第九十一話
―――1943年十月二十五日、皇居―――
「………それで陸軍はソ連軍の猛攻を堪えているのか?」
千種の間に集まった東條達に陛下はそう言う。
陛下は今、対ソ戦の状況報告を聞いていたのだ。
「は、樺太は既に北部を完全に占領してオハ油田を確保しています」
樺太北部は駐留するソ連軍も少なかったせいかして、三個師団と戦車一個連隊で占領出来た。
更に、聯合艦隊は戦艦大和以下の戦艦部隊をカムチャツカ半島のペトロパヴロフスク=カムチャツキーに派遣して艦砲射撃で港を破壊してこれを占領した。
まぁ砲術屋の連中も腐っていたから暇潰しになれただろうと作戦を許可した吉田大臣はそう呟いていた。
「ペトロパヴロフスク=カムチャツキーの占領によって、オホーツク海は完全に我が日本の手中にあります」
吉田大臣は陛下にそう報告をする。
次に立ち上がったのは陸軍参謀総長の杉山元大将である。
「オホーツク海が我が日本の手中に入り、ハバロフスクやブラゴヴェシチェンスク等も我が軍が占領しているので、その周辺を守備していたソ連軍が次々と降伏をしていきます。これは二都市を占領した結果だと思われます」
「捕虜への虐待は無いだろうな?」
陛下は杉山にそう聞いた。
「はい。捕虜を虐待すれば陛下自らが軍法会議を行うと訓示していますので、今のところそのような報告はありません」
「………それならば構わない」
陛下は安堵する。
「前線への輸送ですが、ウラジオストクを占領したので比較的速めに前線へ到着しています」
「野砲や重砲の生産も順調です。戦車も三式中戦車を集中的に生産しております」
杉山と東條が交互に陛下へ報告をする。
「うむ。………工員や前線の兵には苦労をかけるな」
陛下は申し訳なさそうに呟いた。
「は………」
東條は頭を下げる。
「中華民国はどうなっている?」
「我々同様に奇襲されましたが、中華民国の機甲部隊の活躍もあってソ連軍………中華人民軍を撃退しております」
「うむ。中華民国には充分な支援を頼むぞ」
「分かりました」
後に、九五式軽戦車改や一式中戦車改、三式中戦車は中華民国やインドネシア、ビルマやマレーシアで大量に輸出をしたりライセンス生産をする事になる。
三式中戦車は1990年代半ばまで改良型が現役をするまでだった。
一方、ドイツは破竹の勢いで進撃をしていた。
北方、中央軍集団は現地点を死守しつつソ連軍の隙があれば突け込む戦法をしている。
そして南方軍集団はヒトラーの命令に従って黒海沿岸を占領。
ロストフを前線基地にして南方軍集団は集結していた。
モスクワにいたスターリンは自身が危ないと身の危険を感じてウラル山脈に構築されている要塞に向かってカザニにいた。
―――ベルリン総統官邸―――
「フハハハハハッ!!あの銀行強盗の悔しい顔が目の前に浮かんでくるッ!!」
ヒトラーは次々と入ってくる勝報に狂喜乱舞していた。
部下達はヒトラーの狂喜乱舞に少し冷や汗をかいていた。
「南方軍集団には充分な補給をするのだッ!!後はマンシュタインがやってくれるッ!!」
ヒトラーは世界地図を見る。
ヨーロッパの殆んどはドイツのハーケンクロイツの旗が立っている。
「ソ連を落とせば余がヨーロッパの王になる日が近いのも同然だ。前線には充分な冬服の装備を届けろッ!!それと南方軍集団が最優先だからと言って北方、中央軍集団の補給は途絶させるなッ!!」
『ジーク・ハイルッ!!』
部下達はヒトラーに敬礼をした。
―――ウラル山脈要塞―――
「糞ッ!!あのちょび髭伍長の野郎がッ!!」
スターリンはウラル山脈要塞の一室で罵倒していた。
勝報のドイツと違って、ソ連は敗報ばかりが来ていた。
しかも左右からである。
「書記長、同志毛沢東から極東方面への増援を求めていますが………」
「あるわけないだろッ!!死守しろと伝えろッ!!」
「ダ、ダーッ!!」
部下は慌てて部屋を出た。
「………糞、何でこうなってしまったんだ………」
誰もいなくなった部屋でスターリンはポツリと呟いた。
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