第四十六話
「て、敵ィィィ急降下ァァァ直上ォォォーーーッ!!!」
見張り員の悲鳴に近い叫び声を、赤城は防空指揮所で聞いていた。
「チィッ!!」
何時もは皆のお姉ちゃんという雰囲気を出している赤城だが、自分に危機が迫っているのであれば雰囲気が変わるのも仕方ない。
「二番大型機銃アレ狙えェッ!!」
ドンドンドンドンドンッ!!
ボフォース四十ミリ機銃が急降下してくるSBDドーントレスに対して火を噴いた。
それに続いて赤城の対空機銃が唸りをあげてドーントレスに銃弾を叩き込む。
急降下してくるドーントレスは六機だったが、赤城の対空機銃の反撃で二機が火を噴いて海面に叩きつけられたが、先頭のドーントレスは爆弾アームを伸ばした。
「来るッ!!」
ヒュウゥゥゥゥゥーーンッ!!
赤城が言った瞬間、先頭のドーントレスは四百五十キロ爆弾を投下した。
「総員何かに掴まれェッ!!」
防空指揮所にいた青木艦長が叫んだ。
赤城は落下してくる四百五十キロ爆弾を最後まで見続けた。
ズガアァァァァァーーンッ!!
「グウゥゥゥッ!?」
四百五十キロ爆弾は飛行甲板にあった補給が完了したばかりの零戦二機を吹き飛ばした。
燃料が満載だった二機の零戦は激しく燃える。
ズガアァァァァァーーンッ!!
そこへドーントレスの二番機が投下した四百五十キロ爆弾が中部飛行甲板にあった第二エレベーターに突き刺さって爆発。
格納庫内にいた整備員を殺傷して火災を発生させる。
残りは全て外れた。
「消火急げェッ!!」
「畜生、アメ公の野郎めッ!!」
応急隊が米軍に怨みを呟きつつ消火活動をしていく。
「小沢長官。今のところ、沈没する気配はありません。誘爆は飛行甲板にいた零戦二機だけなので大破だと思います」
大石首席参謀長が小沢長官に報告する。
「そうか。他艦はどうなっている?」
ズガアァァァァァーーンッ!!
ズガアァァァァァーーンッ!!
小沢長官がそこまで言った時、空母加賀、蒼龍に四百五十キロ爆弾が命中した。
「………今、空母が健在しているのは飛龍、祥鳳、瑞鳳の三隻です」
草鹿参謀長は悔しそうに言う。
「第二航空戦隊司令官の大西少将に打電しろ。『航空戦ノ指揮ヲ取レ』」
しかし、第二航空戦隊司令官の大西少将は小沢長官からの電文が届く前に指揮を取る事を発光信号で全艦に伝えた。
「空母飛龍より発光信号ッ!!『我、航空戦ノ指揮ヲ取ル』これは全艦に伝えられていますッ!!」
「………流石は大西だな」
小沢長官は苦笑しながら言う。
それから三十分後、報告が来た。
「加賀と蒼龍は爆弾が三発と二発が命中しましたが、沈没の気配はありません」
「ふむ。なら三空母は空母としての機能は消失したも同然だな」
小沢長官は腕組みをしながら呟いた。
「ミッドウェー島攻撃隊を収容後は第一航空艦隊は一旦、敵機動部隊の攻撃圏内から退避しよう。攻撃出来る空母が飛龍だけでは返り討ちにされるからな」
小沢長官はそう決断した。
「赤城、傷の具合はどうなの?」
「一応はマシね比叡」
赤城の部屋で、ベッドに寝かされ身体中包帯が巻かれている赤城に見舞いに訪れた比叡は言う。
「艦隊は一時、敵攻撃圏内から退避するみたいだわ」
比叡は赤城に報告をする。
「それは仕方ないわね。まさか史実と同じ三空母が被弾炎上するんですもの」
赤城はそう言って、骨折をした左手を見る。
「まぁ既に矢は放ったからね。後は結果を待つのみよ」
「それもそうね」
比叡は赤城の言葉に頷いた。
「ところで加賀と蒼龍の具合はどうなの?」
「大丈夫よ。加賀には霧島が、蒼龍には義妹の飛龍が付き添っているわ」
「そう。それなら安心したわ」
比叡の言葉に赤城は若干溜め息を吐いた。
しかし、戦いはまだ終わってはいないのである。
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