第十五話
紺碧風に言うと運命の開戦である。
三笠「おいおい……」
―――1941年十二月八日―――
ハワイ北方に小沢第一航空艦隊はいた。
旗艦赤城にはZ旗が掲げられていた。
勿論意味は『皇国の興廃、この一戦にあり。各員一層、奮励努力せよ』である。
第一航空艦隊の各空母の飛行甲板には第一次攻撃隊が列を成していた。
―――旗艦赤城―――
「長官。攻撃隊は何時でも行けます」
「うむ。第一次攻撃隊発艦せよッ!!」
草鹿参謀長の言葉に小沢長官は頷いた。
「よっしゃッ!!お前ら行くでッ!!しっかりと爆弾を敵に叩き込むんやッ!!」
『オオォォォッ!!』
第一次攻撃隊総隊長である淵田美津雄中佐の激励にパイロット達は雄叫びをあげる。
「頼んだぞ淵田」
「任しとけや内藤」
内藤航空参謀の言葉に淵田は笑いながら返事をする。
「そんじゃあ行ってくるわ。姫神、写真はバッチリ撮ったるからな」
「頼みますよ総隊長」
史実では日本側の写真はあまり少なかった。
真珠湾や空母飛龍、大和は有名であるが、信濃は僅か一枚しかない。
そのため後世により多く残すために淵田に写真を撮ってほしいと三笠は御願いしたのである。
ババババババババッ!!
飛行甲板に並べられた零戦、九九式艦爆、九七式艦攻のプロペラが回り出した。
九九式艦爆と九七式艦攻は改良型であり、両機共に金星エンジン千三百馬力を搭載している。
九九式艦爆はほぼ史実の二二型だが、胴体内に燃料タンクを設置して航続距離は約千六百キロであり、九七式艦攻も同様の改良をされて航続距離は二千二百キロで最大速度は四二五キロとなる。
両機種とも航空無線は新しく配備されていた。
「発艦開始ッ!!」
空母赤城の飛行長である増田中佐が言うと発着艦指揮所から白旗が振られた。
『発艦せよ』の合図である。
合図と共に制空隊隊長の板谷茂少佐機の零戦が動き出して飛行甲板から大空へと舞い上がる。
ブオォォォォォーーンッ!!
板谷機に続いて零戦隊が次々と発艦していく。
それは各空母も同じである。
「……これが日本の機動部隊やねんな……」
発艦していく零戦を見ながら三笠はそう呟いた。
零戦隊の発艦が終わると次は翔鶴と瑞鶴では九九式艦爆隊が残りの空母では九七式艦攻の発艦が待っていた。
九九式艦爆は腹に二百五十キロ爆弾を抱え、更に両翼下には六十キロ爆弾も抱えていた。
なお、第一次攻撃隊の艦爆隊隊長は空母翔鶴の飛行隊長である赫親分こと高橋赫一少佐である。
艦爆隊の発艦が終わると、最後まで残っているのは赤城、加賀、蒼龍、飛龍から発艦する九七式艦攻の水平爆撃隊と艦攻隊である。
水平爆撃隊は長門型戦艦の徹甲弾を改造下八百キロ徹甲弾であり、艦攻隊は八百キロ航空魚雷を搭載していた。
魚雷は、両側に安定翼が付いた改良型である。
水平爆撃隊と艦攻隊の各機は発艦していくが爆弾と魚雷の重みで一旦沈んでからゆっくりと上昇していく。
水平爆撃隊隊長は第一次攻撃隊総隊長の淵田中佐が兼任し、艦攻隊隊長は村田重治少佐である。
第一次攻撃隊は編隊を組みながら真珠湾へと目指した。
第一次攻撃隊の数は零戦五四機、九九式艦爆五四機、九七式艦攻(爆装)五六機、九七式艦攻(雷装)五二機となり、史実とは異なっている。
その理由は空母赤城と加賀の改装で両空母とも常用機は百八機、補用十二機になっていたからである。
なお、翔鶴型空母も真珠湾作戦後に同様の改装を受ける予定である。
空母以外の乗組員達は第一次攻撃隊が水平線へ消えるまで『帽振れ』をしていたが空母乗組員は第二次攻撃隊の準備をしていた。
「小沢長官。第二次攻撃隊の準備完了しましたッ!!」
草鹿が小沢に言う。
「よし、第二次攻撃隊発艦せよッ!!」
「了解ッ!!」
第一次攻撃隊が水平線に消えると各空母から第二次攻撃隊が発艦していった。
―――ワシントンDC国務省―――
「お渡しします」
野村大使はハル国務長官に宣戦布告の文書を渡した。
「………貴方の国は大いなる過ちをしたであろう」
宣戦布告の文書を貰ったハルは野村にそう言った。
「………残念です」
野村はハルにそう言い残して国務省を後にした。
それは真珠湾作戦が始まる三十分前の事だった。
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