第十九話
―――第一航空艦隊旗艦赤城―――
「小沢長官。第二次攻撃隊が帰還します」
「うむ。まぁ既に見えているがな」
草鹿の報告に小沢長官は苦笑した。
既に水平上にポツポツと黒い塊が見えてきていた。
「未帰還機は何機だ?」
「嶋崎少佐からの報告では零戦二機、九九式艦爆五機、九七式艦攻三機の十機です。また、不時着水域には零戦三機、九九式艦爆八機、九七式艦攻四機が向かったそうです」
「………そうか。パイロットは消耗品だ。何としても救わないとな」
「その通りです。山本次官や源田達が戦闘機無用論をぶちまけなければもう少しパイロットはいたんですが………」
内藤航空参謀はそう漏らした。
「うむ。まぁ過ぎた事を言っても仕方ない。戦争は始まってしまったのだ」
小沢長官は内藤航空参謀にそう言った。
「ところで姫神少佐はどうしたのかね?」
「姫神少佐ならもうすぐ発艦します」
小沢長官の言葉に内藤航空参謀はそう答えて、飛行甲板を見た。
そこには零戦九機が整列をしていて、プロペラを回していた。
「ほぅ、姫神少佐は張り切っているな」
「現代人で戦争に参加しますからね」
「しかし……別に姫神少佐自身も参加しなくてよかったのではないか?」
草鹿参謀長が言う。
「確かにそうですが、姫神少佐も撃墜王とかに興味があるみたいで。少佐自身も学校を卒業後には自衛隊に入る予定だったとか」
内藤航空参謀の自衛隊のという言葉に小沢長官と草鹿参謀長は苦笑した。
「………軍隊じゃないから自衛隊か。悲しいものだ」
「そうですね」
「その歴史を作らないためにも何としても勝たねばならない」
ブオオォォォォォォーーンッ!!
小沢長官の言葉と共に、三笠が乗った零戦が赤城から発艦した。
「うお〜。ええ眺めやなぁ」
三笠は高度三千を飛行しながら眼下に航行している第一航空艦隊を見ている。
三笠の後ろには桃野少尉以下零戦八機が飛行している。
現在、直掩隊は赤城の零戦九機と加賀の零戦九機の十八機だった。
第二次攻撃隊は零戦隊を優先して着艦をして、燃料タンクを急いで付けて発艦をしていた。
『電探に反応ッ!!2時の方向から敵攻撃隊ッ!!』
無線で電探員が三笠達に知らせてきた。
「了解やッ!!全機行くでッ!!」
三笠は2時の方向に機首を向けて高度四千まで上昇した。
急降下をしながら銃撃をするみたいである。
程なく加賀の零戦隊も加わって敵攻撃隊を探し求める。
『姫神いたぞッ!!下方にいるッ!!』
桃野少尉が三笠に報告をしてきて、三笠も敵攻撃隊を確認する。
「太陽を背にして攻撃する」
十八機の零戦は太陽を背にした。
「よし、行くでッ!!全機突入やッ!!」
三笠の言葉と共に零戦十八機は一斉に急降下をした。
一方、ハルゼー艦隊は村田重治少佐率いる攻撃隊に襲われていた。
「撃てッ!!ジャップをぶちのめせッ!!」
ドンドンドンドンドンッ!!
ドドドドドドドドドドッ!!
艦隊から高角砲や対空機銃が上空に砲弾や弾丸を送り込む。
「攻撃隊を分ける。友永と江間の隊は敵護衛艦を攻撃だッ!!」
『了解ッ!!』
村田は無線で指示を出して、友永大尉の九七式艦攻二個中隊と江間大尉の九九式艦爆二個中隊が護衛艦を攻撃する。
「は、速いッ!!」
デバステーターの速度で見慣れていた護衛艦の乗組員は九七式艦攻の速度に驚いた。
江間大尉率いる九九式艦爆隊は護衛艦が友永大尉の九七式艦攻隊に集中しているのを見て一気に急降下を開始した。
「し、しまったッ!!敵急降下爆撃機だッ!!」
対空機銃が慌てて九九式艦爆隊に照準を合わそうとするが九九式艦爆隊は二百五十キロ爆弾を重巡、駆逐艦に叩きつけた。
ズガアァァァァァーーンッ!!
ズガアァァァァァーーンッ!!
重巡や駆逐艦は瞬く間に炎上し、そこへ九七式艦攻隊が投下した魚雷が命中した。
ズシュウゥゥゥゥゥーーンッ!!
ズシュウゥゥゥゥゥーーンッ!!
重巡や駆逐艦に次々と水柱が立ち上る。
生き残っていたのは駆逐艦五隻だった。
残りは炎上、沈没しつつあった。
「さて、これで攻撃しやすくなるな」
村田はニヤリと笑った。
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