第百三十七話
ハワイから二式大艇で日本に帰還した三笠達はそのまま首相官邸へと乗り込んだ。
そして三笠達は緊急の帰国理由を東條を問いただした。
「えッ!? そ、それは本当ですか東條さん?」
三笠は驚きながらも東條に訪ねた。
若干声が震えているのも仕方ないだろう。
「……全て事実だ。ドイツ、ヒトラーが日本にウランを提供するとの事だ。既にウランとジェットエンジン等を搭載したUボート八隻が日本に向かっているみたいだ」
東條はヒュットマン公使との話し合いを三笠に話している。
「……東條さん、ヒュットマン公使が我々を騙しているという可能性は無いのかね?」
山本次官が東條に聞いた。
「いや……ヒュットマン公使と話していたが、彼が騙すような素振りは見えなかった」
「……とすると、真実だろうな」
吉田大臣が呟く。
「我々が核開発をしていたのを聞いたのだろうな。それを揺さぶるどころかウランを提供するとはな……」
日本は開戦後、密かに核開発をしていた。
勿論多大な費用を費やしていたが、成功するのは五年以上との見解が出ているのである。
「……まさか」
その時、三笠が呟いた。
「どうしたのかね?」
「さっき、ヒトラーは世界を三分割にすると言っていましたよね?」
「あ、あぁ。ヒュットマン公使は詳しくは教えてはくれんかったが……」
「この地図を見て下さい」
三笠は世界地図を広げる。
「ドイツはヨーロッパ、アフリカ、中東の一部を手に入れています。中東は何が眠っていますか?」
「……油田か」
何かに気付いた山本次官が呟いた。
「そうです。ドイツはバクー油田も手に入れています。中東の油田を押さえればアメリカも日本も手を出さない。アメリカは自前でありますし、日本はインドネシアを押さえている。風前の灯になるのはイギリスのみです」
「……ウランやジェットエンジン、技術者を提供したのはそれを牽制しておくためか」
その時、三笠の脳裏には笑いまくる紺碧○艦隊のヒトラーが映っていた。
「そして世界はドイツ、日本、アメリカの三国が支配する世界になる……か。世界征服は出来なくとも資源を押さえたわけか」
東條は悔しそうに言う。
「ドイツはヨーロッパ、アフリカ、中東の一部。日本はアジア周辺、アメリカはアメリカ大陸のみ……か」
「ウランを提供したのはそのためでしょう。三国が核を持ち、三国がそれを監視する。流石はヒトラーですよ」
三笠は苦笑する。
「……誘いに乗るかね?」
「……乗らざるえないでしょうね。ロスアラモス研究所の破壊が失敗した今、此方も核を持てば向こうは手を出さない。ルーズベルトが生きていたら彼は躊躇なく落とすでしょうね日本一に……」
「ほぅ、ドイツには落とさないのかね?」
山本次官が興味を持つように言う。
「アメリカとドイツは一応ながら白人です。白人には落とさないでしょう。落とすのは黄色人種で中国人の女性と猿が交尾して生まれた日本人だけですよ」
三笠の言葉に山本次官達は苦笑する。
「それでは……Uボートを受け入れましょう」
東條の言葉に三笠達は頷いたのであった。
「それとまだあります」
解散しかけだった会合を外務大臣の白州が呼び止めた。
「まだあったのか?」
「はい。率直に言うとアメリカが日本との和平停戦を伺っています」
『ッ!?』
白州の言葉に三笠達が驚く。
「これはまだ断片的です。スイスで藤村中佐に接触してきたのは明らかです」
「……アメリカもドイツの事を重点的にしているのだろうか?」
吉田大臣が呟く。
「それは私も分かりません。ですが、今まで見向きもしなかったアメリカが接触してきたのは向こうも何かしら事情が出来たのだと思われます」
「……接触はするべきでしょう。冷戦が構築されるより和平のが良いと思います」
三笠の言葉に東條達は頷いたのであった。
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