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濁った瞳のリリアンヌ  作者: 天界
第一部 第9章 4年目 中編 3歳
182/250

160,智の再現


 クリストフ家のブームがダンスであるのに対して、妖精ズとレキ君のブームはリバーシである。

 今日も今日とてレキ君の悔しそうな鳴き声とサニー先生の高笑いが響き、そしてクティが2人を屈服させるという状況が続いている。

 レキ君はサニー先生に勝てず、サニー先生はクティに勝てず、たまにクティがレキ君に負ける。

 そんな3竦みのようなそうじゃないような変な状況だ。


 ちなみに自分の場合はほぼ圧勝である。

 生前の経験がいきまくっているよい例だろうか。

 だが舐めプレイは嫌いなのできちんと圧勝している。その辺は間違えないで欲しい。


 さてそんなリバーシであるが、もちろん遊びなのでずっとやっているわけではない。

 レキ君は意外と負けず嫌いなところを発揮して何度も勝負を挑もうとしているけれど、体を動かす遊びになるとすぐそっちにいく。

 まだまだ頭脳系遊戯よりも肉体系遊戯の方がお好きなようだ。


 そんなレキ君はエーテル結晶体から魔力を得ての肉体強化を完全に習得してしまったので2級以下の攻撃魔術程度なら楽勝で受けきってしまう。

 でも肉体強化はレキ君の特性なので魔術ではない。


 レキ君にも一応初級魔術について教えたり、魔術の行使に必要な諸々を教えたりはしている。

 でもまだ魔術は使えない。


 レキ君はどちらかというと知識を積み重ねていくタイプではなく、感覚派なのではないだろうか。

 肉体強化もそんな感じで習得していたし。



「というわけで作ってみました。じゃじゃーん。

 『魔術補助機能完全再現版』~」


【ぱちぱち~】


「わふわふ~(ぱちぱち~)」



 自分の拍手にレキ君も器用に前足をあわせて拍手を重ねている。

 サニー先生は屋敷の環境設定中でレキ君ルームの大分高いところで作業中だ。



「ではでは、この新機能の解説をするよ~」


【まってましたー】


「わふー(ましたー)」



 汎用共有スペース上に起動している『魔術補助機能完全再現版』にはすでに10級の1部の魔術のリストが表示されている。

 『魔術補助機能完全再現版』はその名前の通りに魔術を補助する機能があるが、以前クティが作ったそれは補助するだけのアシスト機能しかなく、魔術を実際に行使できる者にしか意味がなかった。

 当然ながらレキ君用に作ったものであるが、前提条件として魔術が行使できなければいけなかったのでレキ君には使えないものとなってしまったのだ。


 今回はその反省点を踏まえた改良がなされており、その為だけにエーテル結晶体を結構な魔力量で作成して新たな魔力供給源として使える様に専用の改良を施していたりする。

 ちなみにこのエーテル結晶体を『魔術補助機能完全再現版』以外で使うことはできず、魔力供給を前提とした魔術にも使うことはできない。



「さてこのリストの中から~」


「わふ!(灯りの魔術!)」


「じゃあリクエスト通りに灯りの魔術を選択して~」



 汎用共有スペースの『魔術補助機能完全再現版』には灯りの魔術の術式が表示され、1番下に実行と再選択の文字が見える。

 実行を押せば魔術が行使され、再選択でリストに戻るという非常に簡単な設計だ。

 この『魔術補助機能完全再現版』のすごいところは誰にでも(・・・・)魔術が簡単に行使できてしまう点だ。

 魔力も供給源として専用のエーテル結晶体を使っているので本人の魔力を必要としない。


 この世界――オーリオールでは魔術は希少技術であり、誰にでも使える魔道具はあっても魔術は誰でも使えるものではない。



「はい、行使!」


「わふぅ~(すごー)」


【おぉ~】



 クティパッドからポンっと灯りの魔術により生み出された光球が出現する。

 何度でも言うが、魔術は誰にでも使えるものではない。

 その魔術をクティパッドのみで再現するというのはまさに革新的な技術といっても過言ではない。

 問題点はクティパッドが魔力を見ることができるものにしか扱えない点だろうか。



「むふふ~。どうよ! どうなのよ! すごいでしょ!」


【すごい! クティはやっぱり天才だよ! 最高だよ!

 これでレキ君も魔術が使えるね!】


「わふ!(ボクも今日から魔術師だね!)」


【あ、でもレキ君。これは魔術のコツを掴む為に作ってもらったんだからコツを覚えたら自分だけで使えるようにちゃんと練習するんだよ?】


「わふぅ~?(これがあれば練習なんていらないよ?)」


「ちっちっち。甘いなぁ~レキは。そんなだからレキなんだよ!」


「わう!(ボクはボクだよ!)」


【こら、2人とも。仲良くしなさい!】



 腰に手を当ててちょっと大きめに魔力文字を書き出してあげれば2人ともすぐに手を取り合って仲良しさんだ。

 些か青ざめた魔力の流れが見えたのは気のせいだろう。







◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆







 『魔術補助機能完全再現版』は結局の所クティパッドを介してしか魔術を使えないし、現在は複雑な設定をすることができないため10級の一部の魔術しか行使することができない。


 10級の魔術程度ならば魔道具を使ったほうが早いし、使い勝手もいい。

 エーテル結晶体を供給源にしているので10級程度の消費量ならほぼ無限に使えるし、魔道具と違って封じている魔術しか使えないわけではないのが強みだろうか。

 だがクティのことだからすぐに設定可能な量も増えて使える魔術の幅が広がっていくだろう。

 最終的にはクティ製の魔術を行使可能とするのが目標ではあるが、クティ製の魔術の設定量は常軌を逸しているのでなかなか壮大な話でもある。



【さぁまずはやってみましょうか、レキ君。

 コツ云々は少しずつ覚えていきましょう。レキ君はどっちかっていうと理論よりも実践派ですからね】


「わふん!(そうだよ!)」


「魔術に必要な設定を『魔術補助機能完全再現版』が補助してくれるから確かにコツを掴み易いかもしれないけど、世界のアーカイブにアクセスすることなく処理してるから知識派には逆に難易度が高くなってるんだよね。

 レキみたいな感覚派には逆だろうけどさー」


【私には不向きな感じだね】


「わふぃ?(そうなの?)」


「リリーは完全に理論派だからね。しっかりと知識を得て、理解を深めるタイプ。

 レキはそういうんじゃないからねー」


「……わふぅ(ボクもリリーと一緒がいい)」


【大丈夫ですよ、レキ君。人それぞれに得手不得手があるんですから、みんな同じ必要はありません。

 レキ君にはレキ君にあった方法でがんばりましょう】


「わふ(わかった)」



 自分と一緒がいいと可愛らしいことを言ってくれるレキ君にほっこりしつつも、大きな顔を両手で挟んで魔力を纏わずもふもふしてあげれば素直なレキ君はちゃんとわかってくれる。

 両目を細めてなすがままにもふもふされているレキ君の頭の上に寝そべっているクティもドヤ顔で優しくその様子を眺めている。



【じゃあレキ君も『魔術補助機能完全再現版』を起動してくださいね。

 対象魔術は灯りの魔術でいいでしょう】


「わふ!(了解だよ!)」


「これだと失敗はまずないけど、設定が制限されてるから気をつけてねぇー」


【はぁ~い】


「わふん(おうともさー)」



 『魔術補助機能完全再現版』を起動し、灯りの魔術を選択したレキ君が行使ボタンをいつも通りぶっ叩くと先ほど同様に光球がポンと打ち出される。

 非常に簡単ではあるがこれで終わりだ。

 ちなみに床には皹が入っているだろうから後で修復しなければいけないだろう。


 だがこの『魔術補助機能完全再現版』はレキ君用に調整されている機能であり、他の誰かが使った時にはコレで終わりだが、レキ君が使った場合は違うのだ。

 エーテル結晶体を自らの体内にもっているレキ君には魔術を行使したという情報が蓄積されるようになっている。

 この蓄積が知識の蒐集と似たような効果を及ぼし、レキ君の中で確かな確信へと変わっていくのだ。

 通常の人が得られるだろうコツがレキ君の場合は増幅され、しっかりと劣化することなく保存される。

 レキ君限定ではあるが『魔術補助機能完全再現版』での魔術行使は補助以上の効果を示すのである。


 もちろんコレらはクティとサニー先生が作り上げた理論により可能となった新技術だ。

 エーテル結晶体を体内に持つことが前提であるから例外的なものではあるが、エーテル結晶体に変わるモノを体内に生成できれば誰にでも可能となるかもしれない技術なのだ。



 その後調子に乗ったレキ君が打ち出す光球でレキ君ルームに張られた幻術空間は異常に明るくなりすぎて更に魔術を行使して隠蔽するハメになった。



 そして今後の課題も判明した。

 それは行使した魔術の打ち消し効果の追加であったりしたのだった。




遂に登場しました誰でも魔術が使えてしまう機能。

とはいっても難しいものどころか非常に簡単なものしか使えません。

でも希少な魔術師にしか使えない魔術をだれでも使えてしまうのは時代が動くくらいの革命です。

まぁ今の所は魔力を見れる人しか無理ですけどね!


いつも通りですが年内の更新はこれで終わりです。

また来年もよろしくお願いします。


気に入っていただけたら評価をして頂けると嬉しいです。

ご意見ご感想お待ちしております。

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