第三十四話
ズガアァァァーーンッ!!
ドーントレスが投下した四百五十キロ爆弾は、龍鳳の前部飛行甲板に命中した。
―――重巡出雲―――
「空母龍鳳被弾ッ!!」
「くッ!!」
見張り員からの報告が来るが、南雲自身も龍鳳が被弾するところを直接見ていた。
「消火を急がせろッ!!」
南雲は直ぐに指示を出す。
龍鳳は直ぐに応急隊が消火活動をしていた。
「散水器を出せッ!!」
「はいッ!!」
龍鳳応急長の言葉に、応急隊員がバルブを開ける。
ザアァァァッ!!
炎上していた前部飛行甲板の格納庫に、散水器が水を撒き散らしていく。
これは三笠の意見によって作られた一式散水器である。
まぁ、よーするにスプリンクラーである。
使用するのは真水か、雨で蓄えた雨水である。
海水は機体やパイプが錆びそうなので使用は控えている。
今のところ、一式散水器が配備されているのは戦艦と空母のみである。
それ以外はホースでの消火活動だった。
さて、飛行甲板の状況であるが、前部飛行甲板は爆弾の衝撃で吹き上がり、損傷は大きかった。
幸いにも、消火活動は順調だった。
史実に比べたらマシな方ではあるが。
「龍鳳に被害の状況を知らせろ」
南雲は指示を出す。
既に敵攻撃隊はいなかった。
そして五分が過ぎた時、龍鳳から発光信号が来た。
「龍鳳から発光信号です。爆弾の命中は一発、至近弾二発です。応急修理をしていますが発艦は恐らく不能です。が、着艦は可能なようです」
参謀が南雲に報告する。
「………となると、瑞穂だけで踏ん張らねばならないか………」
南雲はそう呟いた。
「ですが、瑞穂にはカタパルトがあるので何とかいけるでしょう」
日本海軍の各空母の前部飛行甲板には、油圧カタパルトが埋め込み式で設置されていた。
先程の、残りの三六機も発艦出来たのは油圧カタパルトのおかげだった。
龍鳳の油圧カタパルトは爆弾の影響で破壊されて使用不可能だった。
「………取りあえずは乗り切ったか。頼むぞ山口」
前方の海面を見つめながら南雲はそう言った。
一方、第二航空艦隊から発艦した第一次攻撃隊は米機動部隊を発見した。
「全軍突撃準備ッ!!あッ!?」
高橋はそう言うが、思わず叫んだ。
「どうしたんですか隊長?」
後ろにいた偵察員が高橋に聞いた。
「………チ、スコールだ。敵機動部隊の前方にスコールがいる」
高橋は思わず舌打ちをした。
「間に合うかは分からんが、全軍突撃せよッ!!」
高橋の命令を聞いた偵察員は直ぐにト連送を打った。
「行くぞォッ!!」
九九式艦爆隊は敵機動部隊上空に到達すると一斉に急降下を開始した。
―――第二航空艦隊旗艦翔鶴―――
「………あの、少佐」
「ん?何や才渓?」
発着艦指揮所にいると、才渓が声をかけてきた。
「何で飛行服を着ているんですか?」
「え?俺は一応パイロットも兼任してんねん」
「………いいんですか?特務参謀ですよね?」
「特務参謀と言っても相談役みたいな感じやからな」
「……………(それでいいのかしら?)」
才渓は何も言わなかった。
「大丈夫だ美紀。少佐は私がちゃんと守るからな」
「静流ちゃん………」
桃野少尉が才渓に言う。
「………俺は子どもなんか?」
「目をつけられた問題児じゃないかしら?」
『アッハハハッ!!』
八重の言葉に発着艦指揮所にいた全員が笑う。
「………皆が俺を苛めてるぅ………」
三笠は床に『の』の字を書きながらブツブツ言っている。
『ウウゥゥゥゥゥーーーッ!!』
その時、空襲警報のサイレンが鳴った。
「回せ回せェッ!!」
三笠達が叫びながら前部飛行甲板で既に待機していた零戦(カタパルト装着済み)に走って乗り込む。
ブルルンッ!!バババババババッ!!
三笠は準備完了してから発着指揮官に合図を送る。
ガシュッ!!
三笠の零戦は油圧カタパルトの力を借りて大空へと舞い上がった。
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