第四十一話
―――柱島泊地―――
柱島泊地に、輸送任務が終了した第一護衛艦隊が停泊していた。
今回、第一護衛艦隊が護衛した船舶はタンカー十八隻、貨物船同じく十八隻だった。
海上護衛隊司令長官兼第一護衛艦隊司令長官の伏見宮様は海上護衛隊旗艦朝日の艦橋にいた。
「………これで二回目の輸送任務は何とか終了したな」
「そのようですな」
海上護衛隊参謀長である及川古志郎大将が宮様に言う。
「我々が頑張らねば日本は滅びる。輸送任務は地味であるが何とか頑張ろう」
「はい」
宮様の言葉に及川は頷く。
ブオオォォォォォーーンッ!!
その時、遠くから爆音が聞こえてきて段々と近くなる。
「味方の艦爆隊ですッ!!」
見張り員が報告をしてきた。
「九九式艦爆か?」
「いえ、固定脚の九九式艦爆ではありません。見たことがない機体です」
「ふむ………」
見張り員の言葉に宮様は不審そうに呟いて、自身が持っていた双眼鏡で飛来してくる航空機を見た。
「………成る程。見張り員が見たことが無いというだけ分かるな」
「………あの航空機群はまさか新型機ですか?」
「あぁ」
及川参謀長の質問に宮様は頷いた。
「あれは九九式艦爆の後継機の彗星だ」
宮様は及川参謀長にそう言った。
この時、海上護衛隊旗艦朝日の上空に飛来したのは日本海軍が新たに制式採用したばかりの艦上爆撃機『彗星』二二型四六機である。
艦爆彗星は、史実の彗星三三型である。
ただし、機首の十二.七ミリ固定機銃二丁、十二.七ミリ旋回機銃一丁になっている。
彗星二二型は史実の金星エンジンを搭載して史実通りの速度を出している。
なお、最初に彗星が配備されたのは第二航空戦隊の艦爆隊であった。
第二航空戦隊の艦爆隊は、標的艦矢風に対して訓練をしていた。
ブオオォォォォォーーンッ!!
訓練を終了した彗星隊は次々と母艦である蒼龍と飛龍に着艦していく。
「………九九式艦爆と比べるとかなり速いな」
空母飛龍の艦橋で第二航空戦隊司令官に着任している大西滝治郎少将が呟いた。
「彗星は九九式艦爆より高速ですのでその影響でしょう」
大西少将の傍らで首席参謀の伊藤中佐が言う。
「ふむ、成る程な。まぁ、彗星は次の決戦では暴れてもらわないと困るからな」
「その通りです」
大西少将の言葉に伊藤中佐は頷く。
聯合艦隊のほぼ全艦は出撃出来る準備をしていた。
勿論、MI作戦の準備である。
「い………いよいよですね」
戦艦大和の防空指揮所では艦魂である大和がいた。
大和にとっては初めての実戦である。
「大和、今から緊張していると身が持たないぞ」
「長門さんッ!?」
大和の防空指揮所に長門が転移してきた。
「すいません、遂に私の実戦が始まると思うと緊張してきて………」
大和がエヘヘと笑う。
「まぁ、気を楽にしておけ」
長門は苦笑し、そう言って再び転移をした。
「お、長門か」
「む?三笠?」
長門が自室に帰ると、そこには三笠がいた。
「どうした?」
「いやなに、最近長門と飲んでいなかったやろ?内地に帰ってきたし、長門と飲もうと思ってな」
三笠はそう言って、日本酒を出した。
「………フフ、仕方ないな。飲みに付き合ってやるか」
長門は苦笑して、コップを出した。
「そうこなきゃな」
三笠は長門のコップにトクトクと日本酒を注ぎ込む。
「「乾杯」」
二人はコチンとコップを当てた。
「……ぷはぁ。南方はどうだった?」
「ん?まぁ暑かったな」
長門の質問に三笠が答える。
「いや、南方戦線はどうだったかと聞いたんだが………」
「あ、そっちか。まぁ俺は迎撃戦にしか出てないから何とも言えんけど、あまり敵の練度は良くなかったな」
「そうか………三笠」
「ん?」
「もう………乗るのは止めないか?」
「え?」
そして日本海軍は、運命のミッドウェーへと向かう事になったのであった。
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