第十七話
―――連合艦隊旗艦敷島―――
「豊田長官ッ!!真珠湾の淵田中佐から入電ですッ!!電文は『トラ・トラ・トラ』ですッ!!」
連合艦隊参謀長の宇垣纏少将が通信紙を持ちながら長官室に入ってきた。
「そうか……真珠湾の奇襲は成功したか」
豊田は宇垣から受け取った電文を見てホッと溜め息を吐いた。
「これで真珠湾の航空戦力を壊滅したら作戦は上手くいくな」
「はい。後はハルゼーの艦隊を撃破後に第一艦隊と合流とするだけです」
「うむ。ハルゼーの艦隊は何としても見つけろと高須にも伝えておけ」
「はッ!!」
宇垣は豊田に敬礼をした。
「ところでシンガポールからの『トラ・トラ・トラ』はまだかね?」
「まだ一報は来ていませんが間もなく来るでしょう」
宇垣は豊田にそう言った。
―――シンガポール―――
イギリス東洋艦隊が基地にしているシンガポールは燃えていた。
そのシンガポールの上空を、赤い丸印の国際標識を付けた航空機が乱舞していた。
日本海軍の航空機である。
南雲中将の南遣艦隊は戦力を二分していた。
陸軍が上陸するコタバルに南雲中将が指揮をする戦艦部隊を向かわせて、空母部隊はシンガポールを奇襲攻撃をしていた。
空母部隊の司令官は猛将と言われる第四航空戦隊司令官の角田覚治少将である。
角田少将は迎撃用の零戦以外の航空機を全てシンガポールに向かわせていた。
零戦六三機、九九式艦爆六三機、九七式艦攻六三(二七機は雷装)で攻撃隊総隊長は関衛少佐である。
攻撃隊がシンガポールに到着した時、シンガポール上空にはイギリス軍の戦闘機はいなかった。
「艦攻隊はプリンス・オブ・ウェールズとレパルスを狙えッ!!」
関少佐の命令に二七機の艦攻隊は一気に降下をして低空飛行で、停泊していた二隻に突入をする。
そして二七機は戦艦、巡洋艦に魚雷を投下した。
「『トラ・トラ・トラ』だッ!!」
その瞬間、関は偵察員に電文を出すようにした。
ズシュウゥゥゥーーンッ!!
ズシュウゥゥゥーーンッ!!
「行くぞォッ!!」
プリンス・オブ・ウェールズとレパルスに水柱が吹き上がった瞬間、関は艦爆隊の半数を飛行場爆撃に向かわせて、残りは関と一緒にイギリス東洋艦隊へ急降下爆撃を敢行したのであった。
―――第一航空艦隊旗艦赤城―――
「第一次攻撃隊が見えましたッ!!」
見張り員が艦橋に報告をしてきた。
「被害は?」
「未帰還は零戦一、九九式艦爆二機の三機です。不時着水域には零戦三、九九式艦爆二、九七式艦攻二機が不時着をして救助されています」
小沢の言葉に草鹿が報告をする。
第一航空艦隊の前方約二百キロの地点には伊号潜水艦四隻が進出をして不時着をしたパイロットの救助をしていた。
「………第二次攻撃隊はもっと酷いだろうな………」
「恐らくは………」
小沢の言葉に三笠はそう答えた。
「ところで霧島大尉は大丈夫かね?」
「まぁ何とかです」
小沢の言葉に三笠は苦笑した。
「オェ〜〜〜」
霧島大尉はトイレで盛大に吐いていた。
「あんた馬鹿ぁ?何で陸軍が軍艦に乗っているのよ?」
霧島大尉を看病していたのは蒼龍と飛龍であった。
「ま、まさかこんなに揺れるとは思っていなかったんだよ………オェ……」
霧島大尉はそう言ってまた吐いた。
「………情けないったらありゃしないわ」
三つあみからツインテールに髪型を変えた蒼龍は溜め息を吐いた。
「蒼龍はやっぱあれやな」と三笠の一言で蒼龍に某少女のように同じ髪止めを付けさせたらおずおずしていた性格は消え失せて某少女のツンデレの性格へと変わった。
「オェ〜〜〜」
「「………あんた馬鹿ァッ!!」」
赤城のトイレに龍の姉妹の声が響いた。
「航跡発見ッ!!」
重巡利根から発進した利根所属の零式水上偵察機の四号機がカウアイ島の南方約三百キロの地点で何重もの航跡を見つけた。
「空母だッ!!」
艦隊から空母を見つけた零式水偵は慌てて第一航空艦隊に打電をしたのであった。
御意見や御感想等お待ちしていますm(__)m