第四十五話
さて、いよいよ………。
「直ちに上空警戒の零戦隊を向かわせろッ!!」
草鹿参謀長が叫ぶ。
草鹿参謀長の命令を受けた上空迎撃隊三六機は直ぐに向かった。
「………ミッドウェーからの爆撃隊だな」
「そのようです。恐らく我が爆撃隊が到着前に発進したようです」
小沢長官の言葉に内藤航空参謀が答える。
「だろうな。まぁ、敵がボロボロで帰った後は焼け野原だろう」
小沢長官はそう言った。
「ところで内藤。右足の方は大丈夫かね?」
小沢長官は内藤航空参謀の右足に視線を向ける。
実は内藤航空参謀、ミッドウェー島爆撃隊が発艦寸前に艦橋からのラッタルを降りる最中に踏み外してしまって右足を捻挫してしまったのだ。
「あ、はい。今は松葉杖を借りて何とかしています」
ハハハと内藤航空参謀が笑う。
孫な話をしている中、第一航空艦隊から距離七万メートル付近で零戦隊と米爆撃隊の空戦が始まった。
米軍の護衛戦闘機は僅かに十八機だけで、零戦隊は半数に分かれて戦闘機と爆撃機を片っ端から撃ち落としていく。
「………敵の錬度は低いようだな」
「そのようですな」
双眼鏡で空戦を見ている小沢長官が呟いた。
結局、ミッドウェー島から飛来した米爆撃隊は、第一航空艦隊に近づく事が出来なかった。
生き残ったのはワイルドキャット四機、B-17八機だけだった。
しかし、生き残った十二機も破壊されたミッドウェー島の滑走路に着陸する事は出来ずに環礁内に不時着水をして全機を失ったのである。
「………これだけか?」
引き上げていく米攻撃隊を双眼鏡で見ながら小沢長官は呟いた。
「そのようです。しかし、まだ米機動部隊からの攻撃隊が飛来していません」
「確かにな。………戦いはまだ始まったばかりというわけだな」
それから三十分が経った。
『電探に反応ッ!!敵機来襲ですッ!!』
電探室から電探員が叫んだ。
「位置は?」
「ミッドウェー島の北西ですッ!!」
電探室からの電話をしていた伝令が叫んだ。
「よし、直ちに攻撃隊を発艦させよッ!!」
小沢長官は叫ぶ。
第二航空戦隊でも同様の事が起きている。
―――第二航空戦隊旗艦飛龍―――
「全機発艦ッ!!攻撃機を全部吐き出せッ!!」
第二航空戦隊旗艦飛龍の艦橋で大西少将が叫んでいる。
飛龍は最大全速で航行をして零戦と彗星を発艦させる。
飛龍の隣を並走している蒼龍でも同様の事をしている。
攻撃隊は零戦四五機、九九式艦爆十八機、彗星三六機、九七式艦攻三六機が敵機動部隊の攻撃に向かう。
上空迎撃隊の零戦は更に数を増やして九六機となった。
「敵攻撃隊を発見ッ!!」
攻撃隊が米機動部隊の方角へ向かうと、見張り員が報告をした。
「参謀長。今の時間は?」
「は、0617です」
草鹿参謀長は艦橋に設置されている時計を見ながら言う。
「………此処からが執念場だ」
小沢長官はそう言った。
それから飛来してきた米攻撃隊は五月雨式に攻撃をしていた。
「全く。次から次へとよく来るもんだ」
ダダダダダダダダダダッ!!
零戦のパイロットはそう呟きつつ、十二.七ミリ機銃を一連射をした。
魚雷を抱いたデバステーターはエンジンから火を噴きながら海面に墜落した。
「それにしても米軍の雷撃機はヨタヨタし過ぎだな。うちの九七式艦攻の方が優秀だな」
零戦のパイロットはそう言って新たな獲物を探し始めた。
「長官。そろそろ二階堂隊の補給をせねばなりません」
「………そうだな」
小沢長官は時計を見た。
時刻は0715を指していた。
「新たな敵機を確認ッ!!数は約四十ッ!!」
電探室からの電話をしている伝令が叫ぶ。
「二階堂隊の零戦十八機を全空母で収容せよ。何処の隊だとかは気にするなッ!!」
そして各空母に三機ずつが着艦をして銃弾と燃料の補給をする。
二階堂隊の零戦三十機は最後の仕事とばかりに米攻撃隊を銃撃する。
「………雲があるな」
小沢長官は双眼鏡で見つつそう呟いた。
分厚い雲がいつの間にか第一航空艦隊上空にあった。
「時刻は?」
「は、0722です」
草鹿参謀長が答えた瞬間だった。
「て、敵ィィィ急降下ァァァ直上ォォォーーーッ!!!」
見張り員からの報告に小沢長官達は上空を見ると、SBDドーントレスが急降下を開始していた。
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