第四十二話
三笠が乗る理由とは?
―――五月中旬オアフ島太平洋艦隊司令部―――
「ジャップの艦隊がミッドウェーへ目指す予定なんだな?」
部下からの報告に米海軍太平洋艦隊司令長官のニミッツ大将は唸った。
「はい、空母は殆んど出す予定のようです」
「………ミッドウェーを失うわけにはいかない。レキシントンとサラトガの状況はどうなっている?」
空母レキシントンはオアフ島の簡易修理場で、サラトガはサンディエゴで修理をしていた。
「二隻ともまだかかるようです」
「………二隻とも出撃させる」
「で、ですが………」
「飛行甲板を使えるだけでいいッ!!サラトガは工員を乗せて修理しながらオアフ島へ回航するんだッ!!」
「は、はいッ!!」
部下は慌てて司令長官室を出た。
そしてサンディエゴにいたサラトガは真珠湾に回航され、飛行甲板だけを集中的に修理されているレキシントンと共にスプルーアンスの機動部隊に吸収された。
スプルーアンス少将の機動部隊は空母ヨークタウン、ホーネット、ワスプ、レキシントン、サラトガの五隻となった。
「………何としてでも勝たなければ………」
誰もいなくなった長官室でニミッツ大将は呟いた。
そして時は進み六月。
日本帝国海軍聯合艦隊はミッドウェーを目指して航行していた。
参加部隊は豊田長官直属の第一戦隊(戦艦敷島、大和、長門、陸奥)とその護衛艦隊、小沢第一航空艦隊、高須中将の第一艦隊、上陸船団を護衛する近藤中将の第二艦隊、山口中将の第二航空艦隊が参加していた。
更に、アリューシャン列島攻撃するための角田少将の第三航空艦隊、細萱中将の第五艦隊がいた。
軍令部、陸軍参謀本部との協議の結果、アリューシャン列島も攻略したい事なので手始めにアッツ島とキスカ島の攻略が決定したのだ。
そのため、第二航空艦隊から空母飛鷹、隼鷹を、第四艦隊から瑞穂を引き抜いて、空母龍驤を旗艦とする第三航空艦隊を編成したのだ。
更に、細萱第五艦隊の増援として戦艦扶桑、山城の二隻を第一艦隊から引き抜いて第五艦隊に編入させたのだ。
第二航空艦隊は空母翔鶴、瑞鶴、千歳、千代田の四隻に減ったがあくまでも一時的な処置であった。
なお、第一戦隊には空母龍鳳と四月に竣工したばかりの小型空母日進が配備されている。
日進は水上機母艦で建造していたのを空母に改装したのである。
航路的には、第一航空艦隊、第一戦隊、第一艦隊は内地の呉から。
第二艦隊はサイパンからで、第二航空艦隊はトラック諸島から出撃していた。
―――第二航空艦隊旗艦翔鶴―――
「………………」
「此処にいたか」
「ん?金剛と榛名、それに翔鶴か。どうしたんや?」
翔鶴の防空指揮所で前方の海を見ていた三笠の元へ金剛達三人が転移してきた。
「いやなに、貴様の顔を見にきた」
金剛は飄々と言った。
「嘘つけ。本音は何や?」
「………零戦に乗るのは控えてくれないか?」
翔鶴が三笠にそう言った。
「三笠、パイロットになってくれるのは有り難いけど………三笠は未来人だ。重要な人をそう容易く戦死させたくないんだ」
榛名が三笠の目を見ながら言った。
「………榛名、金剛、翔鶴。心配してくれてありがとうな。でも………俺はまだパイロットから降りられへん」
「な、何でだよッ!!」
榛名が反論する。
「俺はまだ答えを見つけてないからな」
「答え………だと?」
金剛が三笠に聞く。
「………俺の親父、祖父、曾祖父はパイロットをしていた。何のためにパイロットをしていたのか、何でパイロットの道を歩んだのか。俺はそれを知りたくて、この世界に来る前はパイロットになろうと思って勉強を頑張ってたけど、この世界に来てしまった。時代は違うけど何で親父達は空へ向かっていったのか、その答えを探すために俺は零戦に乗るんや」
三笠はそう言って恥ずかしそうにする。
「ちょっとキザっぽいな」
「いや思いっきりキザだな」
「グハΣ(゜Д゜)」
金剛の言葉という矢が三笠の心に突き刺さる。
「………分かった。その代わり、無茶は止めてくれ。お前はまだ生きるべき人間なんだ」
「………あぁ、無茶はしない。約束する」
三笠と金剛はそう言った。
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