第八十四話
そして因縁のノモンハンでの戦いです。
―――ノモンハン―――
「ハッハッハ、これは多いな………」
三式中戦車のハッチから身を乗り出して侵攻するソ連軍機甲師団を見ているのは、第一戦車師団第一戦車連隊隊長の西竹一大佐である。
「それだけ遣り甲斐があるってものですよ連隊長」
装填手が笑う。
「その通りだな。カクカク、全車突撃ッ!!三式中戦車『チハ』の恐ろしさを見せてやれッ!!」
西大佐は無線にそう叫んだ。
第一戦車師団の三式中戦車三六両、一式中戦車改三二両、三式砲戦車十二両の八十両は一斉に突撃を開始した。
戦車の援護として、三式自走榴弾砲二四両と機動九〇式野砲十二門が砲撃を開始した。
ドドオォォォンッ!!
ドドオォォォンッ!!
榴弾砲弾と野砲弾は次々と前進してくるT-34を貫いて破壊する。
第一戦車師団にとって幸運だったのは侵攻してきた機甲師団はT-34-85ではなく、初期型のT-34中戦車だった。
ズガアァーーンッ!!
ズガアァーーンッ!!
直撃を受けたT-34中戦車は次々と炎上する。
「右二時の方向ッ!!」
「撃ェッ!!」
ドオォォォーンッ!!
西大佐が乗る三式中戦車『チハ』のアハトアハトが火を噴き、T-34中戦車を破壊する。
「次弾装填急げッ!!」
ガキイィィンッ!!
その時、T-34中戦車から反撃が来るが三式中戦車の装甲が貫く事が出来ず、跳ね返された。
「馬鹿なッ!?ヤポンスキーは新型戦車を開発していたのかッ!!」
T-34中戦車の車長が驚いた。
しかしその車長も西大佐の三式中戦車から反撃を受けてT-34中戦車もろとも戦死をした。
「怯むなァッ!!押して押して押しまくるのだッ!!」
ソ連軍機甲師団は数で第一戦車師団を押していく。
「宮原の一式中戦車改隊はソ連機甲師団の側面に回れッ!!正面は三式中戦車に任せろッ!!三式砲戦車は宮原隊を援護しろッ!!」
宮原隊がソ連機甲師団の側面に回り、攻撃しようとするが、ソ連機甲師団は砲撃をして側面に回らせないようにする。
それを三式砲戦車が砲撃をして一式中戦車改を援護する。
三式砲戦車は狙いを定めて砲撃をする。
「あの戦車を狙えッ!!あれは危険だッ!!」
ソ連機甲師団の連隊長が指示をする。
百二十七ミリ戦車砲を搭載する三式砲戦車に危険を感じたのだろう。
T-34中戦車の塊が次々と三式砲戦車に発砲する。
ガキイィィンッ!!
ガキイィィンッ!!
だが、三式砲戦車の前面装甲は三式中戦車と同じ九十ミリである。
「畜生ッ!!ヤポンスキーの戦車はドイツ軍の戦車と同じ重装甲だぞッ!!」
車長が罵倒する。
ブオォォォォォーーンッ!!
ズガアァァァーーンッ!!
その時、対地襲撃部隊の銀星二十機、銀龍十八機がノモンハンに到着した。
「ヤポンスキーの襲撃部隊だッ!!」
「退避だッ!!退避しろッ!!」
T-34中戦車群は襲撃部隊の登場に大慌てとなり急いで退避していく。
ヒュウゥゥーン、ズガアァァァーーンッ!!
銀星と銀龍から投下された五百キロ爆弾がT-34中戦車に命中していく。
ドオォォンッ!!ドオォォンッ!!
銀龍の機首に搭載された五七ミリ砲がT-34中戦車の頭上に降り注いで、戦車群は停止したり破壊されたりしていく。
「敵機甲師団は混乱している今が好機だッ!!カクカク、落ち着いて狙えッ!!」
第一戦車師団の戦車部隊は落ち着いて逃げようとするT-34中戦車群を狙って砲撃する。
ソ連軍機甲師団も混乱していては充分な戦闘は出来なかった。
「撃ェッ!!」
ドオォォォーンッ!!
ズバアァァンッ!!
三式中戦車のアハトアハトは確実にT-34中戦車を撃破していく。
そして、遂にソ連機甲師団はノモンハンから撤退をしてモンゴル領内に逃げ込んだ。
「やりましたね連隊長ッ!!」
装填手が西大佐に言う。
「………あぁ。日本の戦車が新たなる一歩を踏み出したんだ………」
西大佐は放棄されたT-34中戦車の残骸を見ながらそう呟いた。
「………さぁ行こう。我々の戦いは始まったばかりだ」
後に、この戦いは『第二次ノモンハン戦車戦』と呼ばれ、(第一次はノモンハン事件)第一戦車師団が完勝するのであった。
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