第二十一話
「敵艦隊は戦艦を含むッ!!」
見張り員からの更なる報告に艦隊は騒然とした。
ハルゼー艦隊には僅か駆逐艦五隻しか無傷な艦があるが、到底勝ち目はない。
五人の艦長は人命救助を優先にして炎上する艦の放棄を決めた。
幸いにも、やってくる敵艦隊の速度は遅かった。
五隻の駆逐艦は洋上を駆け巡り、海に漂流している乗組員を救助していく。
そして、救助を完了すると慌てて真珠湾に向かった。
ハルゼー艦隊に接近してきたのは高須四郎中将の第一艦隊であった。
戦艦は伊勢と日向の二隻だが、重巡は第六戦隊の青葉、衣笠、古鷹、加古の四隻だった。
それの護衛に空母祥鳳、瑞鳳、軽巡川内以下の第三水雷戦隊に工作艦明石である。
―――第一艦隊旗艦伊勢―――
「参謀長、敵は逃げ出したな」
「そのようですな。まぁ我々にとっては有りがたいです」
高須中将の言葉に参謀長が答える。
第一艦隊は開戦前、トラック諸島からマーシャル諸島を経由してハワイ諸島を目指していたのだ。
「………浮いているのは三隻だな」
「はい、空母一、重巡二です」
第一艦隊は三隻を取り囲むと、炎上しているところに向けて消火活動を開始した。
「豊田長官には中々のお土産に出来たな」
「はい。第一航空艦隊もこちらに向かっているようです」
「そうか」
第一艦隊が捕獲したのは空母エンタープライズ、重巡チェスター、ノーザンプトンであった。
「しかし、姫神も中々上手い事を考える。敵から空母を捕獲するなんて………」
高須は苦笑する。
この空母捕獲は全て三笠が考えていた物だった。
史実を知る三笠にとって、エンタープライズは何かと生き残っていた。(架空戦記などでも)
そのため、三笠はあえてエンタープライズを捕獲する案を出したのだ。
これには豊田長官も納得した。
豊田長官は艦政本部長もしていたため、軍艦の建造を考えれば捕獲した方がいいと判断したのだ。
しかし、第一航空艦隊も第一艦隊もまだハワイ作戦は終了していなかった。
―――十二月十日―――
第一航空艦隊は第一艦隊とカウアイ島南東約百五十海里で合流をして一路、オアフ島を目指した。
―――オアフ島太平洋艦隊司令部―――
「何ッ!?ジャップの艦隊がオアフ島に向かっているだとッ!!」
アメリカ太平洋艦隊司令長官のハズバンド・キンメル大将は、マクモリス参謀長の報告に驚いた。
「何故だ……既に太平洋艦隊やオアフ島の航空戦力は壊滅しているというのに………」
「恐らくは重油タンクの破壊ではないでしょうか?」
「ッ!!それかッ!!」
オアフ島の重油タンクには約四百五十万バレルがあった。
これを破壊されると太平洋艦隊は半年は身動きが取れないのだ。
だが、今のオアフ島には第一艦隊と第一航空艦隊を止められる戦力はなかった。(ハルゼー艦隊の駆逐艦五隻がいたが………)
それから数時間後、第一航空艦隊と第一艦隊は真珠湾沖合約二万メートルにいた。
各空母では爆弾を搭載した零戦、九九式艦爆、九七式艦攻が発艦をして無傷な防御陣地や生き残っていた航空機を破壊していく。
そして、金剛型四隻、伊勢型二隻の戦艦と、第六戦隊、第八戦隊(利根、筑摩)は一斉に砲撃を開始した。
「弾種、三式弾用意完了ッ!!」
「砲撃開始ッ!!」
「撃ェーーーッ!!」
報告に高須中将は即座に砲撃開始を言い、伊勢艦長が命令した。
ズドオォォォォォーーンッ!!
ズドオォォォォォーーンッ!!
六隻の戦艦と、六隻の重巡の主砲が火を噴き、砲弾は燃料タンクに命中する。
ズガアァァァァァーーンッ!!
ズガアァァァァァーーンッ!!
三式弾のせいで、燃料タンク群は誘爆を繰り返していく。
「………燃えているな」
空母赤城の艦橋で三笠はそう呟いた。
「姫神、これは始まりの合図だよ」
いつの間にか翔鶴が転移していた。
「………それもそうやな」
三笠はそう答える。
真珠湾の燃料タンク群を撃滅した第一艦隊と第一航空艦隊は日本へと帰還した。
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