第九十話
今回は中華民国の話です。
ソ連と中国共産党が満州で苦戦しているのに対して中国はどうだったであろうか?
中国へは、ソ連極東軍の侵攻は無く代わりに中国共産党軍の侵攻があった。
共産党軍の兵力は約三十万で、二個機甲部隊がいた。
二個機甲部隊というが、中身はソ連軍がノモンハンで使用したBT-5やBT-7、T-26軽戦車等が主力であった。
しかし中華民国軍も日本から機甲部隊を提供されていた。
九五式軽戦車十六両、九五式軽戦車改十八両だった。
九五式軽戦車改は東南アジア諸国等へ輸出する軽戦車である。
装甲が九五式軽戦車より増えて三十ミリとなり、速度は四三キロと若干速くなり、戦車砲は史実の九七式中戦車改や一式中戦車が搭載していた四八口径四七ミリ戦車砲である。
更に砲兵部隊は改造三八式野砲や三七ミリ速射砲が配備されて、モンゴル国境に配置されていた。
そして九月二十五日。
中国共産党軍が中国内へ侵攻した。
機甲部隊を前面にして、その後を主力の歩兵部隊が人海戦術で雪崩れ込むのである。
また、モンゴル軍もこれに加わっていた。
「おいおい共産党軍の奴等、ソ連軍の旧式じゃないか?」
九五式軽戦車改に乗る日本軍から派遣されている佐官が呟いた。
「隊長、こいつなら共産党軍にも勝てますか?」
装填手が佐官に聞いた。
「改なら大丈夫だと思うが九五式軽戦車ならちと荷が重いな。此処は俺達が活躍しないとな」
「なら行きますか?」
運転手が佐官に聞いた。
「砲兵部隊の支援の元、突撃しよう。カクカク突撃準備だッ!!」
佐官の隊長が無線で知らせる。
ズドオォォォンッ!!
ズドオォォォンッ!!
接近してくる共産党軍の機甲部隊に砲兵部隊が砲撃を開始した。
ズガアァァァーーンッ!!
ズガアァァァーーンッ!!
砲弾が命中したBT-5やBT-7、T-26軽戦車はキャタピラを破壊されたり、砲搭が吹き飛ばされたりする。
それでも人民軍機甲部隊は怯えたりせずに突撃してくる。
「撃ェッ!!」
ドオォーンッ!!
ドオォーンッ!!
中華民国機甲部隊が一斉に砲撃を開始する。
ズバアァァーンッ!!
ズバアァァーンッ!!
九五式軽戦車改の砲弾がBT-5やBT-7、T-26軽戦車に命中して動きを停止する。
それでも機甲部隊自体が混乱する動きは見られない。
「畜生ッ!!」
佐官が舌打ちをする。
ブオオォォォォォーーンッ!!
その時、上空から爆音が聞こえてきた。
「九九式襲撃機かッ!?」
固定脚をして主翼に日の丸を付けた単発機が多数襲来した。
それは陸軍の九九式襲撃機で、包頭基地から出撃した部隊である。
獲物を狙い定めた九九式襲撃機は一斉に攻撃を開始した。
ヒュウゥゥーーンッ!!
ヒュウゥゥーーンッ!!
攻撃隊の襲来に人民軍機甲部隊は混乱をした。
ズガアァァァーーンッ!!
ズガアァァァーーンッ!!
九九式襲撃機から投下された二百五十キロ爆弾は次々と人民軍機甲部隊のBT-5やBT-7、T-26軽戦車に命中する。
「隊長ッ!!人民軍機甲部隊が撤退を始めましたッ!!」
運転手が叫んだ。
「今が好機だッ!!カクカク、必ず狙いを定めて一両ずつ撃破するんだッ!!」
佐官の隊長はそう叫んで中華民国機甲部隊はモンゴルに撤退する人民軍機甲部隊を一両ずつ撃破をして、逃げ惑う人民軍兵士を挽き肉に変え、キャタピラで潰していく。
蒋介石は首都北京で人民軍機甲部隊を撤退させた報告を聞いた。
「………此れで漸く毛の奴に一泡吹かせたな」
蒋介石はニヤリと笑った。
「至急、華南に配備させてある部隊をモンゴル国境に集結させろ。そこを防衛線とする」
「モンゴルに侵攻しないのですか?」
「今の我々に侵攻出来る余力はあるのか?」
「………………」
蒋介石の言葉に部下は黙る。
機甲部隊は今戦った部隊しかなく、航空部隊は再建途中であった。
此れで地上戦力で戦えというのか?
それは無理だ。
蒋介石は即座に首を左右に振る。
「日本軍の足手まといにならないよう、充分な防衛線を構築するのだ。それと日本から更なる戦車と航空機の輸入をするのだッ!!」
「はいッ!!」
蒋介石の言葉に部下達は頷いた。
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