第九十七話
技研再び暴走(笑)
―――十二月五日、オアフ島―――
「やぁハルゼー。君の到着を待っていたよ」
「久しぶりだボス」
オアフ島の太平洋艦隊司令部にハルゼーはニミッツ司令長官と挨拶をしていた。
「君の空母群が来てくれて助かった。ジャップは今にもハワイに来そうだったよ」
「ジャップの猿どもはソ連どもとマンシュウで戦っているから此方までに手は回らないさ」
ハルゼーはそう言って葉巻に火を付ける。
「けどよボス。俺が買った連れてきた空母も半分はヒヨコだ。やっと戦える戦力になったから連れてきたんだ」
アメリカの西海岸には新型空母が八隻程がいて訓練中だったが、いずれもヒヨコレベルである。
「それでも構わないさハルゼー。キング長官との話し合いではジャップがソ連と深手を負ったらマリアナ方面に行く事になっているがまだ先の話だ」
ニミッツ司令長官はハルゼーに説明する。
「けどよボス。ジャップの場所に攻めこむにはジャップより二倍以上の戦力が必要だぞ」
「それは分かっているさハルゼー。だがな、プレジデントが作戦を早めろと言っているんだ」
「クソッタレがッ!!」
ニミッツ司令長官の言葉にハルゼーは罵倒する。
「マリアナやトラックは要塞の塊だぞッ!!どうやって攻略しろっつうんだよッ!!」
ハルゼーの雷が落ちた。
日本は陸海軍が協力をしてトラック諸島、マリアナ諸島、硫黄島をほぼ要塞化にしていた。
防御が難しいと判断された島は撤退して、防御が出来る島に戦力を集結させている。
「慌てるなハルゼー。プレジデントも北アフリカが落ちたのを気にしているんだ。俺達は戦力が回復するまで時間を稼げばいい」
「………分かったボス。頼りにしてるぞ」
ハルゼーはニミッツ司令長官にそう言った。
アメリカは着々と反攻準備をしているが、日本はどうであろう。
「………技研の奴等め。とうとうやりおったな………」
空母翔鶴で報告書を一読した三笠は思わず呟いた。
「どうしたんだ三笠?」
三笠の様子を見た霧島少佐が聞いてきた。
「いや………技研の奴等がまたやりおったわ………」
三笠は霧島少佐に報告書を渡す。
「あぁ、チハ改か。これは俺も知ってるぞ」
「な、何やてッ!?」
霧島少佐の言葉に三笠は思わず目を見開いた。
「これは太平洋戦線に配備しているチハの更新用なんだ」
「え?チハって太平洋戦線にまだおったんか?」
「あぁ。最初は一式中戦車改をチハの更新用にしようとしてたんだが、対ソ戦が始まっただろ?一式中戦車改は中隊長車を除いて全て満州に移動したんだ」
なお、一式中戦車改は前面装甲七五ミリにした二型にしたのが生産中である。
「車体は装甲七五ミリの全面溶接で、戦車砲は九〇式野砲(最初はアハトアハトか八八式七五ミリ野戦高射砲の案もあったけど、七五ミリ野戦高射砲は水平射撃だと損傷が激しいので却下となりました。アハトアハトの線もあったが新規の中戦車になるので却下。出来れば無印チハにアハトアハトを載せてみたかったby作者)を改造している。史実のように照準は一式照準眼鏡甲を砲手が観測し、方向と砲の俯仰を決め、発射は戦車長が担当するという、変則的な作業は無い」
霧島少佐が三笠に説明する。
「既に二個中隊がサイパンに配備されている。愛称はチハ改だ」
「………三式中戦車のチハとごっちゃになりそうやな」
「それは仕方ない。三式中戦車は全て満州だからな」
更に、太平洋戦線に配備されている一式中戦車改の大半はビルマとインドに配備されているという状況なのでチハ改の配備はマリアナ方面の戦車連隊には神様からの贈り物といっていい程である。
「………まぁ仕方ない事やなぁ。陸軍が隠したい気持ちも分かるしな」
後にアメリカの暗号解読隊は日本軍の暗号にチハとチハ改の解読をするが、三式中戦車の改造型がいるのだと錯覚する事はまだ先の話であった。
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