第九十九話
―――1944年三月一日―――
史実なら三月四日にソ連軍が南方軍集団に対して大攻勢を展開するはずであるが、この世界は違っていた。
ロシアの冬で、ドイツ軍は攻撃はしなかったが戦力は充分に蓄えた。
スターリンは何とか攻勢に出ようとするが、ドイツ軍の激しい抵抗で攻勢に出れなかった。
そして南方軍集団のマンシュタイン元帥は進撃を開始させた。
これは満州でも同じ事だった。
三宅坂の参謀本部は、春の訪れと共にウランウデへ進撃する事を関東軍に要請。
関東軍司令長官の山下大将も承諾をして、戦力を充分に蓄えた関東軍は三式中戦車を前衛にしてウランウデへ進撃を開始したのである。
―――ウランウデ郊外―――
「二時の方向にT-34ッ!!」
「撃ェッ!!」
ズドオォォンッ!!
戦車第一一連隊の池田末男大佐が乗る三式中戦車のアハトアハトが火を噴いた。
ズバアァンッ!!
砲弾が命中したT-34中戦車は砲搭が少し動き上がって進撃を停止する。
「一両撃破ッ!!」
ズバアァンッ!!
その時、池田大佐が乗る三式中戦車の右を走行していた三式中戦車に砲弾が命中して撃破された。
「何だとッ!!」
池田大佐は直ぐに撃った犯人を見つけた。
「T-34………いや違うッ!!あれはJS-2重戦車かッ!!」
それは極少数がシベリア方面に移動したJS-2重戦車である。
しかも、この時池田大佐達の目の前に現れたJS-2重戦車は初期生産型であった。
「初期生産型のようだな。弱点の車体前面上部に操縦手バイザーがあるからな」
池田大佐はJS-2重戦車からの攻撃をかわしながら観察をする。
「なら取ったも同然だ。カクカク、敵JS-2重戦車は初期生産型だ。車体前面上部の操縦手バイザーを狙えッ!!」
ズドオォォォンッ!!
ズドオォォォンッ!!
ズバアァンッ!!
ズバアァンッ!!
三式中戦車のアハトアハトが火を噴いて、JS-2重戦車の車体前面上部の操縦手バイザーに命中して、JS-2重戦車は動きを停止した。
「よし、このまま突き進むぞッ!!」
戦車第一一連隊はウランウデへ進んだ。
そして、ウランウデの上空では疾風や零戦対Yak-1戦闘機、Yak-7戦闘機で空戦をしていた。
「もらったッ!!」
ドドドドドドドドドドッ!!
台南空の笹井醇一大尉が乗る零戦の二十ミリ機銃弾がYak-1戦闘機の左翼付け根を貫いた。
ボゥッ!!
左翼付け根から火が出たYak-1戦闘機は急降下で火を消そうとしたが、左翼が衝撃でもぎ取られてYak-1戦闘機はそのまま地面に激突したのである。
「よし、坂井。ウランウデ上空の掃除は終わったか?」
『陸さんも粗方掃除は終わったようです』
笹井大尉の言葉に坂井飛曹長が答える。
彼等台南空は、ソ連との戦争を短期で終わらせるためにラバウルから移動していたのだ。
『しかし、ソ連軍は撃ち落としても撃ち落としても戦闘機は沸いてきますね。まるでアメリカ軍と一緒ですよ』
坂井飛曹長は笹井大尉にそう言う。
「文句を言うな坂井。その分、撃墜数は増えるんだからな」
『それもそうですね』
その時、笹井大尉はウランウデを爆撃しようとしていた銀河の後方からYak-1戦闘機二機が迫っているのを見つけた。
「お客さんが来たぞ坂井。出迎えてやらないとな」
『了解です笹井中隊長。銃を持った敵は追い返さないといけませんからね』
二機は翼を翻してYak-1戦闘機に向かった。
「爆撃準備完了ッ!!」
「投下ァッ!!露助を吹き飛ばせッ!!」
ヒュルルル、ヒュルルル。
陸上攻撃機銀河の爆弾倉から六十キロ爆弾が投下されていく。
ズガアァァァーーンッ!!
ズガアァァァーーンッ!!
六十キロ爆弾はソ連軍の対空砲を吹き飛ばした。
ウランウデは日本軍に占領されようとしていた。
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