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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第1章 1年目 0歳
2/250

2,生後2週間目





 2週間がたった。




 どうやら自分は赤ん坊になっているのは確定のようだ。



 転生という言葉が思い浮かぶ。

 最後の記憶で読んでいたライトノベルでは主人公は事故に遭い、異世界へ転生する。


 そのまんますぎてちょっと笑えない。


 でも転生したとしてもここが異世界だという確証が持てない。


 言葉が理解できないのは外国という可能性。

 何より目が見えないので周囲が観察できない。

 しかし人は歪な白い靄で確認できるし、最近は天井の照明?以外にも白い線や形で見える物が、他にもあることを発見している。



 暖房のようなモノが、壁だと思われる部分から白い薄い霧のように見えるモノを出すと、部屋の温度があがる。


 天井の照明以外にも小さいランタン?のようなものがあるみたいだ。

 疑問系なのは白い小さい円柱形のものを夜?に部屋に来る人方が必ずもっているから、ランタンだとめぼしをつけたからだ。



 確証は持てない。



 昼や夜だという感覚もかなり曖昧で、目から得ている情報がかなり大事だという事実を思い知らされる。



 そして一番の収穫は自分の体も、白く見ることができるようになったことだった。



 最初は見ることができなかった。

 何日かずっと部屋にいて、相手をしてくれる人方や部屋に来る人方を観察していたら、少しずつだが輪郭とまではいかないものの、大雑把に判別できる程度にまで視力?があがったのだ。


 それによりこの目は成長するということがわかった。



 自分の手を見ると細く、小さく白い線が見える。

 首がほとんど動かないので、他の部分を見ることができないが見える部分だけでも、はっきり見ることができないかと試行錯誤してみた。



 いくつかの発見があった。


 細い線は集中すると徐々に太くすることができた。

 太くしても線自体の白さは薄く、なんとも頼りなかったので今度は濃度を濃くして真っ白にしようと集中してみる。


 太くするときの数十倍の遅さでゆっくりと、徐々に徐々に濃度があがっていく。

 限りなく透明に近かった白さが、少し白くなったとき



  " 意識が飛んだ "





 どうやら濃度をあげるのと太くするとでは、体力の消費量が格段に違うようだ。



 初めてだったし、どこまでやったら意識が飛ぶかもわからなかったので、とにかく限界を見極めるという今思えば危険な作業から始めてしまった。


 限界ぎりぎりまで集中してから、眠って回復させては限界ぎりぎりまで集中する。

 何度も同じことを繰り返していると、最初の頃に意識が飛んだ集中を何度も行っても意識が飛ぶ程の体力を消費していないことに気づいた。



 どうやらこれも成長するようだ。



 まぁまだ単に赤ん坊の体が成長して、体力が増えたからというのも捨てがたい。

 他にも集中するのに慣れて体力の消費が減ったとか?



 この辺は要検証だが、数値化できるわけでもないので気長にやることにする。



 自分の体や他の人の体からも見ることができるこの白い何かに、名称が必要なんじゃないかと思い始める。


 現状では他人と会話することは不可能。

 書物なんかも赤ん坊の体では読むことも不可能。


 というか文字自体読めるかわからないし。


 それ以前に目が見えないのは読書をするには致命的すぎるので、情報がまったく集まらないので。




 とりあえず脳内自分劇場、もとい脳内自分会議を開く。




 自分A「自分や他の人の体のもやは見えるんだから、生命力が妥当ではないだろうか!」

 自分B「照明や暖房やランタンにも、同じように白く見えているあれはなんだよ!」

 自分C「照明や暖房と思っている物だって証拠があるわけではないし、本当に照明なのか?暖房なのか?むしろ今って昼なの?夜なの?てか何時なの?おやつまだー?」

 自分D「名前なんて必要か?とりあえず力かっこ仮でいんじゃね?」

 自分E「せっかく面白そうな力なんだから名称はつけるべきだろう!こう……中二的なアレな感じで!」

 自分F「だからそのアレな感じの名前をいえっつってんだろ!」

 他多数「ぎゃーぎゃーわーわー」


 判事服を着た自分「静粛に!静粛に!判決を言い渡す!」


 自分D「あれ?いつの間に会議が裁判になってん?」


 判事服を着た自分「この力の名称は " 魔力(仮) " とする!尚、この世界が異世界であるという希望を多分に含むためこの名称を採用した!」



 脳内自分会議……もとい脳内自分裁判は恙無く終了した。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 数日濃度を変えたり太さを変えたりしては、眠って回復するというのを繰り返す。

 その結果視力も成長したようだ。

 大分大まかに把握できるようになった。


 もやもやに見えていた人方だったものが、人間として判別できるようになる。

 まだはっきりと個人として判別するまでにはならない。

 あくまでもやもやが人間型になった程度。



 今も一番接する時間の長い人がおっぱいを飲ませてくれている。

 生後2週間?なので当たり前だが食事は基本母乳だ。


 細部を判別するまでには至っていないので、あまり恥ずかしくない。

 これがはっきり見えていたら恥ずかしいのかもしれない。


 いやすでに30歳の精神年齢で授乳プレイをしているのだ、恥ずかしくないわけがないはずなのだが……。


 興奮もしないし……。


 そもそも授乳プレイに興味を抱いたことはあまりない……ほんとだぞ?


 なぜだろう、恥ずかしいというよりも安心する、暖かい何かを……食事で味わっている。




 まぁこの人が自分の……転生してからの自分の母親なのかは今のところ不明。

 母親じゃなかったら乳母だろうか。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 食事や下の世話やその他諸々の色々なことをしてくれる。

 抱っこして部屋を歩いたり、自分の膝の上に座らせて本を読んでくれたり、歌を歌ってくれたりもする。

 本は何を読んでいるのかまったく理解できないし、歌も歌詞は理解できない。

 歌に関してはゆっくりとした童謡のようなものだったり、子守唄のようなものだったり色々だった。

 聞いているととても安らぐ。

 間違いなくこの人の歌はお金が取れるレベルだと思う。



 一日のほとんどをこの人と過ごす。

 ベビーベッドに寝かされている間にも、色々と話しかけてくれたりおもちゃのようなもの、魔力(仮)がないのか、見ることができないが音が、がらんがらんとなったりするものなんかで構ってくれる。


 とはいってもずっとではない。


 ベビーベッドに寝かされると、部屋の中を片付けたり掃除したりしているようだ。


 掃除といっても掃き掃除なんかは当然やっていない。

 赤ん坊がいる部屋なんだから当たり前だが、地面をこすったりしていたりするから、雑巾掛けとかはしているようだ。


 首の稼動範囲が広がってきて、なんとか見ることが出来たときには何やら腕を振っていた。

 恐らく窓を拭いているのだろう。


 人は判別できても、窓や壁は判別できないので、どこに窓や壁があるのかわからないから確証を持てないが、状況から考えても窓拭きだろう。



 産後2週間で窓拭きを含めた子供部屋の掃除に赤ん坊の世話。

 結構重労働じゃないだろうか?

 夜泣きをしないからそこまで大変ではないのかもしれないが、なんとなくこの人は母親ではない気がする。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆








 毎日この部屋には2人の小さい人型、恐らく自分の兄弟だと思われる人が来る。


 声の高低だけではどうにも男女の区別ができない。

 大人ならば声だけで、男女の区別くらいは判断できるのだが。

 二人が来ると部屋の中がとても賑やかになる。


 不思議そうに、でも温かみと優しさの感じられる声で話しかけたり、恐る恐る触ったりしてくる。

 触ってくるときには、小さい自分の指で逆に触り返してやったりするととても喜んでくれる。

 兄弟(仮)とのスキンシップは日課で二人は結構な時間この部屋にいる。


 彼らの部屋も、もしかしたらこの部屋なのかもしれないが、寝室は別のようである程度時間が過ぎると出て行く。

 部屋を出る時には必ず二人が、頬か額にキスをして何かを言ってくる。


 相変わらず何を言ってるのかまったく理解できないが、おやすみとかいってるのかもしれない。

 毎回同じ言葉だからだ。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 いつもは兄弟(仮)と乳母(仮)と自分だけなのだが、2日に1回くらいの頻度で別の人もくる。

 この人は女性でとても温かく、自分を抱いているときは魔力(仮)がゆらゆらと体の外にゆっくりと放出されている。

 放出される魔力(仮)がなんとも温かく……触るとすごく安心する。


 そう、この魔力(仮)は触れられるのだ。



 初めて触った時にはとても驚いた。

 驚いたなんてもんじゃない、感動した。

 そう、感動したんだ。


 理由はわからない、でもこの放出された魔力(仮)に触れた瞬間に例えようのない、感動としかいえない何かが溢れたんだ。



 魔力(仮)を放出しているのはこの人だけで、その放出も自分を抱いているときだけだ。

 放出を始めるときとその放出がとまるときに一緒にいる乳母(仮)や兄弟(仮)に、何の反応も見られないことからこの現象は当たり前のことなのか……認識できていないのか。



 この女性は恐らく母親だろうと思う。

 自分を抱いている時の暖かさと優しさが兄弟(仮)ととても似ている。

 いや、はっきり言えば兄弟(仮)以上だ。



 乳母(仮)や兄弟(仮)を見る限りでは、魔力(仮)の放出はまったくない。

 他に母親(仮)以外にも、7日に1度か2度の頻度で来る男性も魔力(仮)を放出したことはまだない。


 といってもこの男性に関しては、まだ3回しかあったことがないから情報も大分不足している。

 恐らくは父親なのだと思う。

 抱く時の温かさとか優しさとかそういうのが、母親(仮)に酷似しているし、兄弟(仮)にもそれに通じるところがある。


 父親(仮)がいるときはほぼずっと抱っこされている。

 といっても長時間いたことはまずない。

 いても1時間とかその辺だ。

 結構忙しい人なのだろう、大変だな父親(仮)。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 今のところ周りの人間はこの5人だけ。

 まだ生後2週間だし、当然といえば当然かもしれない。

 ちなみに乳母(仮)は寝るときもこの部屋にいる。

 夜泣き対策や赤ん坊を一人にするわけにもいかないのだから、当然といえば当然だな。


 まぁ夜泣きは一度もないんだがな。

 というかこの2週間泣いたことは一度もない。

 さすがに一度も泣かない赤ん坊というのもどうだろうとは思うんだが、泣くのはなんか恥ずかしい。

 こればかりは譲れない。



 そんな感じで今日までの2週間を過ごした。

 大半を魔力(仮)の成長訓練に費やすことができたおかげか、自分の中の魔力(仮)の制御もかなりうまくなった。

 具体的には太くしたり細くしたり、濃度をあげたり下げたりをかなり自在にできるようになった。



 そろそろ次のステップに移ろうと思う。






 ずばり、魔力(仮)の放出だ。



2/12 微修正&訂正

3/9 句点、文頭スペース、三点リーダ修正

3/10 禁則処理修正

1/9 誤字修正

5/3 誤字修正

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