第二十二話
そして因縁とも言えるウェーク島。
第一航空艦隊と第一艦隊が真珠湾から帰還する最中、井上成美中将が指揮する第四艦隊はウェーク島攻略に向かっていた。
第四艦隊は空母瑞穂、龍鳳の二隻と一等海防艦だった巡洋艦常磐、出雲、磐手、八雲、吾妻、春日の六隻、第十八戦隊の軽巡天龍、龍田、軽巡夕張を旗艦とする第六水雷戦隊である。
八雲などの七隻の巡洋艦は日露戦争以来の老齢艦であるが、使える物は何でも使うと軍令部と連合艦隊司令部はそう決めて、現役艦へと復帰したのだ。
七隻は今のままでは役に立たないので大改装をするのだが、工廠は戦艦や空母、重巡、軽巡、駆逐艦など現役艦の改装で手一杯なため、実際に改装が出来たのは八雲一隻のみである。(なお、浅間は大改装中である)
現在、日本では空襲に備えて工場などの軍事工場は各地へ分散している。
造船所などは、北海道の釧路や室蘭、函館、大阪、別府などに移転したりしている。
八雲は二十.三センチ連装砲四基を搭載して艦を延長、重油専焼缶に代えたりして速度は三三ノットになっている。
ただ、対空砲の搭載はまだ不十分なので内地に帰還したら設置に取り掛かる予定である。
「………またお国のために戦う時が来るとは思わなかったな」
重巡八雲の防空指揮所では艦魂である八雲が艦隊を見ながらそう呟いた。
八雲などは外国で建造された艦なので日本人ではない。
しかし、彼女達の心は日本人だった。
『電探に反応ッ!!敵機来襲ッ!!』
電探員が叫び、全艦に対空戦闘用意のラッパが響き渡る。
上空警戒をしていた零戦十二機は直ぐ様迎撃に向かった。
「敵機の数は?」
重巡八雲の艦橋で第四艦隊司令長官の井上成美中将は参謀長の矢野志加三少将に聞いた。
「は、数は三機のようです」
矢野参謀長はそう報告した。
「………やはり開戦時に爆撃したのが効いたな」
井上中将はそう呟いた。
ウェーク島は開戦時、マーシャル諸島に配備されていた九六式陸攻二七機で爆撃をされていた。
連日に渡って爆撃をして、徹底的に叩いた。
ウェーク島には開戦時、F4F十二機いたが、爆撃で破壊されて僅か二機しかなく、来襲したのもこの二機だった。
二機のF4Fは瞬く間に落とされ、被害は無かった。
「よし、このままウェーク島に行くぞ」
第四艦隊は何事も無く、翌日にはウェーク島に到着した。
―――翌日―――
「砲撃開始ッ!!」
「撃ェーーーッ!!」
ズドオォォォーーンッ!!
ズドオォォォーーンッ!!
十一隻の巡洋艦が一斉に砲撃を開始した。
巡洋艦が砲撃をする中、輸送船から上陸部隊がウェーク島に接近した。
上陸部隊は海軍陸戦隊である。
そして上陸部隊が上陸した。
第一陣には海軍が陸軍から貰った九七式中戦車(短砲身)六両、九五式軽戦車六両も上陸している。
更に上空には瑞穂と龍鳳から来た攻撃隊がいた。
零戦が機銃掃射をして九九式艦爆が急降下爆撃を、九七式艦攻が水平爆撃を敢行していく。
「攻撃隊が道を開かせたぞッ!!」
「突っ込めェーーーッ!!」
九七式中戦車、九五式軽戦車を先頭にして陸戦隊が内陸部へ突撃していく。
ウェーク島の米軍司令部に白旗が掲げられたのは八時間後の事だった。
井上中将は輸送船に連絡をして飛行場補修のために改造したブルドーザーを揚陸して補修に当たらせた。
改造ブルドーザーは九七式中戦車の車体を流用したブルドーザーであり、今の日本陸海軍には七十台余りがある。
ブルドーザーは各地で大活躍をしており、特に満州では防衛戦の強化や増築などで史実以上の防衛戦が作られている。
「豊田長官に打電。『我、ウェーク陥落サス』」
井上中将は史実の汚名を晴らしたと言わんばかりに矢野参謀長に言った。
なお、井上中将は第一作戦が終了すると軍令部へ異動する事が決定されており、後任には南遣艦隊司令長官南雲中将が着任する予定である。
南遣艦隊司令長官南雲中将の後任には軍令部の伊藤整一少将が予定されている。
それは兎も角、ウェーク島は陥落したのであった。
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