第二十八話
―――1942年四月十八日―――
この日の午前十時から、関東地方、中部地方、近畿地方は警戒態勢に入った。
高角砲陣地や対空機銃陣地には砲弾や機銃弾が運び込まれて準備は万全にさせる。
対空の見張りとして、関東地方には大島、房総半島の館山、愛宕山、銚子に対空電探が設置され、中部地方には渥美半島に、近畿地方には串本に対空電探が設置されていた。
電探の開発には多数の資金がつぎ込まれていた。
一部は皇室財産からも出ている。
資金があるため、機上電探やKMX――磁気探知機などが実用化一歩出前まで来ていた。
まぁそれはさておき、この日の日本(主に関東、中部、近畿)は緊迫とした雰囲気が流れていた。
―――横須賀海軍航空基地―――
「………………」
三笠は士官搭乗員室でいやにそわそわとしていた。
「………三笠さん。少しは落ち着いたらどうですか?」
「す、すまん聖ちゃん」
そわそわしていた三笠を聖が咎める。
「まぁ仕方ないさ聖。日本が空襲されるかもしれないんだ」
久々に登場した霧島大尉が言う。
「いや久々とか………」
「誰にツッコミをしてるのよ兄貴?」
八重が霧島大尉に言う。
「………いや何もないよ」
霧島大尉は何かを諦めた。
「けど………本当に米軍は来るのかしら?」
外の様子を見ていた樹里が呟く。
「大丈夫だ樹里ちゃん。アメリカは必ず来るよ」
三笠はやかんを取って、水を注ぐ。
「何で言い切れるのかしら?」
八重が三笠に聞いてくる。
「アメリカは負けが続いている。ルーズベルトは対日戦を継続するのにどうしても勝利が欲しいからな。なら多少、危険を冒してでも勝利をもぎ取るんやアメリカは………」
「………成る程ね」
八重は納得したように頷く。
そして午前がそろそろ終わろうとしていた1150。
愛宕山に設置された対空電探に反応があった。
ピコーンッ!!ピコーンッ!!
「電探に反応ありッ!!」
「味方機じゃないだろうな?」
「間違いありません敵機ですッ!!」
「よし。なら急いで通報するんだッ!!」
愛宕山の対空電探施設が俄に慌ただしさを増していった。
―――横須賀海軍航空基地―――
『愛宕山の対空電探基地より打電ッ!!『敵機来襲ッ!!』繰り返す、敵機来襲ッ!!』
『ウウゥゥゥゥゥゥーーーッ!!!』
放送の後に、横須賀基地全体に空襲警報のサイレンが鳴る。
『ッ!?』
士官搭乗員室にいた三笠達は弾かれたように滑走路へ走り、待機している零戦三三型へ駆け寄る。
「回せ回せーーーッ!!」
整備員達が零戦に駆け寄り、チョークを外す。
ブルルンッ!!
先程、試運転をしていたので一発でエンジンは掛かった。
「行くでッ!!」
三笠はブレーキを離して、一気に離陸をした。
ブオオォォォォォォンッ!!
三笠は失速しないように、ゆっくりと上昇して車輪を格納する。
桃野少尉達列機も、三笠に続くように離陸していく。
零戦三三型六機、零戦二二型十二機、雷電九機は高度三千まで上昇をして、ドーリットル隊を探す。
更に、房総半島の館山海軍航空基地からも零戦隊が緊急発進をする。
陸軍も調布基地などから二式戦闘機鍾馗、隼(陸軍版の零戦の名前)、飛燕が緊急発進をして東京上空を飛行している。
そして市民にも空襲警報が発令されて、市民達は防空頭巾を被りながら防空豪の中へと駆け込んでいく。
「見えたッ!!一時の下方にB-25やッ!!」
三笠は飛行をしているB-25を見つけた。
数は五機。
ドーリットル隊はバラけて飛行をしており、一機は名古屋へ。
もう一機は神戸に向かっていた。
「かかれッ!!」
三笠達迎撃隊二七機は一気に急降下をする。
ダダダダダダダダダダッ!!
B-25からは旋回機銃が火を噴くが、当たる気配は全くしない。
「もらったッ!!」
ダダダダダダダダダダッ!!
ドドドドドドドドドドッ!!
十二.七ミリ機銃弾と二十ミリ機銃弾が最後尾にいたB-25に命中した。
キイィィィン………ズガアァァァーーンッ!!
最後尾にいたB-25は二基のエンジンから火を噴きながら落ちていったが途中で爆発四散した。
最後尾にいたB-25がやられたのに動揺したのか、一気に四散した。
「逃がさんでッ!!各機、一個中隊に分かれて攻撃やッ!!」
遁走するB-25に、中隊毎に分かれた迎撃隊は次々と機銃弾を叩き込んでいく。
そしてB-25が空からいなくなったのは五分後の事だった。
日本に侵入してきたB-25は名古屋、神戸は全機撃墜。
神奈川方面、千葉方面から来たのも撃墜した。
しかし、一機だけが低空飛行で侵入していた。
「敵機接近ッ!!」
「撃て撃て撃てッ!!」
ドンドンドンドンドンッ!!
陸軍の高角砲が低空飛行で侵入したB-25に火を噴く。
「畜生ッ!!航空隊は何をしていたんだッ!!」
高角砲員が叫ぶ。
そして爆弾倉を開いたB-25は爆弾を投下した。
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