第三十五話
今日は戦艦大和を旗艦とする第二艦隊と九州の航空艦隊の菊水作戦の日です。
英霊達は今の日本をどう思っているんでしょうか……。
「撃て撃て撃てッ!!ジャップを近づけさせるなッ!!」
ドンドンドンドンドンッ!!
ドドドドドドドドドドッ!!
空母レキシントンの高角砲員が叫ぶ。
レキシントンはスコールへ逃れるために必死に対空砲火を放っていた。
上空はレキシントンが放つ高角砲の弾幕でところどころが黒くなっていた。
レキシントンと行動を共にしている空母ヨークタウンは一足先にスコールの中へ潜り込んでいた。
「全く………しつこい人は嫌われますよッ!!」
空母レキシントンの防空指揮所で、艦魂であるレキシントンは第二航空艦隊が放った第一次攻撃隊を見ながら罵倒する。
「ヨークは無事にスコールの中へ入れたようですけど………私は間に合うかしら?」
レキシントンはそう呟いた。
「上空にヴァルッ!!」
「ッ!?」
見張り員の叫び声にレキシントンは咄嗟に上空を見た。
上空には固定脚の爆撃機であるヴァル(九九式艦爆)が急降下を開始していた。
「高度千二百ッ!!」
急降下をする高橋機の後部座席に座る偵察員が高度を高橋に伝える。
ズガアァァァーーンッ!!
「四番機直撃ッ!!」
急降下をしていた高橋の中隊の四番機が高角砲弾の直撃を受けた。
四番機は勿論バラバラに砕け、パイロットと偵察員は肉片も骨も残らない戦死だった。
「高度八百ッ!!」
「………もうちょっとだ……」
高橋はそう言いながら、レキシントンの飛行甲板を見つめる。
「高度五百ッ!!」
「投下ッ!!」
偵察員が高度五百を読み上げた瞬間、高橋は爆弾投下索を引いて、二百五十キロ爆弾を投下した。
ヒュウゥゥゥーンッ!!
高橋は操縦桿を引いて機体を上昇させる。
ズガアァァァーーンッ!!
「命中しましたッ!!」
偵察員の報告に、高橋は首を捻って後ろを見ると、レキシントンの飛行甲板に二百五十キロ爆弾が命中して火災を発生させていた。
ズガアァァァーーンッ!!
ズガアァァァーーンッ!!
更に二番機、三番機と次々と高橋の列機がレキシントンの飛行甲板に二百五十キロ爆弾を命中させる。
「隊長。七発は命中してますよッ!!」
状況を見ていた偵察員が高橋に言う。
「これで艦攻隊が突撃をして魚雷を命中させたらレキシントンは終わりだな」
高橋少佐はそう言いながら周囲を見る。
周囲には敵機の姿は見当たらず、味方の零戦隊しか見当たらなかった。
「……………(どうやら俺が此処で死ぬ事は無いようだな)」
もう一度、周囲を見てから高橋少佐はホッと息を吐いた。
「た、隊長ッ!!レキシントンを見て下さいッ!!」
「ん?………逃げられたか………」
偵察員の言葉に高橋はレキシントンを見るが、レキシントンはスコールの中へ隠れてしまった。
残ったのは逃げ遅れている重巡一、駆逐艦四隻だった。
「………仕方ない。爆弾と魚雷を投下していない機はあいつらにかかれッ!!」
高橋少佐の命令を受信した機は、逃げ遅れている重巡と駆逐艦に襲い掛かった。
一方、第二航空艦隊では迎撃戦が展開されていた。
「何としてでも米軍の攻撃隊を空母に近づけさせるなッ!!」
零戦の操縦席で三笠が叫ぶ。
飛来した米軍の攻撃隊は約七十機あまりで、緊急発艦出来た零戦は三笠を含めて三二機だった。
「チィッ!!」
三笠が後方を振り返る。
そこにはワイルドキャットが三笠を追尾していた。
ダダダダダダダダダダッ!!
カンカンカンッ!!
ワイルドキャットの放った弾丸は零戦の右翼に当たり、跳弾となる。
「げ、当てやがったなこの野郎ッ!!」
三笠は機体を左に傾けて左旋回に入る。
史実より旋回性能は低いが、ワイルドキャットと比べると圧倒的である零戦二二型はワイルドキャットの後方に回り込んだ。
ダダダダダダダダダダッ!!
ドドドドドドドドドドッ!!
至近距離から撃ち込んだ二十ミリ弾が操縦席付近に命中し、ワイルドキャットはふらふらしながら海面に落ちていく。
「今日で三機目やな」
ズガアァァァーーンッ!!
三笠がそう呟いた時、爆発音が聞こえた。
「………くそッ!!」
空母千歳が爆撃を受けて炎上していた。
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