一歩手前訓練なんて名前を付けているのは主に自分の精神衛生上の理由だ。
実際は一歩手前の訓練なのかすら怪しい。
それでもそう名づけておかないと心が折れそうだからだ。
放出の訓練を始めてから早7ヶ月。
まったく進んでいない状況に、自分の精神が疲弊しているのはわかっている。
それでもあの感動を再現したいという気持ちは未だ変わっていない。
だがそれとこれとは別問題で、心が折れるのを防止しておくのは必須だろうと名づけた。
逃避だとはわかっているけど、やらずには居れなかった。
あぁ……どうやって体から魔力(仮)って切り離すんだろう……。
そんな遠くを見るような目をしているだろう自分にエナさんは本を読んでくれている。
内容は王子様が攫われたお姫様を助けにいくという、王道中の王道物語で今はラスボスの悪いドラゴンと王子様が戦う前の口上の述べているシーンだ。
王子様曰く「姫を返せ!そうすれば命だけは助けてやる!」
悪いドラゴン曰く「それが姫の本当の願いだとでも思っているのか!姫は城に閉じ込められているだけの生活にはうんざりしている!貴様は姫をまたあの牢獄に戻すというのか!」
なんだろう……悪いドラゴンなのにこのなんていうか勇者のような……。
悪いドラゴンが嘘八百で王子様を惑わそうとしてるとも考えられるが……なんか違う気がする。
王子様曰く「姫は城になくてはならないお方!例えそれが牢獄と例えられようとも私はその任務を果たすまで!」
あれ……王子様牢獄だって認めちゃったよ。
なにこれほんとに幼児用?
悪いドラゴン「やはり貴様もあの卑劣な王と同じか! その罪、死を以って償うといい!」
やっと戦闘が始まるらしい、しかし卑劣な王って……城が牢獄で卑劣な王……。
姫にとって城が牢獄だって王子様認めちゃったし、それを考えると卑劣な王ってそのまんまの意味で取ってもいいってことじゃないか?
つまりこれ……悪いドラゴンってお姫様を助けたってことじゃね?
何これどっちが正義の話なの?
「かくして王子様は悪いドラゴンを倒し、お姫様を助け幸せに暮らしましたとさ」
あるえー!?なんかいきなり展開はしょってハッピーエンドになっちゃったよ!?
戦闘前の口上の意味あんのこれ!?
エナさんも特に疑問もないようで違う本を手に取ってるし、こういう幼児向けの本に真面目な解釈とか向けちゃダメってことかな……?
うーん……しかし納得いかん。
もうちっと最後を工夫するべきじゃないのかね。
どっちかっていうと悪いドラゴン側からみた卑劣な王の内部事情とか知りたい感じだわぁ。
もちっとはしょらんでしっかり書いてほしいわぁ……。
はしょる……。
はしょる……?
なんか喉まで出掛かってる感じのするアレだな。
なんだろう。
こういうときは気になるモノを分解分析考察するのが一番いい。
前世で30年生きて培った思考分析法だ。
まず分解だな。
はしょる、うん、分解不可能じゃね?
じゃぁ分析だ。
はしょるってのは、ある部分を省いて短く縮めることだ。
つまり省略することだな。
ここから考察だ。
省略すること。
何を省略するんだ?
省略省略……。
魔力(仮)を放出するための工程は
1、体の内ぎりぎりまで魔力(仮)を伸ばす。
2、体の外に魔力(仮)を伸ばす。
3、魔力(仮)を切り離す。
今のところ2までは余裕。
3がまったく不明。
省略するとすると……2を省略するのか?
魔力(仮)を外に伸ばさないで切り離すのか?
そういえば体の外に出した魔力(仮)を、切り離すために色々やったりはしたけど、体の内にある状態で切り離すってのはやったことがなかった。
思い立ったが吉日!やってみるしかないでしょう!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆
まず体の内で魔力(仮)を切り離す。
外では切り離すのに色々やってもダメだったけど、内では反応が違うかもしれない。
外でダメだったんだから、内でも当然ダメだろうという先入観があった。
先入観が盲点を生んでたようだな、うんうん。
まずは一部分を細く細く……細く……ほsえ!?
切れてる……。
なんていうか繋がっていないのがわかる。
こ、こんな簡単に……?
と、とにかくこれをそのまま体の外に出してみよう。
制御は受け付けている。
伸縮も太くも細くもできるし、濃度の変更、柔軟性の変更もできる。
切り離す前と今でもあんまり変わらない感じで制御できている。
これなら外に出せるはずだ。
慎重に……慎重に……人差し指の先に少しずつ移動していく。
そしていつものように先端から少し外に出るのと同時に、ずいぶん軽くなった疲労度がきた。
そして……完全に切り離した魔力(仮)を外に出すことに成功する。
「おおおおぉぉぉぉぉおおお」
思わず声に出してしまっていた。
普段はほとんどまったく喋らないため、エナさんがびくっとしたのがわかる。
エナさんの膝の上で抱えられるように、本を読んでもらっていたのだから。
「り、リリーどうしたの?無口なあなたがそんな声出すなんて……そんなにこの本が気に入ったの? " 世界の植木鉢全集 " 」
ちなみにリリーは愛称だ。
卑劣な王様と悪いドラゴン
物語は幼児向けとして販売されていて、それなりに売れている作品
部分的に哲学も含むとして大人にもちょっと人気
あなたの正義はどっちだ
2/12 微修正&訂正
3/9 句点、文頭スペース、三点リーダ修正
3/10 禁則処理修正
7/5 誤字修正
5/3 誤字修正




