第二十六話
………ふぅ。
三笠「どうした?」
いやぁ、才谷艦長似でも出そうかとな。
全員『おいおい………』
小沢第一航空艦隊がセイロン島を攻撃する中、戸塚少将の艦隊はアッズ環礁へ向かう最中にあった。
―――戸塚艦隊旗艦隼鷹―――
「………何とか此処まで来れたようだな」
空母隼鷹の艦橋で戸塚少将は前方の海面を見ながらそう呟いた。
「参謀長、攻撃隊の準備はどうだ?」
「は、全機何時でも飛べます司令官」
参謀長はそう答えた。
「そうか、なら行こうか。全機発艦ッ!!目標は敵イギリス東洋艦隊だッ!!」
「ハッ!!」
戸塚の命令に参謀長は敬礼で答えて、四隻の空母は攻撃隊を発艦させる。
空母飛鷹と隼鷹は全機発艦だが、前部飛行甲板に備えられた油圧カタパルトを使って、攻撃隊を発艦させていく。
攻撃隊は零戦四二機、九九式艦爆五四機、九七式艦攻五四機の百五十機の攻撃隊である。
攻撃隊は、編隊を組むとアッズ環礁へと向かった。
―――アッズ環礁―――
「何ッ!?セイロン島のコロンボが攻撃を受けただとッ!!」
イギリス東洋艦隊旗艦ウォースパイトの艦橋で、東洋艦隊司令長官ジェームズ・ソマー ヴィル大将は朝食としてサンドイッチとコーヒーを飲食していたが、コロンボ空襲の一報に思わずコーヒーカップを落としてしまう。
「おのれジャップめッ!!我々を油断させていたのかッ!!」
イギリス東洋艦隊司令部での攻撃は四月一日と予測していた。
しかし、一向に現れない小沢第一航空艦隊に司令部は誤報か、延期になったと判断をしてイギリス東洋艦隊はアッズ環礁へ帰還していたのである。
「直ちに全艦の出撃準備を急がせるんだッ!!」
ソマーヴィル大将は慌てて指示を出す。
ソマーヴィルはまだ残っていたサンドイッチを食べ、新しく注いだ熱いコーヒーで胃の中に流し込んだ。
「ゴホッ!!ゴホッ!!」
………まぁ当然そうなるわな。
しかし、ソマーヴィル大将達は知らなかった。
日本は既にアッズ環礁の情報を知り、そして攻撃隊を送り込んでいた。
一時間半後、漸く何隻かが出撃準備を完了させていた。
その時、イギリス東洋艦隊に搭載された対空レーダーがアッズ環礁へと向かってくる『何かを』捉えた。
「た、大変ですソマーヴィル長官ッ!!」
「何事だッ!?」
ウォースパイトの艦橋に通信参謀が慌ただしく入ってきた。
「て、敵機来襲ですッ!!ジャップの攻撃隊がアッズ環礁に向かって来ますッ!!」
「何ッ!?」
参謀の言葉にソマーヴィル大将の思考は一旦停止した。
「(………何故だッ!!何故奴等は……オザワはこの場所を知っているんだッ!?)」
ソマーヴィル大将は知るよしもなかった。
なにせ、相手の日本軍には未来から来た一人 の青年がいた事を………。
「長官指示をッ!!」
参謀長がソマーヴィル大将に促す。
「げ、迎撃だッ!!空母は戦闘機を出せッ!!」
空母インドミダブルとフォーミダブルは急いでフルマーとアメリカから輸出されたマートレット(F4F)が発艦していく。
だがそれも約二十機程だった。
全機発艦させる前に攻撃隊が来襲したのである。
「全艦対空砲火開けッ!!ジャップを近寄らせるなッ!!」
ドンドンドンドンドンッ!!
ドドドドドドドドドドッ!!
全艦から高角砲と対空機銃が飛を噴き、攻撃隊を妨害する。
しかし、攻撃隊は臆せずに九九式艦爆は急降下爆撃を、九七式艦攻は低空飛行での雷撃を敢行する。
動かない艦はただの的にしか過ぎなかった。
ズガアァァァーーンッ!!
ズガアァァァーーンッ!!
ズシュウゥゥゥゥゥーーンッ!!
ズシュウゥゥゥゥゥーーンッ!!
爆弾は主に巡洋艦や駆逐艦に命中し、魚雷は五隻の戦艦、二隻の空母に命中する。
爆弾が命中した巡洋艦や駆逐艦は炎上し、魚雷が命中した戦艦と空母は傾斜していく。
「………何という事だ……」
ソマーヴィル大将は傾斜しているウォースパイトの艦橋で思わず倒れそうになる。
「長官ッ!!退艦を願います。幸いにもウォースパイトは沈みそうにはないですが、このままでは危険かと………」
「………宜しい。退艦しよう」
参謀長の言葉にソマーヴィル大将は頷いた。
しかし、イギリス東洋艦隊の危機は去ってはいなかった。
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