第九十四話
―――同日ベルリン、海軍総司令部―――
「レーダー元帥、キール軍港から連絡がありました。酸素魚雷の実験は成功のようです」
「そうか。それは良かった」
ドイツ海軍長官のレーダー元帥は部下からの報告に思わず喜んだ。
「それで生産の方は?」
「既に生産を開始しています。来週には四隻のUボートに搭載されます」
「………日本海軍に感謝せねばならんな」
Uボートが主力とも言えるドイツ海軍は、第一次大戦のような海軍の再建を急がせていた。
戦艦はビスマルクは沈められたが、まだティルピッツやシャルンホルストとグナイゼナウ等の戦艦はいた。
しかし、巡洋艦や駆逐艦は少ないので建造を急がせている。
Uボートは搭載魚雷の半分を酸素魚雷に更新する予定だ。
日本との技術交換の一環で日本から伊号艦の酸素魚雷が送られた。
ドイツ海軍首脳部は無航跡の酸素魚雷に興味を示して(発射時は航跡が出るが)誘導魚雷と混ぜて正確な魚雷の数を連合軍に読ませないようにした。
後にアメリカ軍とイギリス軍はドイツ軍の酸素魚雷にも悩まされるようになる。
ドイツ海軍は機動部隊を作るために空母グラーフ・ツェッペリンを建造していた。
一時は優先順位があったために建造が中断されたりしていたが、何とか来年の二月には完成する予定である。
「何としてもグラーフ・ツェッペリンを完成させるのだッ!!」
『ヤーッ!!』
レーダー元帥の言葉に部下達は敬礼をした。
―――東京、海軍省―――
「お久しぶりです吉田大臣、山本次官」
「久しぶりだな姫神」
「元気そうで何よりだ」
久しぶりに登場した三笠は、海軍省にいた。
「改装した大和型の性能はどうですか?」
「高須君によれば効果は絶大だそうだ」
大和型戦艦は主砲を四六センチ砲から新たに五一センチ砲へと換装していた。(史実では大正時代に四八センチ砲が作られていたので、時間があれば五一センチ砲も作れたのだ)
それによって全長も二六三メートルから三四五メートルに伸びて幅も四八メートル程になっていた。
副砲は取り除かれて、代わりに高角砲が設置された。
機関はディーゼルとタービンで二四万馬力を発揮して速度は三〇.八ノットを出した。
二四万馬力など、日本の技術力では難しいと思われたが、ドイツからの工作機械の輸入によって技術力は向上していたために高馬力を発揮出来たのだ。
大和が優先されて改装されたために武蔵はまだ改装中だった。
長門型は船台が漸く開いたためにペトロパヴロフスク=カムチャツキー攻略後に改装が始まって改装中である。
「戦艦と空母はいるだけで維持費は出るがその分、相手を威圧出来る」
「はい」
山本次官の言葉に三笠は頷く。
「そろそろ金剛型、扶桑型の代艦をと思うが戦争中だからな」
「戦争が終われば記念艦ですね」
「まぁそうなるだろうな」
吉田大臣は置かれていたコーヒーを飲む。
「だが………最後に花形でも飾らればと思うがな………」
日本海軍の軍人なら一度は体験したい戦艦同士による艦隊決戦。
「今は航空機の優位性が証明されてますが、戦艦も必要ですからね」
「第三次ソロモン海戦かね?」
「戦争に絶対はありませんが、可能性はあります」
「だろうな。ところで艦隊決戦が起きた場合だが、司令長官には誰をするかね?」
吉田大臣が三笠に訪ねた。
「自分的にですが、一番は宇垣さん、二番は松田千秋少将、三番に黛大佐、四番に猪口少将ですね」
「ハッハッハ、成る程。一番は宇垣か。アイツは砲術出身だからな」
山本次官が笑う。
「自分としては戦艦部隊の司令長官に宇垣さん、参謀長に松田少将、艦長に猪口少将、砲術長に黛大佐を置くのもありかと………」
「………案外それはいけるな」
三笠の言葉に吉田大臣は頷いた。
後に、ほぼこの首脳部が配置されるなど三笠は知らなかった。
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