第三十三話
第四艦隊の上空にいた零戦は三六機だった。
残りの三六機は瑞穂と龍鳳の飛行甲板でプロペラを回して発艦中だった。
「行くぞッ!!」
上空にいた零戦隊を指揮していたのは龍鳳飛行隊長の納富健次郎大尉だった。
三六機は反応があった地点に向かって飛行する。
『隊長ッ!!一時下方に敵機ですッ!!』
部下が納富に知らせる。
納富が一時下方を見ると、爆弾を搭載したドーントレス、魚雷を抱いたデバステーター、それらを護衛するワイルドキャットが飛行していた。
「ドンピシャだ電探員。全機、急降下で銃撃するぞッ!!かかれェッ!!」
納富以下、零戦三六機は一斉に急降下を開始した。
目指すは米攻撃隊である。
―――第二航空艦隊旗艦翔鶴―――
「千代田の九七式艦攻より入電ッ!!『我、敵機動部隊ヲ発見ス。敵空母ハ二隻』以上ですッ!!」
通信兵が艦橋に駆け込んできてそう報告をした。
「山口長官。直ちに全機発艦するべきですッ!!」
三笠は思わず叫んだ。
「当たり前だ姫神。奥宮ッ!!攻撃隊の状況はどうだ?」
「は、翔鶴、瑞鶴、飛鷹、隼鷹の攻撃隊は何時でも行けます」
奥宮は自信満々に頷いた。
「よし。攻撃隊発艦せよッ!!」
山口長官の命令は発光信号で各空母に伝わり、待機していた攻撃隊が発艦を開始する。
攻撃隊指揮官は翔鶴の高橋少佐である。
攻撃隊の陣容は、零戦四五機、九九式艦爆五四機、九七式艦攻五四機が第一次攻撃隊として発艦していく。
『電探に反応ッ!!敵偵察機ですッ!!』
その時、電探室から報告がきた。
「………来たか」
「迎撃隊が向かいますが、こう雲があっては逃げられる可能性があります」
三笠は外の様子を見ながら言う。
第二航空艦隊の上空には厚い雲があった。
見つからなかったらいいが、雲を利用して急降下爆撃でもされたらたまらない。
零戦隊に即座に撃墜されるよう司令部は祈っていたが、敵偵察機―――ドーントレスは追ってくる零戦に対して雲の中に逃げたりしてた。
そして、何の偶然かは分からないが、第二航空艦隊上空にいきなりドーントレスが現れた。
「撃てェッ!!」
ドンドンドンドンドンッ!!
直ちに第二航空艦隊の高角砲が火を噴く。
しかし、ドーントレスはそれをかわしつつ、敵艦隊発見の電文を送っていた。
ダダダダダダダダダダッ!!
ドーントレスが離脱しようとしたら後方から来た零戦に銃撃を受けて、左翼付け根から火を噴いて海面に叩きつけられた。
「………見張りを増やしておけ。奴等は来るぞ」
山口長官は翔鶴艦長の城島高次大佐に言った。
ダダダダダダダダダダッ!!
ズガアァァァーーンッ!!
機銃弾を受けたドーントレスが爆発四散する。
納富以下零戦隊の襲撃は敵機十七機を落とした。
「戦闘機には構うなッ!!爆撃機と雷撃機を狙えッ!!」
納富は無線機に怒鳴る。
ワイルドキャットと戦おうとしていた零戦は、戦いを止めてドーントレスやデバステーターに向かう。
ワイルドキャットはそれを阻止しようと奮戦する。
空戦の網を抜けたドーントレスは第四艦隊へ接近する。(デバステーター隊は第四艦隊へ向かう事が出来ず、やむを得なく魚雷を投棄して離脱した)
しかし、ドーントレス隊は後続の零戦隊三六機に再び阻まれた。
それでもドーントレス隊はめげずに、七機が第四艦隊上空に到着した。
ドンドンドンドンドンッ!!
ドドドドドドドドドドッ!!
第四艦隊からの対空砲火に二機が火を噴いた。
だが、ドーントレスのパイロットは対空砲火を恐れずに近くにいた空母―――龍鳳に急降下した。
ドンドンドンドンドンッ!!
ドドドドドドドドドドッ!!
対空砲弾で先頭の一機を吹き飛ばしたが、残りの三機は四百五十キロ爆弾を投下した。
ズシャアァァアーーンッ!!
ズシャアァァアーーンッ!!
最初の二発は至近弾となって直撃は免れた。
「総員何かに掴まれェッ!!」
最後のは飛行甲板に直撃コースだったため、龍鳳艦長は部下に物に掴まるようにいった。
ズガアァァァーーンッ!!
龍鳳に爆弾が命中した。
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