第百三十六話
「しかし何故我々に……」
「日本ハ我々ドイツト共ニソ連ヲ撃チ破ル手伝イヲシテモライマシタ。総統閣下ハソノ御礼トシテウランヲ提供スルトノ事デス。既ニウラントジェットエンジンヲ載セタUボート八隻ガ日本ニ向カッテイマス」
ヒュットマン公使は東條にそう言う。
「……そうでしたか。それは真にありがたいです」
「イエ、総統閣下ハ世界ヲ三分割ニシタイソウデス」
「……え?」
ヒュットマン公使の言葉に東條は驚いた。
「総統閣下ハ世界ノ王ニナルコトハ諦メテイマス。何故ナラ日本ガイルカラデス。日本ハアノアメリカニ対シテ有利ニ戦イ、ソ連ニモ勝ッタ。総統閣下ハソレヲ評価シテ日本ヲライバルトシテイマス」
「そ、それはありがたいです。まさかヒトラー総統が我々を讃えるとは思いませんでした」
「私モ驚イテイマス」
ヒュットマン公使が笑う。
「ソレデハ私ハ大使館ニ戻リマス。頑張ッテ下サイ」
「ありがとうございますヒュットマン公使」
そしてヒュットマン公使は大使館へと戻った。
「……急いで姫神を内地へ呼ばなければ……」
東條はそう言って電話に手を伸ばした。
「え? 至急内地へ戻るのですか?」
「うむ。私も敷島で帰らずに二式大艇で内地に戻る」
豊田長官の言葉に三笠は驚いた。
なにせいきなりの事なのだ。
「しかし何故自分が……」
「東條達との会合だ。それも緊急の事らしい」
豊田長官は三笠に耳打ちをする。
「ッ!? ……それは確かに内地へ戻る必要がありますね。分かりました、直ぐに霧島少佐を連れて来ます」
「うむ」
三笠は豊田長官にそう言ってドックに向かった。
――ドック――
「どうだ蒼龍? 傷は痛むのか?」
「私は大丈夫よ。私を誰だと思っているのよ」
空母蒼龍は先の海戦で爆弾三発、魚雷二発を食らって大破しているためドックにて修理がなされていた。
蒼龍の部屋には部屋の主である蒼龍が包帯を巻かれてベッドに寝ており、霧島少佐がお見舞いに訪れていた。
「ほら出来たぞ。ウサギのりんごだ」
霧島少佐はナイフでお見舞いの品であるりんごを切ってウサギを作っていた。
「ふん、あんたにしては上出来じゃない」
「妹達が風邪を引くたびに作れと言うからな。自然に慣れたもんだ」
「……ふん」
蒼龍がプイと横を向く。
「おい、食わないのか?」
「……ふん」
「拗ねるなよ……」
「べ、別に拗ねてなんかないんだからねッ!!」
三笠がいれば「ツンデレ乙」になりそうだが、生憎と三笠は部屋にはいない。
「全く……妹達に焼き餅妬くなよ……」
霧島少佐が溜め息を吐いた。
「や、焼き餅なんて妬いてないわよッ!!」
蒼龍が顔を真っ赤にして否定する。
「顔を真っ赤にしては無理があるぞ」
「〜〜〜ふんッ!!」
蒼龍は顔を真っ赤にしてそっぽを向いた。
まぁこの二人は友達以上恋人未満の形になっており、恋人になるのも時間の問題になっていた。
まぁ義妹である飛龍は若干反発はしているが……。
「霧島少佐、此処にいましたか」
「お、姫神どうした?」
部屋に三笠が入ってきた。
「今から内地に向かうので霧島少佐も同行を願いたいのです」
「そうか、それは仕方ないな」
霧島少佐はやれやれと言って立ち上がる。
「ちょっと内地に戻るからな。土産楽しみにしておけよ」
「ふ、ふん。別に楽しみにしてないんだからねッ!!」
「ツンデレ乙」
三笠の言葉は予想通りの事だった。
そして三笠達は豊田長官と共に内地へ向かったのである。
「ところで何に呼ばれたんだ?」
霧島少佐がこそっと三笠に耳打ちをしてきた。
「いや……何と言うか……まぁ……」
三笠は歯切れを悪くする。
「軍機だったか?」
「いえ、まぁ……世界のこれからが決まると言えばいいでしょう」
「……成る程な」
何かに察した霧島少佐はそう頷いた。
一行は日本へと向かうのであった。
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