第六十九話
第二機動艦隊は実に約一ヶ月の間、イギリス軍の通商破壊作戦をしていた。
第二機動艦隊は三笠の提案によって、敵輸送船団をただ壊滅するのではなく、タンカーを捕獲するようにしていた。
燃料事情を考えれば効率的な案である。
第二機動艦隊は約一ヶ月の間に三度の敵輸送船団を壊滅させて、タンカー十四隻を捕獲してセイロン島に帰還したのである。
―――セイロン島―――
「今回のタンカー十四隻の捕獲は連日に渡り空襲を受けているセイロン島にとっては大変有り難い贈り物です」
「そう言われれば参加した将兵も喜びます」
山口長官はセイロン島守備隊司令官本間中将と会談をしていた。
今回の作戦で捕獲したタンカーの三分の二が航空ガソリンであった。
アフリカの航空戦が激しい証拠であろう。
「我々は任務が終了したので残念ながら帰還しなければなりません」
「いえ、海軍は我々陸軍、アフリカのドイツとイタリアを助けてくれました。大変感謝しています」
本間中将が頭を下げる。
第二機動艦隊はセイロン島へ帰還する前にインドのムンバイを爆撃してインド洋のイギリス海上戦力と空軍戦力を大幅に削ったのだ。
「その代わりと言ってはなんですが、第三機動艦隊が駐留していますので輸送路は何とかなるでしょう」
「何からなにまでありがとうございます」
二人の会談は成功のうちに終了して、第二機動艦隊は内地へ帰還するのであった。
途中で、第二機動艦隊はシンガポールへ入港して彗星と天山はトラック島へ移動して零戦三三型はインドからのイギリス軍の侵攻を防ぐビルマの陸軍飛行師団へ引き渡された。
第二機動艦隊は空になった格納庫に重油が積載したドラム缶と航空ガソリンが積載した一斗缶を運んで臨時輸送艦隊として帰還するのである。
「しかし、今回の航空魚雷は破壊力が大きかったな」
何時ものように三笠の部屋に集まった霧島三姉妹、才渓、桃野、金剛達が宴会をしていた。
「今回からの魚雷は九一式航空魚雷改六やからな」
三笠は日本酒を飲みながら金剛に言う。
ツマミは金剛達が主計科からギンバイした牛缶等である。
「改六は史実の日本には無かった新型航空魚雷や」
新型航空魚雷は炸裂火薬を三百五十にまであけだ航空魚雷だ。(完全に作者の妄想です)
新型航空魚雷の速度は従来の四二ノットから四一ノットに下がったが、魚雷攻撃自体が近距離からの雷撃になるので然程心配は無かった。
「エセックス級空母も当たり処が悪かったら三発ぐらいで沈没するやろ」
三笠は皆に言う。
「ところで明日に合流する輸送船団の名前は何?」
三笠は才渓中尉(昇格。他の皆も昇格しているが三笠はまだ少佐のまま)に聞いた。
「確かぁ………ヒ八六船団です」
「ブウゥゥゥーーーッ!?」
「うわッ!?汚なッ!!」
三笠は才渓の言葉を聞いて飲んでいた日本酒を吹いた。
運が悪かったのは霧島少佐である。
「どうかしたのか三笠?」
金剛が聞いてくる。
「い、いや。何でもないわ何でもな………」
三笠は床に零れた日本酒を片付ける。
「……………(まさかヒ八六船団とはな。全滅は無いと思うけど、何かの因果か?)」
三笠は片付けながらそう思った。
そして翌日、第二機動艦隊はシンガポールを出港してヒ八六船団と合流した。
「ヒ八六船団からの無電を受信です。『JK』です」
「よし」
報告を聞いた山口長官はヒ八六船団を輪形陣の中心にして航行を始めた。
ヒ八六船団は鉄鉱石や護謨等の物資を満載した貨物船八隻と重油と航空ガソリンを満載したタンカー九隻である。
輸送艦隊は対潜警戒をしながら南シナ海を通過して、ルソン海峡も通過。
無事に目的地である呉に到着するのは五日後の事であった。
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